運行指示書の書き方|必要な運行と記載事項
目次
運行指示書は、作らなくてよい運行のほうが多いため、いざ必要になったときに「どう書けばいいのか」で手が止まります。長距離の依頼が入った日に慌てて調べる、という形になりがちな書類です。
この記事では、運行指示書がどんな運行で必要とされているのか、何を書くのか、途中で予定が変わったらどうするのかを整理します。作る場面が限られているぶん、一度型を作っておけば使い回せる書類でもあります。
結論:運行指示書は「乗務前も乗務後も対面で点呼できない運行」で作る
運行指示書とは、運行の開始から終了までの予定と、運転者に伝えておくべき注意事項を書き、運転者に持たせる書類のことです。日報のように毎日作るものではなく、特定の条件に当たる運行だけで作ります。
その条件が、乗務前の点呼と乗務後の点呼のどちらも対面でできない運行であることとされています。典型が、2日以上にわたって帰ってこない運行です。出るときは営業所にいたが、翌日も翌々日も戻らないという形になると、乗務後の点呼を対面でできません。
ポイントはここです。片方だけ対面でできない場合は対象外とされています。朝は営業所で点呼をして、夜に帰ってくるなら、遠くまで行っても運行指示書は要りません。逆に、日をまたぐ運行であれば距離が短くても対象になります。距離ではなく、点呼が対面でできるかどうかで決まります。
必要かどうかを判断する順番
迷ったときは、次の順で見ると間違えません。
1つ目に、この運行で乗務前の点呼を対面でできるかを見ます。営業所を出発する形なら、たいていできます。2つ目に、乗務後の点呼を対面でできるかを見ます。その日のうちに営業所へ戻るならできます。3つ目に、両方ともできない場合に運行指示書を作ります。
判断に迷うのが、運転者の自宅から直接出発する形です。営業所に寄らずに出て、そのまま数日走る運行だと、乗務前の点呼も対面ではできません。この場合も両方できないことになるので、対象になります。
もう1つ迷うのが、途中で運転者が交替する運行です。交替する場所と日時を書く欄があるので、交替がある運行では記入がひとつ増えます。誰から誰へ、どこで交替したのかを残しておきます。
旅客と貨物で少し違う
運行指示書という言葉は、貸切バスなどの旅客の側でも使われます。仕組みは似ていますが、求められる場面や記載の細かさに違いがある部分があります。
旅客の側では、夜間や長距離の運行について、経路や休憩の場所をより細かく書くことが求められる形になっています。トラック協会やバス協会が配っている様式も、貨物用と旅客用で分かれていることが多くあります。
自社がどちらなのかで、使う様式を選びます。貨物の会社が旅客用の様式を拾ってきて使うと、要らない欄が並ぶことになります。所轄の運輸支局や、地域のトラック協会が配っている様式を使うのが確実です。
運行指示書の記載事項
書く内容は、一般に次のものとされています。項目自体は多くありません。
運行の開始と終了の地点、およびその日時。運転者の氏名。運行の経路と、主な経過地点における出発と到着の日時。運行に際して注意すべき箇所の位置。乗務の途中で休息する場合の場所と時間。そして、その他の運行の安全を確保するために必要な事項です。
このうち実務でいちばん差が出るのが、注意すべき箇所の位置です。ここが「安全運転」で埋まっている指示書は、作った意味がほとんどありません。
書き方の例としては、地点と内容をひとつずつ結び付けます。「◯◯峠の下り、冬季は路面凍結のおそれ」「◯◯インターの出口、右側からの合流が短い」「納品先の敷地内、バックで入る形になるため誘導者を待つ」。その運行でしか出てこない情報が1つでも入っていれば、指示書として機能します。
休息の場所と時間も、実際に止まれる場所を書いておきます。「適宜休憩」では、運転者が探すことになります。サービスエリアの名前まで入れておくと、連続運転の時間の管理にもつながります。
経過地点をどこまで書くか
記載事項の中でいちばん質問が多いのが、主な経過地点をどこまで細かく書くかです。
一般には、通る場所をすべて書く必要はないとされています。「主な」経過地点なので、運行の節目になる場所を選びます。目安としては、休憩を取る場所、荷物を積み下ろしする場所、運転者が交替する場所、そして高速道路の乗り降りの地点です。
細かく書きすぎると、予定どおりに行かなかったときに毎回変更の記載が必要になります。逆に粗すぎると、運行の実態が分かりません。1日の運行で3か所から5か所くらいが、実務では扱いやすい粒度になります。
日時は、出発と到着の両方を書きます。予定の時刻なので、実際とずれること自体は問題になりません。大きくずれた場合に、変更として記載するかどうかが判断になります。目安としては、その日の行程が変わるほどのずれなら記載します。
正と副の2通を作る
運行指示書は、正と副の2通を用意することとされています。正を運転者に携行させ、副を営業所に備えておく形です。
この2通の扱いが、実務でいちばん崩れるところです。運転者が持って出た正が、運行が終わったあとに車の中に残ったままになる。あるいは持ち帰ったものの、副と一緒に綴じられずに机の上で紛れる。運行が終わった時点で正を回収する手順を決めていないと、必ず失われます。
回収の仕方は簡単です。乗務後の点呼のときに、正を出してもらいます。点呼という決まった場面に紐づけておけば、忘れません。回収した正は、副と一緒に綴じます。
保存期間は、一般に運行が終了した日から1年間とされています。作成した日からではないので、作成日で数えると数日早く外すことになります。書類ごとの保存期間は運送業の書類の保存期間一覧にまとめました。
途中で予定が変わったときの扱い
運行指示書を作る運行は日数が長いので、途中で予定が変わることがあります。荷物が追加になった、翌日の納品が延びた、経路を変えることになった。
一般には、指示の内容に変更があった場合、変更の内容を運行指示書に記載し、運転者に対しても電話などで指示して、その内容を運転者が携行している指示書にも記載させることとされています。
変えるのは2通の両方です。営業所にある副だけ直して、運転者の持っている正が古いままになっていると、2通が食い違います。運転者に電話で伝えるときに、「そちらの指示書にも書き足してください」まで言うのが手順になります。
変更の記載は、元の内容を消さずに残します。上から書き直すと、いつどう変わったのかが追えなくなります。線を引いて残し、変更した日時と誰が指示したかを添える形にしておくと、後から説明できます。
中間点呼との組み合わせ
運行指示書を作る運行は、定義上、乗務前も乗務後も対面で点呼できない運行です。ということは、その運行では中間点呼も必要になります。
中間点呼は、運行の途中に少なくとも1回、電話などの方法で行うものとされています。確かめるのは酒気帯びの有無と、疾病・疲労・睡眠不足の状況、そして必要な指示です。
運行指示書と中間点呼はセットで動きます。指示書を作ったのに中間点呼をしていない、という状態は指摘の対象になります。指示書を作る運行の一覧を作っておき、その運行には中間点呼の予定も一緒に書き込んでおくと、抜けません。
型を1つ作って使い回す
運行指示書は作る頻度が低いので、そのたびに1から作ると時間がかかります。よく使う路線については、型を作っておくのが早道です。
型に入れておくのは、変わらない部分です。出発する営業所、よく通る経路、休憩に使う場所、注意すべき箇所。同じ路線なら、峠の凍結も合流の短さも毎回同じなので、一度書けば使い回せます。
変わるのは、日付、運転者名、車両、そして荷物に関する部分です。ここだけ空欄にした型を作っておけば、埋めるのは数分で済みます。
型を作るときのこつは、注意すべき箇所を運転者から聞いて書くことです。実際に走っている人がいちばん知っています。運行管理者が地図だけ見て書いた注意事項は、現場の役に立たないことがあります。聞いて書いた指示書は、読まれます。
型は年に1度は見直します。道路が変わり、工事が終わり、納品先の入口が移ります。古い注意事項が残っていると、かえって混乱のもとになります。
作る運行を取りこぼさない
運行指示書でいちばん多い指摘は、内容の不備ではなく、作るべき運行で作っていなかったというものです。ここを防ぐ形を作っておきます。
取りこぼしが起きるのは、判断が配車の担当者の頭の中にあるときです。急な依頼が入って、日をまたぐ運行だと気づかないまま出してしまう。あとから日報を見て気づく、という形になります。
防ぐには、配車の段階で1つだけ確かめる形にします。「この運行は、今日中に営業所へ戻るか」という質問です。戻らないなら、運行指示書と中間点呼が要ります。この1問だけなら、急いでいるときでも確かめられます。
この質問が効くのは、距離や行き先ではなく帰着の時刻だけを見ればよいからです。「遠いかどうか」で判断しようとすると、境目が曖昧になって毎回迷います。戻るか戻らないかなら、答えは必ずどちらかに決まります。
配車表の側に、その欄を作っておくのが確実です。「当日帰着・○/×」という列を1つ足すだけで、×が付いた運行だけ指示書を作ればよくなります。月末に×の数と指示書の枚数を突き合わせれば、取りこぼしが無いことも確かめられます。
運転者の側にも伝えておきます。日をまたぐ運行のときは指示書を受け取るものだ、と分かっていれば、渡されていないときに聞いてもらえます。気づける人を増やすのが、いちばん確実な対策になります。
変更が多い運行をどう扱うか
運行指示書を作る運行は日数が長いため、変更が何度も起きることがあります。そのたびに正と副の両方を直すのは、現実には負担になります。
減らす方向で考えられることが2つあります。1つ目が、最初から幅を持たせて書くことです。到着の日時を分単位で書けば、少しのずれでも変更になります。その日の行程が変わらない範囲の記載にしておくと、変更の回数そのものが減ります。
2つ目が、変更の連絡と記載をまとめることです。運行の途中で3回連絡したなら、3回とも書き足してもらう必要があります。連絡の回数を減らせるなら、その日の指示をまとめて1回で伝えるほうが、記録の手間も減ります。
ただし、幅を持たせすぎると指示書の意味が薄れます。「◯月◯日から◯日まで、関東方面」では、何も指示していないのと同じです。行程が追える程度には具体的に、ずれが変更にならない程度には幅を持たせる。この加減は、路線ごとに何回か作ってみると決まってきます。
変更が毎回起きる路線は、そもそも計画に無理があることもあります。記録が残っていれば、それが見えます。到着の予定がいつも1時間以上ずれているなら、予定のほうが実態と合っていません。変更の記載が多い路線から、計画を見直すという使い方ができます。
中間点呼の記録をどこに残すか
運行指示書を作る運行では中間点呼も必要になる、と書きました。この記録をどこに残すかで迷うことがあります。
一般的なのは、点呼記録簿の側に残す形です。乗務前・中間・乗務後が同じ用紙に並ぶので、その運行の点呼が全部そろっているかを一目で確かめられます。
もう1つが、運行指示書の側に欄を作る形です。指示書は運行ごとに1枚なので、その運行の流れがまとまります。ただし、点呼記録簿の側を見たときに中間点呼の行が抜けて見えるため、点呼の記録としては追いにくくなります。
どちらでも構いませんが、決めておくことが大事です。決まっていないと、運行によって残す場所が変わり、探すのに時間がかかります。実務では、点呼記録簿に残しつつ、指示書の側には「中間点呼済(日時)」とだけ書いておく形が扱いやすくなります。
もう1つ決めておくのが、中間点呼を誰が受けるかです。運行の途中なので、時刻が夜中や早朝になることがあります。運転者から電話をかけてもらう形にするのか、こちらからかけるのかも含めて、運行を出す前に伝えておきます。現場で「何時にかければいいのか」と迷わせないのが要点です。
保存期間も違う点に注意します。点呼記録簿は点呼を行った日から1年、運行指示書は運行が終了した日から1年です。同じ運行の記録でも、外す時期がずれることがあります。
まとめ
運行指示書は、乗務前も乗務後も対面で点呼できない運行について、予定と注意事項を書いて運転者に持たせる書類です。距離ではなく、点呼が対面でできるかどうかで必要性が決まります。
まず手を付けるなら、注意すべき箇所の欄を、その運行でしか出てこない情報で埋める形に変えるところからです。ここが埋まっていないと、作る手間だけが残ります。次に、乗務後の点呼のときに正を回収する手順を決めると、書類が失われなくなります。
なお、ここに書いたのは一般的な形です。自社の運行に何が求められるかは、事業の種類や運行の形によって変わります。最終的な判断は、所轄の運輸支局にご確認ください。
運行指示書は、作る頻度が低いぶん、手順を書いたものを1枚残しておく価値があります。半年ぶりに作る人が、どこから手を付ければよいか分かる状態にしておきます。
よくある質問
運行指示書は毎日作るのですか。
毎日は作りません。乗務前と乗務後のどちらも対面で点呼できない運行だけが対象とされています。日帰りの運行では必要になりません。
日帰りでも遠方なら必要ですか。
距離では決まりません。その日のうちに営業所へ戻って対面で点呼ができるなら、遠くても対象外になります。
運行指示書の保存期間は何年ですか。
一般には、運行が終了した日から1年間とされています。作成した日からではない点に注意が必要です。
運転者の自宅から出発する場合はどうなりますか。
営業所に寄らずに出発して数日戻らない形であれば、乗務前も乗務後も対面で点呼できないことになるため、対象になります。
予定が変わったら作り直すのですか。
作り直すのではなく、変更の内容を書き足す形が一般的です。元の内容を消さずに残し、いつ誰が指示したかを添えておきます。運転者が持っている正のほうにも書き足してもらいます。
パソコンで作って印刷したものでよいですか。
作り方について特定の形が決められているわけではないとされています。運転者が携行できる形になっていれば、印刷したものでも問題になりません。