IT点呼の条件とは?遠隔点呼との違いを解説
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IT点呼という言葉は、営業所が増えたり、夜間の出庫が多くなったりしたときに、最初に候補として挙がります。ところが調べ始めると、遠隔点呼、電話点呼、業務後自動点呼と似た言葉が並んでいて、自社がどれを使えるのか分からなくなる、というところで止まってしまいがちです。
この記事では、IT点呼が何を指すのか、遠隔点呼や電話による点呼とどう違うのか、そして使うために何がいるのかを整理します。名前の違いだけでなく、使える営業所の条件まで分けて書きます。
結論:IT点呼とは「機器を使って、対面と同じ扱いにできる点呼」
IT点呼とは、カメラとマイクを備えた機器を使い、離れた場所にいる運転者と運行管理者の間で行う点呼のことです。電話で済ませることではなく、対面と同じ水準の確認ができる機器を使うところが要点になります。
ポイントはここです。点呼は対面が原則とされていて、IT点呼はその例外にあたります。例外である以上、使える営業所の条件と、使う機器の条件が決まっています。どちらか一方でも外れていると、対面の点呼をしていないことになってしまいます。
一般には、運転者の顔色や応答の様子が確認できること、アルコール検知器の測定結果が運行管理者側に届くこと、そのやり取りが記録として残ることが求められるとされています。「テレビ電話をつなげばIT点呼」ではないというのが、いちばん誤解されているところです。
IT点呼と似た言葉を4つに整理する
言葉が似ているので、まず全体を並べます。ここを分けておかないと、調べても自社の話なのかが判断できません。
1つ目が対面の点呼です。これが原則で、運行管理者と運転者が同じ場所で顔を合わせて行います。
2つ目がIT点呼です。営業所どうし、または営業所と車庫の間を機器でつないで行います。同じ会社の中の、離れた拠点をつなぐ形が基本になります。
3つ目が遠隔点呼で、IT点呼より新しい仕組みです。使える範囲が広く、営業所と車庫に限らない形が認められているとされています。そのぶん機器や体制の要件が細かく決まっています。
4つ目が電話などによる点呼です。これは機器でつなぐ話ではなく、乗務前と乗務後のどちらも対面でできない運行のときに、やむを得ず行う形です。2日以上にわたる運行の途中で行う中間点呼が、これにあたります。
名前が似ているのに扱いが違う理由
4つに分かれているのは、制度が一度に作られたものではないからです。対面が原則としてまずあり、そのあとで例外が必要になるたびに、条件を付けた形が足されてきました。
だから、新しいものほど要件が細かく、そのぶん使える範囲が広くなっています。古い仕組みが悪いわけではなく、範囲が狭いかわりに要件が軽いという関係です。自社の営業所が2つしかないなら、範囲の広い仕組みを選ぶ理由はありません。
逆に言うと、「いちばん新しい方法を選べばよい」という判断は外れます。要件を満たすための費用と手間が、必要のない範囲のぶんまでかかることになります。
IT点呼が使える営業所の条件
IT点呼でいちばん大事なのが、どの営業所でも使えるわけではないという点です。ここを確かめずに機器から入ると、買ったあとで使えないことが分かります。
一般には、安全性の評価が一定以上である営業所、つまり貨物自動車運送事業安全性評価事業の認定を受けている営業所(いわゆるGマークを取得している営業所)が対象とされてきました。近年は要件の見直しが進んでおり、認定を受けていない営業所でも一定の条件のもとで使える形が広がっているとされています。
ここは変わり続けている部分なので、記事の情報だけで判断しないほうが安全です。自社の営業所が対象になるかどうかは、所轄の運輸支局に直接確かめるのが確実で、そのうえで機器を選ぶ順番にすると無駄がありません。
条件を確かめるときに聞くことは3つです。自社の営業所が対象になるか。何時から何時まで使えるか(時間の制限がある場合があります)。届出や報告が要るか。この3つを先に押さえておけば、機器の話は後からで間に合います。
遠隔点呼との違いはどこにあるのか
IT点呼と遠隔点呼は、外から見ると同じことをしているように見えます。違いは、どこまで離れてよいかと、そのために何が要るかです。
IT点呼は、同じ会社の営業所や車庫の間をつなぐ形が基本でした。遠隔点呼は、その範囲が広く取られており、条件を満たせばグループ会社の間でも使える形が認められているとされています。運行管理者を1か所に集めて、複数の拠点の点呼をまとめて行う、という運用ができるようになります。
そのかわり、遠隔点呼のほうが求められるものは多くなります。運転者の顔と本人を照合できること、機器の故障に備えた手当てがあること、記録が自動で残ること。人手で確かめていた部分を機器に置き換えるぶん、機器の信頼性が問われるという関係になっています。
どちらを選ぶかの目安はこうなります。営業所が2つか3つで、距離も近いなら、IT点呼で足ります。拠点が離れていて、夜間の運行管理者を1か所にまとめたいなら、遠隔点呼を検討する価値があります。拠点の数と、運行管理者を何人置けるかで決まる話であって、機器の性能で決まる話ではありません。
導入して失敗する形を先に知っておく
実際に入れてから「思っていたのと違う」となる形が、いくつか決まっています。先に知っておくと避けられます。
1つ目が、機器は入れたのに対面の点呼が減らなかった、という形です。原因はたいてい、使える時間帯や使える拠点に条件があり、実際に使える場面が想定より少なかったことにあります。導入前に「月に何回ぶんが置き換わるのか」を数えておくと、この失敗は起きません。
2つ目が、運転者が使い方を覚えられない形です。画面の操作が増えると、忙しい朝に飛ばされます。飛ばされた回は記録が残らないので、結果として点呼をしていない扱いになります。機器の性能より、手順が何段あるかのほうが現場では効きます。
3つ目が、記録が二重になる形です。機器の側にも記録が残り、これまでの紙の用紙も続けている、という状態です。二重になっていること自体は問題ありませんが、内容が食い違ったときにどちらが正なのかが決まっていないと、監査の場で説明できません。どちらを正にするかを先に決めておきます。
4つ目が、通信環境の見落としです。車庫が郊外にあると、電波が弱くて映像が止まることがあります。事務所で試して問題なくても、実際に使う場所で試さなければ意味がありません。導入の判断は、必ず使う場所で行うのが確実です。
業務後自動点呼という選択肢
もう1つ、機器が点呼を行う形があります。業務後自動点呼と呼ばれるもので、運転者が戻ってきたあとの点呼を、要件を満たした機器で行うものとされています。
使える場面が乗務後に限られているのが特徴です。乗務前の点呼は、その日に出してよいかという判断が入るので機械には任せられませんが、乗務後は報告を受けて記録する部分が大きいため、機器で行える形が整えられたという流れになります。
向いているのは、帰着が夜中や早朝に散らばっている会社です。1人の帰着のために運行管理者が待機している状態が無くなるので、人の負担がはっきり減ります。逆に、帰着が夕方に集中している会社では、導入しても効果が小さくなります。
導入には届出が必要とされており、機器も定められた要件を満たしたものに限られます。ここも変わっている部分なので、運輸支局に確かめてから進めます。
機器を入れる前に決めておくこと
どの方法を選ぶにしても、機器を買う前に社内で決めておくことが3つあります。ここを飛ばすと、入れたあとで運用が回りません。
1つ目が、誰が点呼をするのかです。IT点呼にしても、画面の向こうに運行管理者か補助者がいなければ成立しません。機器を入れれば人がいらなくなるわけではないので、夜間に誰が画面の前にいるのかを先に決めます。
2つ目が、機器が止まったときどうするかです。通信が切れた、カメラが映らない、検知器が反応しない。このときに運行を止めるのか、別の方法に切り替えるのかを決めておきます。決めていないと、現場の判断でそのまま出してしまいます。
3つ目が、記録がどこに残るかです。機器が自動で記録を作る場合、それがどこに保存され、1年後にどう取り出すのかを確かめておきます。契約が終わったあとにデータを出せない仕組みだと、保存期間を満たせなくなります。
費用と手間をどう見積もるか
金額そのものは機器や会社によって変わるので、ここでは何にお金と手間がかかるかの内訳だけ整理します。
かかるものは4つに分かれます。機器そのものの費用、通信の費用、導入時の届出や確認にかかる手間、そして運用が変わることによる教育の手間です。4つ目がいちばん見落とされます。運転者と運行管理者の双方に新しい手順を覚えてもらうので、最初の1か月はむしろ時間が増えます。
減るもののほうは、はっきりしています。夜間や早朝に運行管理者が待機している時間、拠点間の移動、そして記録を手で書く時間です。このうち、いちばん大きいのは待機の時間になります。帰着が深夜にばらついている会社では、1人ぶんの人件費に相当することもあります。
判断の目安としては、待機のために発生している時間を月単位で数えて、それが機器の費用を上回るかで見るのが分かりやすくなります。拠点が1つしかなく、帰着が夕方に集まっている会社なら、急いで入れる必要はありません。
なお、点呼の記録が自動で残る形にすると、補助者の割合を数える作業が無くなります。運転者が多い営業所では、この部分だけで毎月の事務が軽くなります。
紙の運用を先に整えておく
機器を入れる話をしてきましたが、順番として先にやることがあります。いまの紙の運用を整えておくことです。
理由は単純で、紙で回っていないものは、機器を入れても回らないからです。乗務後の点呼の記録が半分しか埋まっていない営業所が機器を入れると、記録が半分しか無いことがより鮮明に残るだけになります。
先に整えるのは3つです。1つ目が、点呼の順番を固定すること。2つ目が、確かめながら書く形にすること。3つ目が、誰が点呼をするのかを時間帯ごとに決めること。この3つは機器がなくてもできますし、費用もかかりません。
そのうえで、紙では解けない問題が残ったときに機器を検討します。紙では解けないのは、離れた場所に運行管理者がいないと成立しないという部分と、夜間の待機が人の負担として残るという部分の2つです。ここが自社の問題なら、機器が効きます。
逆に、記録の抜けや書き方のばらつきが問題なら、それは機器では解けません。手順と体制の問題なので、機器を入れても同じことが起きます。
言葉の使い分けを社内でそろえる
最後に、社内での言い方の話をしておきます。細かいことのようですが、実務ではここでつまずきます。
IT点呼、遠隔点呼、電話点呼、自動点呼。この4つを社内で混ぜて使っていると、運行管理者と現場で別のことを指したまま話が進みます。「うちは遠隔でやっている」と言ったときに、機器を使ったIT点呼なのか、電話なのかが伝わらないという形です。
そろえ方は簡単です。自社で実際に使っている方法にだけ名前を付けて、それ以外の言葉を使わないことです。IT点呼しか使っていないなら、社内では「IT点呼」と「対面」の2つだけにします。
記録の側でもそろえます。点呼記録簿の「点呼の方法」の欄に書く言葉を決めておき、それ以外を書かせないようにします。同じ方法が「IT」「IT点呼」「遠隔」と3通りで書かれていると、集計もできませんし、監査で説明するときにも手間が増えます。
新しく人が入ったときに、この2つの言葉だけ教えれば済むのも利点です。制度全体を説明する必要はありません。
社外とのやり取りでも同じです。運輸支局に相談するときや、機器の会社に問い合わせるときに、自社が使っている方法を正確な名前で言えると、話が早く進みます。「遠隔でやりたい」と伝えて、相手が遠隔点呼の要件を説明し始めると、必要のない準備の話に時間を使うことになります。
まとめ
IT点呼は、機器を使って離れた場所の運転者と点呼を行い、対面と同じ扱いにする仕組みです。遠隔点呼はその範囲を広げたもの、電話による点呼は対面ができない運行での例外、業務後自動点呼は乗務後を機器で行うものと、4つは役割が違います。
まず手を付けるなら、自社の営業所が対象になるかを運輸支局に聞くところからです。機器を調べるのはそのあとで間に合いますし、順番を逆にすると使えない機器を選んでしまいます。次に、夜間に誰が画面の前にいるのかを決めておくと、導入したあとに運用が止まりません。
なお、この分野は要件の見直しが続いている部分です。ここに書いたのは一般的な形なので、自社に何が適用されるかは、所轄の運輸支局にご確認ください。
よくある質問
IT点呼は電話でもよいのですか。
電話は別の扱いになります。IT点呼はカメラとマイクを備えた機器で行うもので、運転者の様子を目で確かめられることが前提になっています。電話による点呼は、対面もIT点呼もできない運行のときの形です。
Gマークを取っていないとIT点呼は使えませんか。
以前は安全性の評価を受けた営業所が対象とされていましたが、近年は条件のもとで対象が広がっているとされています。変わり続けている部分なので、自社が対象かどうかは所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。
IT点呼にすると、点呼記録簿は不要になりますか。
不要にはなりません。方法が変わっても、記録として残すことは同じです。機器が自動で記録を作る場合でも、必要な項目がそろっているかを確かめておきます。
運行管理者が別の営業所にいてもよいのですか。
IT点呼や遠隔点呼は、まさにその形を認めるための仕組みです。ただし、どこまで離れてよいか、どの拠点どうしをつないでよいかに条件があります。
機器が故障したらどうすればよいですか。
対面での点呼に戻すのが基本です。故障している間の運用をあらかじめ決めておき、その日の記録には機器が使えなかった旨を残しておきます。
アルコール検知器は運転者側と運行管理者側の両方に要りますか。
運転者がいる側に検知器があり、その結果が運行管理者側で確認できることが求められます。結果を口頭で伝えるだけの形は、対面と同じ水準の確認とは見なされにくくなります。