点呼記録簿の書き方|記載事項と記入例を解説
目次
点呼記録簿は、毎日書いているのに「これで合っているのか」が分からないまま続いている書類の代表です。前任者のフォーマットをそのまま使っていて、空欄のある列が何のためにあるのか誰も説明できない、という状態はよくあります。
この記事では、点呼記録簿に何を書くことになっているのか、欄ごとにどう埋めるのか、そして巡回指導で見られやすいところはどこかを整理します。様式の話ではなく、目の前の用紙をどう埋めるかの話として書きます。
結論:点呼記録簿は「誰が・誰に・いつ・何を確かめ・何を指示したか」を残す用紙
点呼記録簿とは、点呼で確かめた内容と指示した内容を、運転者ごと・運行ごとに記録しておく用紙のことです。後から読んだ人が、その日の点呼を再現できる状態になっているかどうかが、書けているかどうかの分かれ目になります。
ポイントはここです。点呼記録簿は、書いた本人が読み返すための書類ではありません。事故が起きたとき、監査が入ったとき、退職した運行管理者の代わりに説明するときに読まれます。そのため、省略した書き方や社内でしか通じない記号は、書いてあっても伝わらない扱いになります。
一般には、貨物自動車運送事業輸送安全規則にもとづいて、記録しておくべき事項が決まっているとされています。項目そのものは多くありませんが、欄が用意されているのに毎日空いている列があることが、いちばん多い状態です。
点呼記録簿の記載事項を層に分けて覚える
点呼記録簿の項目は、ばらばらに覚えると抜けます。3つの層に分けると、用紙が変わっても対応できます。
1つ目の層が、どの点呼にも共通するものです。運転者の氏名、点呼を行った日時、点呼を行った人の氏名、点呼の方法(対面か、電話などか)、酒気帯びの有無、アルコール検知器の使用の有無。この6つは乗務前でも乗務後でも書きます。
2つ目の層が、乗務前だけのものです。使う車両の登録番号、日常点検の実施の状況、疾病・疲労・睡眠不足などの状況、そして運転者に対する指示の内容。
3つ目の層が、乗務後だけのものです。運行の状況の報告、道路や車両の状況、交替運転者がいる場合の通告の内容。
「共通の6つ」を先に固めるのが早道です。ここが毎日埋まっていれば、指摘の大半は起きません。残りは時点ごとの追加だと考えると、新しく入った人にも説明しやすくなります。
欄ごとの記入例
一般論だけでは手が止まるので、欄ごとに具体的な埋め方を見ていきます。
点呼記録簿の記入例1:点呼の日時
点呼記録簿の日時は、点呼を行った時刻を書きます。出庫の時刻ではありません。ここを出庫時刻で埋めている用紙が多く、運転日報と突き合わせたときに矛盾が出ます。
一般には、点呼が終わってから出庫するので、点呼の時刻は日報の出庫時刻より前になります。日報の出庫が6時00分で点呼が6時05分になっている用紙は、読んだ人が最初に気づきます。分単位まで書く運用にしておくと、この矛盾が起きにくくなります。
点呼記録簿の記入例2:酒気帯びの有無と検知器の数値
酒気帯びの欄は「有」「無」で埋めます。あわせて、アルコール検知器を使ったかどうかの欄と、測定した数値の欄があるのが一般的です。
数値の欄は、0.00と書く運用にしておくのが扱いやすくなります。空欄やチェックマークだけにしていると、測っていないのか、測って0だったのかが読み分けられません。「無」とだけ書かれた欄は、測らずに目視で判断した記録にも見えてしまいます。
点呼記録簿の記入例3:指示事項
指示事項の欄がいちばん形骸化しやすい列です。「安全運転」とだけ書いた行が1年ぶん並んでいる用紙は珍しくありません。
書き方を変えるなら、その日に固有のことを1つ入れる形にします。天候(「午後から雨。橋の上の横風に注意」)、道路の状況(「国道◯号の◯◯交差点で夜間工事。う回」)、荷主からの連絡(「◯◯倉庫の入口が本日から西側」)。毎日違うことが1行入っているだけで、記録の説得力がまったく変わります。
点呼記録簿の記入例4:点呼を行った人の氏名
点呼を行った人の氏名は、印やサインで残します。ここが空いているか、全部同じ人になっているか、補助者ばかりになっているか。この3つは必ず見られます。
補助者が行った点呼は、補助者の名前で残します。運行管理者の名前で代筆すると、実際の割合が分からなくなります。運行管理者が自ら行った回数が全体の3分の1を下回っていないかは、記録から数えられる形にしておきます。
実際に使える様式が必要な方へ
点呼記録簿のExcel様式そのものは、商い屋の運送業向けのページにそろっています。書き方を読んだあと、用紙だけ持っていく形でも使えます。
商い屋で様式をさがす点呼記録簿でよくある空欄を4つ潰す
巡回指導で点呼記録簿について指摘を受けるとき、空いている欄はだいたい決まっています。先に4つ潰しておくと、指摘の数がはっきり減ります。
1つ目が、乗務後点呼の行そのものが無いものです。乗務前の行だけが並んでいて、帰着後の行が半分しか埋まっていない用紙はよくあります。原因は運用の側にあることが多く、帰着が夜間や早朝に集中していて、点呼する人がいない形になっています。用紙を直すのではなく、誰が受けるのかを決め直すのが先になります。
2つ目が、アルコール検知器の使用の有無の欄です。測っているのに欄だけ空いている状態が多く、これは用紙の欄の位置が悪いことが原因のこともあります。酒気帯びの欄のすぐ隣に置くと、片方だけ埋めるのが不自然になるので、埋め忘れが減ります。
3つ目が、日常点検の実施の状況です。運転者が点検を実施したこと、または実施を確認したことを書く欄ですが、「済」の判を押すだけで何を見たかが残っていない用紙が多くあります。点検の中身そのものは点検記録簿の側に残るので、点呼記録簿には「確認した」で構いませんが、空欄のままだと確認していないのと同じ扱いになります。
4つ目が、点呼の方法の欄です。対面か、電話などかを書く欄で、対面が当たり前になっている営業所ほど空いています。対面でない点呼が混ざったときに、その行だけ理由を説明できる状態にしておくと安全です。
中間点呼の欄をどう扱うか
2日以上にわたる運行があると、点呼記録簿に中間点呼の行が加わります。ここは用紙によって作りが違うので、自社の用紙がどちらの形かを確かめておきます。
1つ目の形が、乗務前・中間・乗務後を1行に並べるものです。1つの運行が1行で追えるので、長距離の多い会社に向いています。2つ目が、点呼の回数ごとに1行を使うものです。こちらは日ごとに追いやすくなります。
中間点呼で書く内容は、酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足の状況、そして運転者に対する指示とされています。乗務前と同じ項目を全部埋めようとして、日常点検の欄まで書いてしまう間違いがよくあります。中間点呼の時点では車はすでに走っているので、そこは対象になりません。
用紙を自分の会社に合わせて直すときの順番
配布されている様式をそのまま使うのが早いのですが、運行の形が特殊な会社では合わないことがあります。直すときは、次の順番でやると事故が起きません。
まず、法令で求められている項目は消さないところから始めます。使っていない欄があっても、消さずに残しておきます。「うちでは使わない」と思って消した欄が、実は別の運行で必要だったという形が、いちばんよくある失敗です。
次に、自社で必要な欄を足します。傭車を使う会社なら車両の持ち主の欄、危険物を運ぶなら品名の欄、といった具合です。足す欄は右側に寄せておくと、法令で求められる部分と社内で足した部分が見分けやすくなります。
最後に、1行の幅を実際に書ける大きさにします。ここが抜けると、項目はそろっているのに現場で書ききれない用紙ができあがります。指示事項の欄が2センチしかなければ、どう指導しても「安全運転」しか書けません。欄の広さは、書いてほしい内容の量を決めています。
直したら、1週間だけ試してから本運用に移します。書く人が実際に埋められるかどうかは、机の上では分かりません。
点呼記録簿と他の書類のつながり
点呼記録簿は単独では完成しません。同じ運行について、複数の書類に同じ数字が出てきます。ここがそろっているかは、内容より先に見られます。
運転日報とは、運転者名・車両番号・日付・出庫と帰庫の時刻が重なります。運行指示書を作る運行では、運行の開始と終了の日時、経路が重なります。日常点検の結果は点検記録簿の側にあり、点呼記録簿には「実施を確認した」という事実だけが残ります。
片方だけ直して、もう片方が古いまま残っているのがいちばん危ない形です。運行の予定が変わったら、変えた書類を全部数えてから直す運用にしておくと、後から矛盾が出ません。運転日報の書き方は運転日報とはに、運行指示書は運行指示書の書き方にまとめています。
電子で残すときに気をつけること
点呼記録簿を紙からパソコンに移す会社が増えています。入力が速くなるのは確かですが、紙のときには起きなかった問題が2つ出てきます。
1つ目が、後から書き換えられてしまうことです。表計算のファイルに入力する形だと、3か月前の行をあとから直せてしまいます。監査で「これはいつ入力したものか」と聞かれたときに答えられる状態にしておく必要があります。入力した日付を自動で残す、月ごとに書き換えできない形にして保管する、といった手当てが要ります。
2つ目が、消えることです。1台のパソコンの中だけに置いていると、その1台が壊れた時点で1年ぶんが無くなります。紙なら火事や水害でなければ残りますが、データはそうではありません。別の場所にもう1つ置くところまでやって、はじめて紙と同じ安心になります。
そのうえで、電子にすると明らかに楽になる部分もあります。運転者ごとの点呼回数や、運行管理者が自ら行った割合が、数えなくても出せるようになります。補助者の割合を毎月確かめている会社では、ここだけで作業が数時間減ります。紙が悪いのではなく、運転者が20人を超えたあたりから、数える作業が重くなってくるという話です。
用紙が回り始めてから見ること
用紙を整えたあと、しばらく経ってから確かめることがあります。ここを見ておくと、形だけに戻るのを防げます。
1つ目が、書く時間がどれくらいかかっているかです。1人あたり3分を超えているなら、欄が多すぎるか、探して書く形になっています。忙しい朝に3分は長いので、そこが省略の入口になります。
2つ目が、同じ運転者の行だけ内容が薄くなっていないかです。特定の人の行が毎回空欄に近いなら、その人が書きにくい時間帯に出ているか、点呼をする人が変わっているかのどちらかです。
3つ目が、月の途中で字が変わっていないかです。同じ人が書いているはずの欄で筆跡が変わっているなら、代わりに書いている人がいます。代筆そのものが直ちに問題になるわけではありませんが、誰が点呼をしたのかが記録と違うなら、それは問題になります。
4つ目が、点呼の時刻が不自然にそろっていないかです。20人ぶんの点呼が全部6時00分になっている用紙は、まとめて後から書いたように見えます。実際には1人ずつ数分ずつずれるはずなので、時刻がそろいすぎているのは、かえって疑われます。
見るのは月に1度で足ります。全部を読む必要はなく、数日ぶんを抜いて見るだけで傾向は分かります。気づいたことを点呼の場で1言返すと、記録の質が保たれます。
まとめ
点呼記録簿は、誰が誰にいつ何を確かめて何を指示したかを、後から読む人に伝えるための用紙です。共通の6項目を先に固め、乗務前と乗務後で入れ替わる欄を足していく形で覚えると、様式が変わっても対応できます。
まず手を付けるなら、指示事項の欄です。ここが毎日同じ文言になっているなら、その日に固有のことを1行入れる運用に変えます。手間はほとんど増えないのに、記録全体の見え方が変わる部分になります。次に、点呼の時刻が運転日報の出庫時刻より前になっているかを確かめると、書類どうしの矛盾が消えます。
なお、ここに書いた内容は一般的な形です。自社の用紙に何の欄が必要かは、事業の種類や運行の形によって変わります。最終的な判断は、所轄の運輸支局にご確認ください。保存の年数と起算日は、点呼記録簿の保存期間で分けて説明しています。
用紙は、直したら現場に理由を伝えます。欄が増えた理由が分からないと、埋める動機が生まれません。「ここが空いていると指摘を受ける」と一言あるだけで、定着の速さが変わります。
よくある質問
点呼記録簿は手書きでなければいけませんか。
手書きに限られているわけではないとされており、パソコンで入力して保存する形も行われています。ただし、点呼を行った人が確認した事実が残る作りにする必要があるため、誰がいつ入力したかが後から分かる形にしておきます。
運転者のサインは必要ですか。
法令で運転者の署名が求められていると決まっているわけではないとされています。ただし、指示した内容を運転者が受け取ったことを示す意味で、サイン欄を設けている会社は多くあります。あって困るものではありません。
点呼をしなかった日は、どう書けばよいですか。
運転者が休みで運行が無い日は、行そのものが発生しません。運行があったのに点呼ができなかった場合は、その理由と、代わりに行った確認の内容を残しておきます。空欄のままにするのがいちばん説明が難しくなります。
アルコール検知器の数値は毎回書くのですか。
数値を記録する欄がある用紙では、毎回書く運用にしておくのが安全です。数値を残す形にしておくと、検知器が正常に動いていたことの裏付けにもなります。
指示事項に書くことが思いつかない日はどうすればよいですか。
天候、通る道の状況、荷主からの連絡のいずれかは、たいてい何かあります。本当に何も無い日は「特記事項なし」と書いて構いませんが、それが毎日続くなら、情報が運行管理者のところに集まっていないことを意味します。
用紙が1年で1冊になりません。どう分ければよいですか。
営業所ごと、月ごとに分けるのが一般的です。保存期間は点呼を行った日から数えるので、月ごとに綴じておくと、期間が過ぎたものを月単位で外せます。運転者ごとに分ける形は、日付順に追えなくなるため、監査のときに時間がかかります。