安全運転管理者の選任|台数の数え方と届出
目次
安全運転管理者は、運送業の話だと思われがちですが、実際には白ナンバーの社用車を持っている会社の制度です。営業車、送迎車、自社の荷物を運ぶ車。業種を問わず、台数が基準に達していれば選任することとされています。
この記事では、安全運転管理者を選任する台数の数え方、誰がなれるのか、届出をどこに出すのか、そして選任したあとに何をするのかを整理します。台数の数え方でつまずくところが決まっているので、そこを先に押さえます。
結論:安全運転管理者は「白ナンバーの車を一定台数持つ事業所」に必要
安全運転管理者とは、事業所で使っている自動車の安全な運転を確保するために選任する立場のことです。運送事業をしていない会社が対象という点が、運行管理者といちばん違うところになります。
ポイントはここです。緑ナンバーで運送事業をしている会社には運行管理者がいますが、白ナンバーの社用車を持っている会社には安全運転管理者が必要になります。名前も根拠も届出先も別で、運行管理者は運輸支局、安全運転管理者は警察署が窓口になります。
一般には、道路交通法にもとづいて選任することとされています。1台の会社でも対象になる場合があるため、台数の数え方を先に押さえるのが確実です。
台数の数え方でつまずくところ
選任が必要になる台数は、一般に次のいずれかにあたる場合とされています。
1つ目が、乗車定員が11人以上の自動車を1台以上使っている場合です。マイクロバスや送迎バスが該当します。1台でも対象になるのがここで、送迎をしている施設や学校が見落としやすい部分です。
2つ目が、それ以外の自動車を5台以上使っている場合です。普通の乗用車やトラックがこちらに入ります。
数え方で気をつけるのが、自動二輪車の扱いです。一般には、大型自動二輪車と普通自動二輪車は1台を0.5台として数えるとされています。原動機付自転車は数に入りません。営業に原付を10台使っていても台数には効かないが、二輪車が10台あれば5台として数える、という形になります。
もう1つが、リース車や個人の車の扱いです。会社名義でなくても、事業所が使用している実態があれば数に入る場合があるとされています。社員が自分の車を業務で使っている形、いわゆるマイカー業務利用がある会社は、ここを確かめておく必要があります。
数えるのは事業所ごとです。本社に3台、支店に3台なら、どちらも5台に届かないので選任は必要ありません。同じ6台でも1か所に集めていれば必要になります。車両の台数を把握しておく方法は車両管理台帳とはにまとめました。
台数を数えるときに見落とすもの
数え方でつまずく形が、いくつか決まっています。実際に相談として多いものを挙げておきます。
1つ目が、常時使っていない車です。予備車や、月に数回しか動かさない車も、事業所が使用している以上は数に入るのが一般的です。「普段乗っていないから」は理由になりません。
2つ目が、複数の事業所で共用している車です。どの事業所の台数に入れるかは、主に使用している場所で判断することになります。判断に迷う場合は、警察署に確かめておきます。
3つ目が、レンタカーです。短期で借りたものは扱いが変わりますが、長期にわたって継続的に借りている場合は、使用している実態があるとみなされることがあります。
4つ目が、台数が一時的に増える場合です。繁忙期だけ車を増やす業種では、その期間だけ基準を超えることがあります。超えている間は選任が必要になるので、毎年同じ時期に増やしているなら、通年で置いておくほうが安全です。
副安全運転管理者が必要になる台数
台数がさらに増えると、補佐する立場も必要になります。
一般には、自動車の台数が20台以上になると副安全運転管理者を1人、それ以降は20台を増すごとに1人ずつ追加して選任することとされています。20台から39台で1人、40台から59台で2人、という形です。
20台の段差に気づかないまま超えている会社が多くあります。車を1台増やしたときに台数を数え直す習慣が無いと、次の更新まで分かりません。台帳に台数の合計が出る形にしておくと、増やした瞬間に気づけます。
誰が安全運転管理者になれるのか
資格試験があるわけではありませんが、要件が決まっています。
一般には、年齢が20歳以上であること(副安全運転管理者を選任しなければならない事業所では30歳以上)、そして運転の管理に関する実務経験が2年以上あることとされています。副安全運転管理者のほうは、20歳以上で実務経験1年以上、または運転経験3年以上といった形の要件があるとされています。
あわせて、過去に一定の違反行為をしていないことが求められます。ここは公安委員会の判断になるので、心当たりがある場合は届出の前に警察署へ相談しておくのが確実です。
実務経験2年というのが、小さい事業所でつまずくところです。総務の担当者を置こうとしても、車の管理をしたことが無ければ要件を満たしません。誰を立てるかは、台数が5台に近づいた時点で考え始めておくと間に合います。
届出はどこにいつ出すのか
選任したら、届出が必要とされています。ここも期限が短いので注意します。
一般には、選任した日から15日以内に、事業所の所在地を管轄する警察署を経由して公安委員会へ届け出ることとされています。運行管理者の届出先が運輸支局であるのに対し、こちらは警察署です。
解任した場合や、選任した人が変わった場合も届出が必要になります。人が入れ替わるときは、2つの手続きを1組で処理する形にしておきます。
必要な書類は都道府県によって案内が違うことがあるので、管轄の警察署のサイトで確かめるのが確実です。実務経験を示す書類を求められることがあるため、前職での経験を使う場合は早めに準備しておきます。
選任したあとにやること
安全運転管理者を置いたら、そこから業務が始まります。名前を届け出て終わりではありません。
業務として一般に挙げられているのが、運転者の状況を把握すること、運行の計画を作ること、長距離や夜間の運転で交替の運転者を配置すること、異常気象のときに安全確保の措置をとること、点呼を行って酒気帯びの有無を確認すること、運転日報を備えて記録させること、そして運転者に対する指導を行うことです。
このうち日々の負担が大きいのが、酒気帯びの確認と運転日報の2つになります。運転前と運転後に運転者の酒気帯びの有無を確認し、アルコール検知器を用いて、その記録を1年間保存することとされています。
検知器は、常時有効に保持することとされています。置いてあるだけでなく、動く状態であることが求められるので、定期的に確かめた記録も残しておくと安全です。運転日報の書き方は運転日報とはで説明しています。
あわせて、年に1回、公安委員会が行う講習を受けることとされています。通知が届く形が一般的なので、届いたら受講の予定を先に押さえておきます。
選任していなかったことに気づいたら
台数を数え直したら、すでに基準を超えていた。この状態に気づいたときの動き方です。
やることは3つです。1つ目が、要件を満たす人を探すことです。実務経験2年が要るので、社内にいなければすぐには置けません。候補がいない場合は、そのことも含めて警察署に相談するのが現実的です。隠したまま時間が経つほど悪くなります。
2つ目が、届出を出すことです。過去にさかのぼって選任することはできないので、いまから選任して届け出る形になります。
3つ目が、実務を始めることです。選任したら、運転前後の酒気帯びの確認と記録、運転日報の備え付けが始まります。届出だけ出して実務が動いていない状態は、次に問題になります。
気づかないまま続くのを防ぐには、台数を数える場面を決めておくことです。車を買ったとき、手放したとき、リースを更新したとき。車が動いたら数えるという形にしておけば、超えた瞬間に分かります。
運送会社では3つが並行する
安全運転管理者は白ナンバーの制度ですが、運送会社にも関係します。緑ナンバーのトラックと、営業用の白ナンバーの車を両方持っているからです。
このとき、3つの制度が同じ会社で並行します。緑ナンバー側に運行管理者と整備管理者、白ナンバー側に安全運転管理者。根拠も届出先も別なので、まとめて処理することはできません。
混乱しやすいのが、白ナンバーの台数の数え方です。緑ナンバーの車は、安全運転管理者の台数には入りません。逆に、白ナンバーの営業車は運行管理者の台数には入りません。それぞれ別に数えます。
会社全体で50台あっても、緑45台・白5台なら、運行管理者は2人、安全運転管理者は1人という形になります。合計の台数で判断すると、どちらも間違えます。
もう1つ気をつけるのが、講習と研修の時期です。安全運転管理者は年に1回の講習、整備管理者は2年に1回の研修とされており、周期が違います。同じ表に並べておかないと、片方を受け損ねます。
管理する表を1枚作っておくのが確実です。誰が、どの制度で、いつ選任され、どこに届け出て、次の講習や研修がいつか。3つの制度を1枚に並べておけば、人が入れ替わっても引き継げます。詳しくは運行管理者の選任と整備管理者の選任にまとめました。
酒気帯びの確認をどう回すか
選任したあとの業務のうち、毎日発生して負担も大きいのが酒気帯びの確認です。ここが回らないと、制度が形だけになります。
難しいのは、直行直帰の運転者です。会社に寄らずに現場へ向かう営業社員に、どうやって運転前の確認をするのか。ここで止まっている会社が多くあります。
一般には、対面での確認が原則とされていますが、対面が難しい場合には、カメラやモニターを通じて顔色や応答の様子を確認するなど、対面に準ずる方法が示されています。電話で声だけ聞く形は、対面に準ずるとは見なされにくいとされているので、映像が伴う方法を用意しておきます。
直行直帰が多い会社では、この仕組みを先に決めておかないと制度が回りません。選任の届出より、こちらのほうが準備に時間がかかります。
検知器は、運転者に持たせる形になります。持ち運べる小型のものを配り、測った数値を報告してもらいます。数値の報告だけでなく、測っている様子が分かる形にしておくと確実です。
記録は1年間保存することとされています。日報と同じ用紙にまとめておくと、管理する書類が増えません。
選任したあとの1年の流れ
選任して届け出たら、そこから1年の動きが始まります。何がいつ来るのかを並べておきます。
毎日あるのが、運転前後の酒気帯びの確認と記録、そして運転日報の記録です。この2つが業務の中心になります。
随時あるのが、運行の計画を作ることと、異常気象のときの措置です。台風や大雪のときに、運行を止めるか経路を変えるかを判断します。判断した記録を残しておくと、業務を行っていることが示せます。
毎日のものと随時のものを分けておくと、担当が休んだときに何を代わりにやればよいかが分かります。毎日のものだけは、必ず誰かが引き継ぎます。
年に1回あるのが、公安委員会が行う講習です。通知が届く形が一般的ですが、担当者や住所が変わっていると届かないことがあります。前回受けた月を控えておき、1年後を自分で管理しておくのが確実です。
このほか、人が変わったときや台数が変わったときに届出が発生します。人事異動の時期には、安全運転管理者が異動の対象になっていないかを確かめておきます。異動して選任が空いたまま気づかないのが、よくある形です。
記録は1年間保存することとされています。日報と確認の記録を同じ用紙にまとめておけば、保管する書類も1種類で済みます。
まとめ
安全運転管理者は、白ナンバーの社用車を一定台数持つ事業所で選任する立場です。乗車定員11人以上なら1台から、それ以外なら5台から対象になります。届出先は運輸支局ではなく警察署で、選任から15日以内とされています。
まず手を付けるなら、事業所ごとの台数を数えるところからです。二輪車が0.5台であること、事業所ごとに数えることの2つで結果が変わります。次に、20台の段差に気づける形にしておくと、選任の漏れが起きません。
なお、ここに書いたのは一般的な形です。自社に何が求められるかは、台数や使用の実態によって変わります。最終的な判断は、所轄の警察署にご確認ください。
白ナンバーの制度は、運送業ほど周知されていないぶん、知らないまま対象になっている会社が多くあります。台数を数えるところまでは、その日のうちにできます。まずそこだけでも確かめておく価値があります。
よくある質問
安全運転管理者は何台から必要ですか。
一般には、乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはそれ以外の自動車を5台以上使用している事業所が対象とされています。
自動二輪車は台数に入りますか。
大型自動二輪車と普通自動二輪車は1台を0.5台として数えるとされています。原動機付自転車は数に入りません。
リース車や社員の自家用車も数えるのですか。
事業所が使用している実態があれば数に入る場合があるとされています。判断に迷う場合は、所轄の警察署に確かめるのが確実です。
届出はどこに出すのですか。
事業所の所在地を管轄する警察署を経由して、公安委員会へ届け出ることとされています。運行管理者の届出先である運輸支局とは別です。
運行管理者と安全運転管理者は兼任できますか。
根拠になる法律が別なので、別の制度として並行します。緑ナンバーと白ナンバーの両方がある会社では、それぞれの選任が必要になります。同じ人が両方を担うことが直ちに禁じられているわけではありませんが、業務量の面で現実的かどうかは別の判断になります。
確認は誰が行うのですか。
安全運転管理者が行うのが原則ですが、不在のときに備えて、確認を行う人をあらかじめ決めておく形が取られています。誰が確認したかを記録に残しておきます。
アルコール検知器は必ず使うのですか。
運転前後の酒気帯びの確認について、アルコール検知器を用いることとされています。目視だけで済ませる形は想定されていません。