運転免許の有効期限管理|失効を防ぐ確認の型
目次
免許証の有効期限は、運行の仕事でいちばん静かに切れるものです。車検のように整備工場から連絡が来るわけでもなく、切れた翌日も見た目は何も変わりません。気づくのは、事故か検問のときになります。
この記事では、免許証の有効期限をどう把握して、どの時点で声をかけて、切らさない形をどう作るかを整理します。制度の説明ではなく、明日から回る仕組みの作り方として書きます。
結論:免許証の有効期限は「会社が持って、本人に任せない」
免許証の有効期限は、本人の持ち物である以上は本人が管理するもの、と考えられがちです。ところが実務では、会社が期限を把握していなかったことのほうが重く問われます。
ポイントはここです。有効期限が切れた免許証で運転させると、無免許運転になります。本人が罰を受けるだけでなく、それを運転させた会社の側も問われる形になるとされています。「本人が更新したと言っていた」は理由になりません。
一般には、事業用自動車を使う会社では運転者台帳に免許の情報を書くこととされており、そこに有効期限の欄があります。ただし台帳は人ごとに1枚なので、期限順に並べ替えられません。これが、台帳があるのに切れる理由になります。
台帳とは別に、期限の一覧を持つ
やることは1つだけです。運転者台帳とは別に、免許の有効期限だけを集めた一覧を作ります。
列は5つで足ります。氏名、免許の種類、免許証の番号、有効期限、そして更新の状況。5列目が要点です。期限だけの表は、見た人が次に何をすればよいか分かりません。「案内済み」「更新済み・新しい期限は◯年◯月」まで書ける欄にしておきます。
並べ替えができる形にしておくことが大事です。表計算で作れば、期限の近い順に並べるのは一瞬です。紙で人ごとに1枚にすると、この並べ替えができず、結局めくることになります。
免許の種類の欄も入れておきます。大型、中型、準中型、けん引。同じ人でも持っている種類によって乗れる車が変わるので、配車のときに見返す場面があります。
いつ声をかけるかを決める
免許の更新は、誕生日の前後1か月の間に行うのが一般的とされています。つまり期限は誕生日の1か月後あたりに来ます。ここから逆算して、声をかける時点を決めます。
実務で回っている形は3段です。3か月前に一覧で拾う、1か月前に本人へ伝える、更新後に新しい期限を書き換える。
3か月前に拾うのは、免許の状態を確かめる時間を作るためです。違反があって講習の区分が変わっていると、更新にかかる時間も変わります。当日に免許センターへ行って終わらないことがあります。
1か月前に本人へ伝えるときは、口頭だけで終わらせません。伝えた日を一覧に書いておきます。伝えたかどうかで後から言い争いになるのが、この分野でいちばん不毛な時間になります。
誕生日から逆算して年間の山を知る
一覧ができたら、1年のどこに更新が集まるかを見ておきます。免許の期限は誕生日に紐づくので、人数が多い会社では月ごとに山と谷ができます。
たとえば4月に更新が5人集まる会社なら、その年の3月は案内と確認だけで手が埋まります。前もって分かっていれば、他の事務を前後にずらせます。逆に、山があると知らずに迎えると、その月だけ全部が遅れます。
見方は簡単で、一覧を期限の月で数えるだけです。1回やれば、翌年以降はほぼ同じ形になります。人が入れ替わったときだけ数え直せば足ります。
更新後の確認を飛ばさない
いちばん多い抜けが、ここです。「更新しておいて」と伝えたところで終わり、実際に更新されたかを確かめていない形です。
確かめ方は1つで、新しい免許証の現物を見ます。コピーを取るか、写真を撮るか、有効期限の数字を一覧に書き写す。どれでも構いませんが、本人の申告だけで一覧を書き換えないことが要点です。
現物を見ないまま一覧を書き換えると、表の上だけ更新済みになります。表が嘘をついている状態がいちばん危ないのは、誰も疑わなくなるからです。期限切れに気づく最後の砦が、その表だからです。
見る場面は、点呼のときにしておくと確実です。毎日必ず顔を合わせる場面なので、別の日程を作る必要がありません。点呼そのものの手順は点呼とはにまとめました。
あわせて、運転者台帳の側も書き換えます。一覧だけ新しくして台帳が古いままだと、監査で見られるのは台帳のほうです。2か所あることを忘れないようにします。
免許の条件と、種類の変更も見る
有効期限だけを見ていると、見落とすものが2つあります。
1つ目が、免許の条件です。眼鏡等、AT限定、そして中型8トン限定のような限定の条件が付いていることがあります。条件を外れた運転をさせると、条件違反になります。眼鏡の条件が付いている運転者が眼鏡をかけていないのは、点呼で気づける部分です。
2つ目が、免許の種類が途中で変わることです。準中型を取った、けん引を取った。会社が知らないまま本人が取得していることがあり、そのぶん配車の選択肢が増えているのに使えていない形になります。逆に、免許が取り消されたり停止になったりしたことを会社が知らないのが、いちばん危ない形です。
3つ目が、住所の変更です。住所が変わると更新の案内が届かなくなり、本人が期限を忘れる確率が上がります。会社の側で住所を把握していれば、案内が届いていないことに気づけます。
免許の停止や取消しは、本人が申し出なければ会社には分かりません。だから、一定の周期で免許証の現物を見る運用を入れておきます。年に1回でも、見ると決めていれば気づけます。
期限が切れていた運転者が見つかったら
一覧を作った初日に、すでに切れている人が見つかることがあります。珍しくないので、動き方を書いておきます。
まず、その人を運転から外します。切れた免許で運転させると無免許運転になるため、ここは例外なく先にやります。配車の都合より先に止める判断になります。
次に、いつから切れていたかを確かめます。切れていた期間に運行に出ていたなら、その運行の記録を残しておきます。隠すと、あとで日報や点呼記録簿との突き合わせで必ず出てきます。
そのうえで、更新の手続きに行ってもらいます。期限から一定の期間内であれば、所定の手続きで再取得できる場合があるとされていますが、期間や条件は状況によって変わります。本人の運転経歴に関わるので、必ず運転免許センターで確かめてもらいます。
最後に、同じことが起きない形にします。原因はほぼ、期限を誰も見ていなかったことです。一覧を作って見る日を決めるところまでやって、はじめて終わりになります。
一覧が続かなくなる理由
期限の一覧は、作るのは簡単で、続けるのが難しい書類です。止まる理由は決まっています。
1つ目が、見る日を決めていないことです。「気づいたときに見る」運用は、忙しい月に止まります。月初に5分でよいので、見る日を決めておきます。
2つ目が、1人の頭の中にあることです。作った人のパソコンにしかない状態だと、その人が休んだ月に誰も見ません。共有できる場所に置くか、印刷して事務所に貼るかのどちらかにします。
3つ目が、列を増やしすぎることです。あれば便利だと思って欄を足していくと、埋めるのに時間がかかり、やがて更新されなくなります。空欄だらけの一覧は、無い一覧とほとんど同じです。
更新の時期が重なる山を先に知る
一覧ができたら、1年のどこに更新が集まるかを数えておきます。免許の期限は誕生日に紐づくので、人数が多い会社では月ごとに山と谷ができます。
4月に更新が5人集まる会社なら、その年の3月は案内と確認だけで手が埋まります。前もって分かっていれば、他の事務を前後にずらせます。知らずに迎えると、その月だけ全部が遅れます。
数え方は、一覧を期限の月で並べるだけです。1回やれば翌年以降もほぼ同じ形になるので、人が入れ替わったときだけ数え直せば足ります。
山の月は、案内を2週間早めておくと平準化できます。全員に同じ運用を当てるより、混む月だけ前倒しにするほうが現実的です。
他の期限と1枚にまとめるか、分けるか
運行の仕事では、期限のあるものが免許証だけではありません。車検、3ヶ月点検、自賠責、適性診断、運行管理者や整備管理者の講習。どれも切らすと止まります。
まとめる利点は、見る場所が1つで済むことです。月初に開くのが1枚になります。分ける利点は、対象が違うことです。免許と適性診断は人に付き、車検と点検は車に付きます。人が辞めたら消える行と、車を手放したら消える行が混ざることになります。
判断の目安としては、人に付くものと車に付くもので2枚に分けるのが扱いやすくなります。免許と適性診断と指導の記録で1枚、車検と点検と自賠責で1枚。車の側は車検と保険の期限管理と事業用自動車の3ヶ月点検に分けて書きました。
白ナンバーの会社でも同じことが要る
ここまで事業用自動車を前提に書いてきましたが、営業車で回っている会社でも中身は変わりません。
白ナンバーの社用車を一定台数以上使っている事業所では、安全運転管理者を選任することとされています。その業務には運転者の状況を把握することが含まれるため、免許が有効かどうかは把握しておく対象に入ります。
違うのは、運転者台帳のような法定の様式が無いことです。そのぶん、期限の一覧が唯一の管理の道具になります。台帳が無いから楽なのではなく、一覧が無ければ何も残らないという関係になります。
営業社員は直行直帰が多く、免許証の現物を見る場面が作りにくいという事情もあります。年に1度、健康診断や全社の集まりの日に合わせて見る、という形にしている会社があります。見る日を作らないと、何年も見ないまま過ぎます。
安全運転管理者そのものについては、安全運転管理者の選任にまとめました。
一覧から、指導と適性診断につなげる
免許の期限を管理し始めると、同じ表に乗せたくなるものが出てきます。人に付く期限は、実は免許だけではありません。
適性診断には、受ける人と時期が決まっているものがあります。新しく雇い入れた運転者、一定の年齢に達した運転者、事故を起こした運転者。どれも「その人がいつ受けるべきか」で決まるので、免許の一覧と性質が同じです。
特定運転者への指導も同じ形です。初任、高齢、事故惹起。誰にいつ何時間やったかを残すことになります。
この3つを1枚にまとめておくと、月初に開く表が1枚で済みます。列は「氏名/免許の期限/次の適性診断/直近の指導」の4つから始めれば足ります。最初から完璧な表を作ろうとすると、作り終わらないまま止まります。
それぞれの中身は適性診断の受診管理と特定運転者の指導記録簿に分けて書きました。
まとめ
免許証の有効期限は、本人任せにすると切れます。運転者台帳とは別に期限だけの一覧を作り、期限の近い順に並べ替えられる形にしておくのが要点になります。
まず手を付けるなら、全員の免許証の現物を見て、有効期限を1枚の表に写すところからです。人数が20人でも半日で終わります。次に、3か月前に拾う日を月初に決めると、更新の案内が遅れなくなります。
期限の管理は、覚える仕事ではなく仕組みの仕事です。人の記憶に頼っている限り、忙しい月に必ず落ちます。表を作って、見る日を決めて、現物で確かめる。この3つだけ守れていれば切れません。
なお、免許の更新そのものの手続きや、講習の区分については、住所地の公安委員会や運転免許センターの案内をご確認ください。
一覧が回り始めると、免許の期限で慌てることが無くなります。そうなってはじめて、他の期限に手を伸ばす余裕ができます。最初の1枚をどこから作るかで迷うなら、免許から始めるのが分かりやすいところです。人数ぶんしか行が無く、情報の出どころも免許証1枚で済むからです。
よくある質問
免許証の有効期限は誰が管理するのですか。
本人が更新するものですが、事業用自動車を運転させる会社の側も、有効な免許を持っていることを把握しておく必要があるとされています。本人任せにして切れた場合、運転させた会社の責任が問われる形になります。
免許証のコピーを取っておけばよいですか。
コピーを取ること自体は有効ですが、それだけだと期限順に並べ替えられません。コピーは台帳に添え、期限は別の一覧に書き写す形にしておくと、抜けが見つけやすくなります。
更新の案内は何か月前に出せばよいですか。
決まりがあるわけではありません。実務では3か月前に一覧で拾い、1か月前に本人へ伝える形が多く取られています。違反があって講習の区分が変わっている場合に備えて、余裕を持たせておきます。
免許が停止になったことを会社はどうやって知るのですか。
本人が申し出なければ分かりません。そのため、一定の周期で免許証の現物を見る運用を入れている会社があります。点呼の場で年に1回見る、といった形です。
眼鏡等の条件が付いている運転者は、どう管理すればよいですか。
条件の欄を一覧に持たせておき、点呼のときに確かめる形が確実です。条件を外れた運転は条件違反になるため、見た目で分かるものは点呼で気づけるようにしておきます。
免許の期限一覧は、運転者台帳の代わりになりますか。
なりません。運転者台帳は備えることが定められている書類で、記載する事項も決まっています。期限の一覧は、その台帳を切らさないための道具として別に持つものです。両方あって役割が分かれます。
外国の免許で運転している人がいる場合はどうしますか。
有効な運転資格があるかどうかの確認が要ります。国際運転免許証や外国免許の扱いは種類と国によって変わるため、所轄の警察署や運転免許センターにご確認ください。期限の一覧には、確認した日と根拠を残しておきます。
免許証を紛失した運転者は運転できますか。
免許を受けている事実は残りますが、携帯していない状態での運転は免許証不携帯にあたります。再交付の手続きが終わるまでの扱いは、所轄の警察署にご確認ください。