運転者台帳の書き方|記載事項と退職後の扱い
目次
運転者台帳は、作ったあと何年も開かれないまま棚に置かれていることが多い書類です。ところが巡回指導では必ず見られ、しかも空欄が残っていることが多いため、指摘が付きやすいところでもあります。
この記事では、運転者台帳に何を書くこととされているのか、いつ更新するのか、そして運転者が辞めたあとの扱いを整理します。退職後の保存が3年と長いので、そこの管理の仕方まで書きます。
結論:運転者台帳は「この人を運転させてよい根拠」をまとめた1枚
運転者台帳とは、運転者ごとに、免許の状況、事故や違反の履歴、受けた教育や適性診断の記録などをまとめて、営業所に備えておく書類のことです。その人を運転者として使ってよい根拠が1枚にそろっている状態を作るのが目的になります。
ポイントはここです。運転者台帳は、作ったら終わりの書類ではありません。免許は更新され、教育は毎年行われ、事故があれば履歴が増えます。中身が動き続ける書類なので、更新の仕組みが無いと、数年で実態と合わなくなります。
一般には、貨物自動車運送事業輸送安全規則にもとづいて、運転者ごとに作成し、営業所に備えることとされています。運転者でなくなった場合は、その日から3年間保存することとされています。
運転者台帳の記載事項
書く内容は、一般に次のものとされています。数は多いのですが、性質で分けると覚えやすくなります。
変わらないものが、作成番号、作成年月日、氏名、生年月日、住所、雇い入れの年月日、運転者に選任された年月日です。ここは最初に埋めれば、あとは基本的に動きません。
変わるものが、免許の番号と種類、免許の取得年月日と有効期限、事故や違反の状況、指導や監督の実施状況、適性診断の受診状況、そして健康状態です。指摘が付くのは、ほぼこちら側です。
このほか、運転者の写真を貼ることとされています。写真が古いまま何年も貼られている台帳が多く、本人確認の役に立たなくなっていることがあります。
住所も動きます。引っ越しの届けは総務に出ていても、運転者台帳まで直っていないことがよくあります。人事の情報が変わったときに、運転者台帳も直す流れを作っておくと、この種のずれが起きません。
作成番号と作成年月日は何のためにあるか
最初の欄にある作成番号と作成年月日は、形式的なものに見えますが、意味があります。
作成番号は、台帳を通し番号で管理するためのものです。番号が飛んでいれば、抜けた台帳があることが分かります。通し番号を振らずに氏名だけで管理していると、1枚無くなっても気づけません。
作成年月日は、いつからこの台帳で管理しているかを示します。運転者に選任された年月日と混ざりやすいところですが、別のものです。選任された日は運転者として使い始めた日で、作成年月日は台帳を作った日になります。
雇い入れの年月日も別です。事務職として入社して、あとから運転者に回った場合、雇い入れの日と選任された日が何年もずれることがあります。3つの日付が全部同じとは限らないので、それぞれ確かめて埋めます。
更新される欄をどう回すか
運転者台帳がうまく回っていない営業所は、更新のきっかけが決まっていないことが原因であることがほとんどです。開く理由が無いので、開かれません。
更新のきっかけは、性質ごとに決まっています。免許は有効期限の前、事故や違反は起きたとき、指導と監督は実施したとき、適性診断は受診したとき、健康状態は健康診断の結果が出たとき。それぞれ、別の場面で発生します。
だから、年に1回まとめて見直す運用にすると、必ず抜けます。代わりに、それぞれの場面に「台帳を直す」を組み込みます。事故の報告書を作ったら台帳にも書く。適性診断の結果が届いたら台帳にも書く。健康診断の結果を受け取ったら台帳にも書く。
いちばん効くのが、免許の有効期限です。ここだけは先に分かるので、一覧にして期限順に並べておきます。期限が切れた免許で運転させてしまうのが、この分野でいちばん重い事故になります。台帳の中に埋めておくだけでなく、別に期限の一覧を作っておくと確実です。
指導と監督の記録をどう残すか
運転者台帳の中で、いちばん空欄が残りやすいのが指導と監督の欄です。
一般には、事業用自動車の運転者に対して、輸送の安全を確保するために必要な指導と監督を行うこととされており、その記録を残すことになっています。特定の運転者、つまり新しく雇い入れた運転者、高齢の運転者、事故を起こした運転者については、追加の指導が求められる形になっています。
台帳の欄には、いつ、どの内容の指導を行ったかを書きます。「実施済」だけでは、何をしたかが分かりません。指導の記録そのものは別の書類に残るので、台帳には日付と項目を書いて、詳細は別紙という形にしておくと管理しやすくなります。
初任の運転者に対する指導は、時間数まで決まっている部分があるとされています。ここは実施した時間を記録に残す必要があるので、台帳の欄に収まりきりません。別紙にして、台帳から参照する形が現実的です。
健康状態の欄をどう扱うか
運転者台帳には健康状態に関する欄がありますが、ここは扱いが難しい部分です。個人情報の中でも特に配慮が必要な情報にあたるからです。
書くのは、運転業務に関係する範囲にとどめます。健康診断を受けた日と、その結果として運転に制限が必要かどうか。病名そのものを書く必要は必ずしもありません。「要再検査・◯年◯月に再検査済」といった形で、対応が追える書き方にしておきます。
一方で、空欄のままにするのも問題があります。健康に起因する事故が起きたとき、会社が状態を把握していたかが問われます。把握していなかったことを示す記録は、会社を守りません。
台帳の置き場所も、この欄があるぶん配慮が要ります。誰でも見られる棚に置くのではなく、鍵のかかる場所に入れておきます。運転者台帳は個人情報の塊なので、保存期間だけでなく、保管の仕方も決めておきます。
運転者でなくなったときの扱い
ここが、ほかの書類と大きく違うところです。運転者台帳は、その人が運転者でなくなった日から3年間保存することとされています。
3年という年数も長いのですが、数え始めが「運転者でなくなった日」であることのほうが重要です。ほかの書類は記録した日や運行が終わった日から数えるので、同じ棚に入れておくと必ず混ざります。
やり方としては、退職や配置換えで運転者でなくなった時点で、台帳を在籍中のファイルから抜いて、退職者のファイルに移します。移すときに表紙へ2つ書きます。運転者でなくなった日と、外してよくなる年月です。
「2026年3月31日 運転者でなくなる・2029年4月以降処分可」と書いてあれば、3年後に誰が見ても判断できます。在籍中のファイルに残したままだと、1年で捨てる書類と一緒に外れてしまいます。
なお、運転者でなくなるのは退職だけではありません。同じ会社の中で事務職に移った場合や、別の営業所に異動した場合も含まれます。異動の場合は、移った先の営業所で新しく備えることになるので、元の営業所には3年の保存が残ります。
よくある指摘を先に潰す
巡回指導で運転者台帳について指摘を受けるとき、内容はだいたい決まっています。
いちばん多いのが、適性診断の受診状況の欄が空いているものです。診断そのものは受けているのに、台帳に転記されていない形です。結果が届いたときに書く流れにしておけば防げます。
次に多いのが、免許の有効期限が切れているのに更新されていないものです。実際には更新されているのに台帳が古いままという場合が多いのですが、台帳が古いことと、免許が切れていることは、外からは区別できません。
3つ目が、写真が無いか、著しく古いものです。4つ目が、退職者の台帳が在籍中のファイルに混ざっているものです。この4つを先に見ておけば、指摘の大半は消えます。
台帳を人事の情報とつなぐ
運転者台帳がうまく回らない原因の多くは、人事の情報と切れていることにあります。ここをつないでおくと、更新の手間がまとめて減ります。
つなぐ場面は3つです。1つ目が入社のときで、雇い入れの年月日、氏名、生年月日、住所が決まります。2つ目が異動や退職のときで、運転者でなくなった日が決まります。3つ目が住所変更のときです。
いずれも、人事や総務の側では手続きをしています。その手続きの中に「運転者台帳も直す」を1行足すだけで、台帳が実態と合ったまま保てます。運行管理者が気づいて直す形にしていると、必ず遅れます。
とくに退職は重要です。退職の手続きをした時点で、台帳を退職者のファイルへ移し、3年後の処分可の年月を書きます。退職から日が経つほど、この作業は忘れられます。手続きの当日にやってしまうのがいちばん確実です。
逆に、人事の側に伝えておくべきこともあります。運転者台帳は運転者でなくなってから3年持つ、という点です。これを知らないと、退職者の書類をまとめて処分するときに一緒に捨てられてしまいます。
適性診断と指導の記録をどう回すか
運転者台帳の更新で、いちばん抜けやすいのが適性診断と指導の欄でした。ここを回す形を具体的に書いておきます。
適性診断には、受ける人と時期が決まっているものがあります。新しく雇い入れた運転者が受ける初任のもの、事故を起こした運転者が受けるもの、一定の年齢以上の運転者が受けるものです。それぞれきっかけが違うので、年に1回まとめて管理することができません。
回す形は、きっかけの側に紐づけます。採用したら初任のものを手配する。事故の報告書を作ったら、あわせて手配する。誕生日の一覧を持っておき、対象の年齢に達する人を先に拾う。この3つを別々の場面で動かします。
指導と監督のほうも同じです。すべての運転者に対して定期的に行うものと、特定の運転者に対して行うものがあります。定期のほうは年間の予定を先に立てられますが、特定のほうは事故や採用がきっかけになります。
診断を受けたあと、結果をどう使うかも決めておきます。結果が届いただけで台帳に転記して終わりだと、受けた意味が薄れます。指導の場面で結果を使い、その指導も記録に残す。診断と指導が1本につながっていると、監査でも説明しやすくなります。
記録は、台帳には日付と項目だけを書き、中身は別紙に残します。台帳を分厚くすると、開かれなくなります。1枚で全体が見渡せて、詳しく見たいときに別紙へたどれる。この形が、続けやすくなります。
台帳をそろえる順番
台帳が何年も更新されていない状態から立て直す場合の順番です。全部を一度に直そうとすると終わらないので、効く順に手を付けます。
1つ目が、免許の有効期限です。ここだけは、間違っていると運行そのものが違法になります。全員ぶんの免許証を確認して、期限を台帳と別の一覧の両方に入れます。半日あれば終わります。
2つ目が、在籍していない人の台帳を抜くことです。退職者が在籍中のファイルに混ざっていると、人数も合わず、保存期間も管理できません。抜いて、運転者でなくなった日と処分可の年月を書きます。
3つ目が、適性診断と指導の欄です。過去の記録を探して埋めることになるので、いちばん時間がかかります。さかのぼれない部分は、無理に埋めずに空欄のままにします。記憶で埋めると、記録としての信頼が落ちます。
4つ目が、写真と住所です。急ぎませんが、新しく撮る機会を作っておきます。健康診断のときにまとめて撮る、という形にしている会社もあります。
立て直したあとは、同じ状態に戻らないようにします。戻る原因は、更新のきっかけが決まっていないことにあるので、人事の手続きの側に組み込みます。
1つ目と2つ目だけで、指摘の大半は消えます。3つ目以降は、今後の運用でそろえていく形にして構いません。
まとめ
運転者台帳は、その人を運転者として使ってよい根拠をまとめた書類です。変わらない欄と更新される欄があり、指摘が付くのはほぼ更新される側になります。運転者でなくなった日から3年間保存することとされており、ほかの書類と起算日が違います。
まず手を付けるなら、免許の有効期限を別に一覧にして期限順に並べるところからです。台帳の中に埋めたままだと気づけません。次に、退職者の台帳を在籍中のファイルから分けると、まとめて捨てる事故が防げます。
なお、ここに書いたのは一般的な形です。自社にどこまで求められるかは、事業の種類や運転者の状況によって変わります。最終的な判断は、所轄の運輸支局にご確認ください。
実際に使える様式が必要な方へ
運転者台帳や点呼記録簿のExcel様式は、商い屋の運送業向けのページにそろっています。更新しやすい形に作り直すときの下敷きにも使えます。
商い屋で様式をさがす運転者台帳は、監査のときにいちばん「作りっぱなし」が露見しやすい書類です。逆に言えば、ここが更新されている会社は、ほかの書類もそろっていることが多くなります。台帳の状態は、その営業所の管理の水準をそのまま映します。
更新のきっかけを人事の手続きに乗せる。免許の期限だけは別に一覧を持つ。退職者は当日にファイルを移す。この3つが回っていれば、台帳は自然にそろった状態を保ちます。
よくある質問
運転者台帳の保存期間は何年ですか。
在籍している間は営業所に備え置き、運転者でなくなった場合はその日から3年間保存することとされています。
台帳の様式は決まっていますか。
記載すべき事項は定められているとされていますが、様式そのものは各地のトラック協会や運輸支局が配っているものが広く使われています。自社で作る場合も、定められた事項がすべて入っていれば問題になりません。
アルバイトや短期の運転者にも必要ですか。
運転者として選任している以上は必要とされています。雇用の形ではなく、運転者かどうかで決まります。
免許証のコピーを貼っておけばよいですか。
コピーを添えること自体は有効ですが、台帳の欄そのものも埋めておきます。コピーだけだと、更新されたときに古いものが残り続けます。
写真は必ず必要ですか。
一般には貼ることとされています。本人確認の意味があるので、大きく変わったときは貼り替えておきます。
営業所を異動した運転者の台帳はどうなりますか。
移った先の営業所で新しく備えることになります。元の営業所では、運転者でなくなった日から3年間の保存が残ります。
エクセルで管理してもよいですか。
作成の方法について特定の形が定められているわけではないとされています。ただし、営業所に備えておくことが求められるので、求められたときにすぐ出せる状態にしておきます。写真の扱いも含めて、印刷して綴じている会社が多くあります。