点呼とは?乗務前・乗務後・中間の3つを解説
目次
点呼という言葉は、運送業で働き始めた人がいちばん早い時期にぶつかる言葉です。ところが「毎朝やっているあれ」という理解のまま何年も過ぎてしまい、巡回指導で記録の不備を指摘されて初めて中身を調べた、という話をよく聞きます。
この記事では、点呼が一般にどこまでを指すのか、なぜ3つに分かれているのか、そして実際に何を確かめて何を残すのかを整理します。用語の説明で終わらせず、明日の朝から手を動かせるところまで書きます。
結論:点呼とは「運転者を出す前と戻った後に、状態を確かめて記録に残すこと」
点呼とは、運行管理者などが運転者と向き合って、安全に運転できる状態かどうかを確かめ、必要な指示を出し、その内容を記録に残す一連の手続きのことです。声をかけることが目的ではなく、確かめた事実を後から示せる形にすることが目的です。
ポイントはここです。点呼がうまく回っている営業所は、抜き打ちで聞かれてもすぐ答えられます。「今朝この運転者に何を確かめたか」「誰が点呼をしたか」「異常があったとき何を指示したか」。この3つに記録で答えられない状態が続いているなら、やり方を見直す価値があります。
一般には、貨物自動車運送事業輸送安全規則にもとづいて行うものとされています。緑ナンバー(事業用自動車)を使う運送事業者が対象で、白ナンバーの社用車には別の決まりが適用されます。ここは混ざりやすいので、自社がどちらなのかを先に確かめておくと迷いません。
点呼が3つに分かれる理由
点呼は、運行のどの時点で行うかによって3つに分かれています。分かれているのは、確かめたいことが時点ごとに違うからです。出す前に見たいのは「この人を出してよいか」、戻った後に見たいのは「道中で何があったか」です。
点呼の1つ目:乗務前点呼
点呼のうち、いちばん回数が多いのが乗務前点呼です。運転者が業務を始める前に行い、その日の運行に出してよい状態かどうかを確かめます。
確かめるものは一般に4つとされています。酒気帯びの有無、疾病や疲労や睡眠不足などで安全な運転ができないおそれがないか、日常点検を実施したか(または実施の確認をしたか)、そしてアルコール検知器を使ったかどうかです。この4つのうち1つでも空欄のまま残っていると、巡回指導で最初に見つかります。
点呼の2つ目:乗務後点呼
点呼の2つ目は、運転者が戻ってきたときに行う乗務後点呼です。目的が前とは変わり、確かめるのは「行って帰ってくる間に何があったか」になります。
一般には、業務に使った車両の状況、道路の状況、運行の状況の報告を受け、交替した運転者がいる場合はその通告の内容も確認するとされています。あわせて、乗務前と同じく酒気帯びの有無をアルコール検知器で確かめます。帰着後の点呼を「お疲れさま」で済ませてしまう営業所が多く、記録が乗務前だけ埋まっている状態になりがちです。
点呼の3つ目:中間点呼
点呼の3つ目が中間点呼で、これがいちばん誤解されています。中間点呼は、乗務前と乗務後のどちらも対面でできない運行のときに、その途中で少なくとも1回行うものとされています。
長距離で2日以上にわたる運行が典型です。出るときは営業所にいたが帰りは翌々日、という形だと、乗務後点呼を対面でできません。このときは電話などの方法で途中に1回、酒気帯びの有無と、疾病・疲労・睡眠不足の状況を確かめ、必要な指示を出します。片方だけ対面でできない場合は中間点呼の対象ではないという点が、間違えやすいところです。
なお、条文や様式によっては「業務前点呼」「業務後点呼」という書き方になっていることがあります。指しているものは同じなので、社内の用紙と行政の様式で言葉が違っていても問題はありません。ただし社内で2つの言い方が混ざっていると、新しく入った人が別の手続きだと誤解するので、どちらかに寄せておくと引き継ぎが楽になります。
点呼の手順を4つに固定する
点呼のやり方が人によってばらつく営業所は、順番が決まっていないことが原因であることが多くあります。確かめる項目は決まっていても、聞く順番が毎回違うと、忙しい朝に1つ飛ばしても気づけません。
一般には、次の4つの順に固定しておくと安定します。
1つ目は迎えるところです。運転者の顔色、声、動き方を見ます。数値に出ない不調はここでしか拾えません。2つ目が確かめるところで、酒気帯び、体調、日常点検の実施を順に聞いていきます。3つ目が指示で、その日の運行で注意する場所や、荷主から来ている連絡を伝えます。4つ目が記録です。
大事なのは4つ目を最後に置かないことです。確かめながら書く形にしておくと、記入漏れがほぼ無くなります。確認を全部終えてからまとめて書く運用にすると、次の運転者が待っている状況で後回しになり、そのまま忘れます。
点呼で確かめる項目を時点ごとに分ける
点呼で何を確かめるかは、時点ごとに分けて一覧にしておくと抜けません。口頭の順番が人によって違っていても、記録の欄が同じなら結果はそろいます。
酒気帯びの確認は、3つの時点すべてで行うものとされています。ここだけは共通なので、記録用紙でも3か所に欄を作っておくと埋め忘れが減ります。
アルコール検知器については、営業所ごとに備え、常時有効に保持することとされています。「備えてある」だけでなく「使える状態か」を定期的に確かめた記録も求められるので、検知器そのものの点検記録も別に残しておくと、指摘を受けにくくなります。
点呼は誰が行うのか
点呼は、原則として運行管理者が行うものとされています。ただし現実には、夜間や早朝、複数の運転者が同時に出ていく時間帯があり、運行管理者1人ですべてを回すのは難しくなります。
そこで一般には、運行管理者の補助者を選任して、点呼の一部を行わせる形が取られています。補助者が行える点呼には割合の上限があり、少なくとも3分の1以上は運行管理者自身が行うこととされています。補助者に全部任せている状態は、記録が完璧でも指摘の対象になります。
補助者になれるのは、運行管理者の資格を持っている人か、国土交通大臣が認定する講習を修了した人とされています。名簿の形で誰を補助者にしているかを残しておくと、巡回指導のときに説明が早く終わります。
割合は回数で見ます。月に点呼が300回あるなら、そのうち100回以上は運行管理者本人が行っている必要がある、という数え方です。夜間に出る運行が多い会社では、この数字が自然に崩れていきます。運行管理者を増やすか、出庫の時間帯をまとめるか、どちらかで対処することになるので、崩れてから慌てないように月ごとに数えておくと安全です。
なお、補助者は点呼の一部を行えますが、運行の可否そのものを判断する立場ではないとされています。酒気帯びが確認されたときや、体調に問題がありそうなときは、補助者の判断で出さずに運行管理者へつなぐ形にしておきます。その連絡の道筋を決めていないと、現場で止められずにそのまま出てしまいます。
運行管理者そのものの人数や届出については、運行管理者の選任で分けて説明しています。
点呼が対面でなくてよい場合
点呼は対面で行うことが原則とされていますが、対面によらない方法が認められる場面があります。ここは年々見直されている部分なので、自社が使えるかどうかは所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。
一般に知られているのは次の3つの形です。
1つ目は、遠隔地で乗務が始まる場合や終わる場合の電話などによる点呼です。営業所から離れた場所で運行が始まる形のときに使われます。2つ目がIT点呼で、営業所どうしをカメラとマイクでつないで行う方法です。3つ目が業務後自動点呼で、機器が要件を満たしていれば乗務後の点呼を機械で行える形とされています。
いずれも、使える営業所の条件や機器の要件が細かく決まっています。「電話でもいい」と単純化して運用すると、条件を外したまま続けてしまうことになるので、IT点呼の条件で分けて整理しました。
点呼と、白ナンバーの確認義務はどう違うのか
ここが混ざると、必要のない手続きをしたり、逆に必要な記録を残していなかったりします。先に線を引いておきます。
点呼は、緑ナンバー(事業用自動車)で運送事業を行う会社に求められるものです。他人の荷物や人を運んで運賃をもらう事業が対象になります。一方、自社の荷物を自社の車で運ぶ場合や、営業で社用車に乗る場合は白ナンバーになり、こちらは道路交通法の側で安全運転管理者による確認が求められる形になっています。
白ナンバー側の確認は、運転前と運転後に運転者の酒気帯びの有無を目視などで確かめ、アルコール検知器を使い、記録を1年間残すものとされています。確かめる中身は点呼と重なりますが、根拠になっている法律が違うため、名前も届出先も別です。点呼は運輸支局、安全運転管理者は警察署が窓口になります。
自社に両方あるケースもあります。緑ナンバーのトラックと、営業用の白ナンバーの乗用車を同じ会社が持っている形です。このときは2つの制度が並行して動くので、記録用紙も分けておいたほうが混乱しません。白ナンバー側の詳しい要件は、安全運転管理者の選任にまとめました。
点呼でよくある指摘を先に潰しておく
巡回指導で点呼について指摘を受けるとき、内容はだいたい決まっています。先に知っておくと、直すのが数日で済みます。
いちばん多いのが、乗務後点呼の記録が抜けているものです。次に多いのが、アルコール検知器の使用の有無の欄が空いているもの。3つ目が、点呼をした人の名前が書かれていないか、補助者ばかりになっているものです。
どれも「やっていないから抜けている」のではなく、「やったのに書いていない」ことが多いのが、この分野の特徴です。記録が無ければやっていないのと同じ扱いになるので、確かめた直後に書く運用に変えるだけで、指摘の大半は消えます。
4つ目に多いのが、指示事項の欄が毎日同じ文言で埋まっているものです。「安全運転」とだけ書かれた行が1年ぶん並んでいると、実際に指示を出していても、出していないのと見分けがつきません。天候、通る道の工事、荷主からの連絡など、その日に固有のことを1つ入れるだけで見え方が変わります。
5つ目が、点呼の時刻と運転日報の出庫時刻が合っていないものです。点呼が終わってから出発するはずなので、日報の出庫時刻より点呼の時刻が後になっていると、突き合わせた人がまず気づきます。書類どうしの時刻がそろっているかは、内容そのものより先に見られるところです。
記録の残し方と保存年数については、点呼記録簿の保存期間にまとめました。運送業で保存が必要な書類を種類ごとに並べたものは、運送業の書類の保存期間一覧にあります。
点呼の体制を人数から組む
最後に、点呼を回す体制の話をしておきます。手順を決めても、人が足りなければ回りません。
必要な人数は、運転者の数ではなく出入りの時間帯の広がりで決まります。運転者が20人いても、全員が6時から7時の間に出て、17時から18時の間に帰ってくるなら、1人でも回せます。逆に運転者が8人でも、出庫が深夜1時から朝9時までばらけていれば、1人では足りません。
だから、体制を考えるときはまず出入りの時刻を並べてみます。1週間ぶんを時間帯ごとに数えると、どこに人が要るかがはっきりします。感覚で「人が足りない」と言っている間は、増やしても足りません。
そのうえで、打てる手は3つあります。1つ目が人を増やすこと。2つ目が出庫の時間帯をまとめること。3つ目が、対面によらない点呼の仕組みを使うことです。1つ目がいちばん確実ですが、費用がかかります。2つ目は荷主との調整が要りますが、費用はかかりません。
数えてみると、人が要る時間帯が思ったより狭いことがあります。深夜に1便あるだけなら、その1便の出庫を朝に寄せられないかを先に考えます。
意外に効くのが2つ目です。出庫が30分ずれているだけの便が2つあるなら、そろえれば1回の点呼の場面にまとめられます。運行の組み方を少し変えるだけで、点呼の負担が変わることは多くあります。
まとめ
点呼は、運転者を出す前と戻った後に状態を確かめ、その内容を記録に残す手続きです。乗務前・乗務後・中間の3つに分かれており、確かめる項目は時点ごとに違います。
まず手を付けるなら、乗務後点呼の記録が毎日埋まっているかを見るところからです。乗務前は習慣になっていることが多いのに対し、乗務後は抜けやすく、そのぶん直したときの効果が大きい部分になります。次に、点呼をした人の名前が入っているか、補助者の割合が偏っていないかを見ていくと、指摘の芽を先に潰せます。
点呼は、続けること自体は難しくありません。難しいのは、忙しい日と人が足りない日にも同じ形で続くことです。順番を固定して、確かめながら書く。この2つだけ守れていれば、記録は自然にそろいます。
なお、ここに書いた内容は一般的な形です。自社の運行に何がどこまで求められるかは、事業の種類や車両の数によって変わります。最終的な判断は、所轄の運輸支局にご確認ください。
実際に使える様式が必要な方へ
点呼記録簿のExcel様式は、商い屋の運送業向けのページにそろっています。書き方をひととおり読んだあとに、様式だけ持っていく形でも使えます。
商い屋で様式をさがすよくある質問
点呼は毎日しなければならないのですか。
一般には、運転者が業務を始めるときと終えるときごとに行うものとされています。日単位というより運行単位なので、1日に2回出庫する運転者には、その回数だけ点呼が必要になります。
点呼と朝礼は同じものですか。
別のものです。朝礼は全員に向けた連絡の場ですが、点呼は運転者1人ずつの状態を確かめて記録に残す手続きです。朝礼のあとに点呼をまとめて済ませる形にすると、個々の確認の記録が残らなくなります。
運転者が1人しかいない小さな事業所でも点呼は必要ですか。
緑ナンバーで事業を行っている以上は必要とされています。運転者が運行管理者を兼ねている場合の扱いは営業所の体制によって変わるため、所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。
補助者はどこまで点呼をしてよいのですか。
一般には、点呼の総回数のうち3分の2までが補助者の上限とされており、少なくとも3分の1は運行管理者が自ら行うこととされています。割合は回数で見るので、月の点呼回数を数えて確かめる形になります。
点呼記録簿は営業所ごとに分けるのですか。
点呼は営業所ごとに行うものとされているため、記録も営業所ごとに備えるのが一般的です。複数の営業所を1冊にまとめると、どの営業所の運行管理者が行ったのかが追えなくなります。
点呼の記録は紙でなければいけませんか。
保存の方法について特定の形が決められているわけではないとされており、電子データでの保存も行われています。ただし、点呼を行った人の確認が残る形にする必要があるため、誰がいつ確認したかが後から分かる作りにしておくのが安全です。
運転者が1人で運行管理者を兼ねている場合、自分で自分に点呼をするのですか。
自分で自分の状態を確かめる形は、点呼として想定されていません。小規模な事業所での扱いは体制によって変わるため、所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。実務では、補助者を置く、別の営業所からIT点呼で行うといった形が取られています。
アルコール検知器で数値が出たらどうすればよいですか。
酒気を帯びた状態の運転者を運行に出すことはできないとされています。交替の運転者を立てるか、運行そのものを見合わせる判断になります。あわせて、そのときの数値と対応した内容を点呼記録簿に残しておきます。