休息期間とは?継続11時間と9時間下限の考え方
目次
休息期間は、拘束時間や連続運転に比べて後回しにされがちです。上限を超えないように見張る性質のものではなく、下限を確保する性質のものだからです。ところが、実際に運行が組めなくなるのはここからで、朝の出庫を早めようとして前夜の帰庫との間が足りない、という形でぶつかります。
この記事では、休息期間が何を指すのか、継続11時間と9時間という2つの数字がどういう関係なのか、そして運行を組むときにどう使うのかを整理します。数字の紹介ではなく、明日の配車に落とせるところまで書きます。
結論:休息期間とは「勤務と勤務の間の、完全に自由な時間」
休息期間とは、勤務が終わってから次の勤務が始まるまでの間の時間のことです。その間、運転者は会社から一切拘束されません。睡眠を取り、食事をし、家族と過ごす時間になります。
ポイントはここです。休憩とは別のものです。休憩は勤務の中にある小休止で、拘束時間に含まれます。休息期間は勤務と勤務の間にあり、拘束時間には含まれません。現場では「休み」と一括りにされがちですが、扱いがまったく違います。
一般には、改善基準告示にもとづいて下限が定められているとされています。2024年4月から適用されている内容では、トラック運転者について継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないこととされています。
11時間と9時間の関係
数字が2つあるので、ここが混乱のもとになります。どちらが本当の下限なのか、という話です。
整理すると、11時間が目指す形で、9時間が絶対に下回れない線です。「継続11時間以上与えるよう努める」ことが基本で、そのうえで「9時間を下回ってはならない」という二段の構えになっています。
だから、毎日9時間で組んでいる運行は、下限は満たしていても基本の形からは外れます。監督指導では、9時間ぎりぎりが常態になっていないかが見られる部分になります。「9時間あれば大丈夫」という読み方は、いちばん危ない読み方です。
もう1つ大事なのが「継続」という言葉です。11時間を細切れに足して11時間、では足りません。途切れずに続いている11時間が必要になります。途中で呼び出して1時間仕事をさせれば、そこで切れます。
途切れさせてしまう場面
「継続」が切れるのは、たいてい悪意なく起きます。よくある3つを挙げておきます。
1つ目が、帰宅後の連絡です。翌日の段取りを電話で伝える、書類の不備を聞く。数分でも、業務の指示を受けた時点で休息期間が切れる可能性があります。用件が本当に今夜でないといけないのかを、かける前に一度考えます。
2つ目が、車両の移動です。「明日の朝、車を別の車庫へ回しておいて」と頼むと、その移動は業務になります。夜に頼むと、そこで切れます。
3つ目が、呼び出しです。急な依頼が入って、帰宅した運転者に出てもらう。この場合は明確に切れるので、翌日の運行を組み直す必要があります。
3つとも、運行管理者に悪気はありません。だからこそ、気をつけるという対策では止まりません。
対策は、夜間に運転者へ連絡しない運用を決めてしまうことです。伝えることは翌朝の点呼でまとめる。緊急のときだけ例外とし、そのときは翌日の運行を見直す。この形にしておけば、意図せず切れることがなくなります。
9時間で足りるのかを、実際の生活で考える
数字だけ見ていると9時間は長く感じます。実際の運転者の1日に当てはめると、印象が変わります。
帰庫が21時だとします。そこから9時間なら、次の始業は翌朝6時です。この9時間の中に、帰宅の移動、入浴、食事、睡眠、翌朝の支度、出勤の移動が全部入ります。通勤に片道30分かかるなら、それだけで1時間が消えます。
残るのは8時間弱で、そこから食事と入浴を引くと、睡眠に使えるのは6時間前後になります。子どもがいる家庭なら、顔を合わせる時間はほぼ取れません。これが毎日続くと、疲労は確実に積み上がります。11時間が基本とされているのは、この計算があるからです。
この計算は、運転者本人がいちばんよく分かっています。9時間台が続けば、本人から「きつい」と言葉が出る前に、遅刻や小さなミスとして表に出てきます。
運行を組む側は、帰庫の時刻と翌日の出庫の時刻を並べて見る癖をつけます。9時間台が続いている運転者がいたら、その人の疲労は数字に出る前に体に出ています。点呼の場で顔色を見るのは、そのためでもあります。
配車を組むときの使い方
休息期間は、配車の段階で守るものです。運行が終わってから確かめても、もう間に合いません。
組み方の手順は単純です。前日の帰庫予定の時刻に11時間を足します。出てきた時刻が、翌日の始業の最も早い時刻になります。21時帰庫なら翌朝8時が目安です。ここより早い出庫を入れたいなら、前日の帰庫を早めるしかありません。
配車表に「前日帰庫」の列を1つ足しておくと、この計算が目で見えるようになります。翌日の出庫時刻と並べておけば、差が11時間を切っている行がすぐ分かります。
よくあるのが、帰りが遅れたときの処理です。予定では21時帰庫だったが、渋滞で23時になった。このとき、翌日の出庫を予定どおりにすると休息期間が足りません。遅れが出た時点で、翌日の運行を組み直す判断が要ります。ここを現場任せにすると、そのまま出てしまいます。
泊まりの運行での扱い
長距離で日をまたぐ運行では、休息期間の考え方が変わります。車中で休む形になるからです。
一般には、勤務の途中で休息期間を与える場合の扱いや、分割して与える場合の条件が定められているとされています。2人乗務の場合やフェリーに乗船する場合にも、それぞれ別の考え方が置かれています。
ここは条件が細かいので、自社の運行に当てはめるときは所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。「泊まりだから車で寝ればいい」という単純な形では認められにくい部分があります。詳しくは分割休息と2人乗務の特例にまとめました。
車中で休む運行が常態になっている会社では、寝台の状態も見ておきます。休息期間は自由に過ごせる時間なので、休める環境が整っていることが前提になります。
休日との関係
休息期間の話をしていると、休日はどうなるのかという疑問が出ます。別のものなので、線を引いておきます。
休息期間は、勤務と勤務の間の時間です。毎日発生します。休日は、勤務そのものが無い日のことです。一般には、休日は休息期間に24時間を加えた時間以上とされており、休みの日は「休息期間+24時間」という数え方になります。
つまり、休息期間が11時間なら休日は35時間以上になります。前日の終業が21時なら、翌々日の8時までは勤務が無い、という形です。「暦の1日を空ければ休日」ではありません。
あわせて、休日労働は2週間に1回を超えないこととされています。休日に出てもらった週は、拘束時間の累計も伸びます。休日を削ると、休息期間と拘束時間の両方に効いてくるので、安易に頼まないほうが結果的に回ります。
配車表では、休日の前後の勤務の時刻も見ておきます。休日の直前の帰庫が遅く、直後の出庫が早いと、名目は休日でも実際の休みが短くなります。
記録にどう残すか
休息期間は、それ自体を記録する欄があるわけではありません。前日の終業と当日の始業から計算する形になります。
だから、日報の始業と終業の時刻が正確であることが前提になります。ここが曖昧だと、休息期間も計算できません。拘束時間の管理と、元になる数字は同じなので、まとめて1つの表で見るのが効率的です。
同じ日報から2つの数字が出る、というのがこの表の要点です。始業と終業さえ正確なら、拘束時間も休息期間も自動で出ます。新しく測るものは何もありません。
表の作り方は、運転者ごと日付ごとに始業と終業を並べ、その隣に「前日終業からの間隔」の列を作ります。この列が11時間を切っていたら色を変える形にしておくと、月の確認が数分で終わります。
集計は月に1度でよいのですが、配車の段階で見るほうが本命です。あとから集計して足りなかったと分かっても、直せません。拘束時間の集計の作り方は拘束時間とはにまとめました。
足りない日が続いているときに打つ手
表を作ると、9時間台が続いている運転者が見つかることがあります。打てる手を効く順に並べます。
1つ目が、帰庫を早めることです。原因のほとんどは帰りが遅いことなので、そこを短くするのがいちばん直接的です。荷待ちが原因なら荷主と、走行距離が原因なら運行の割り方と、それぞれ別の話になります。
2つ目が、翌日の出庫を遅らせることです。荷主の受け入れ時刻が決まっていることが多いので、動かせないこともありますが、確かめる価値はあります。
2つ目については、荷主の受け入れが8時からなのに7時に着く運用になっていることがあります。早く着いても構内で待つだけなら、出庫を1時間遅らせても納品の時刻は変わりません。確かめずに前例のまま続いている便が、意外とあります。
3つ目が、その便の担当を交替させることです。連続で入れなければ、休息期間は自然に確保されます。同じ人に同じ便を固定していることが、そもそもの原因であることがよくあります。
短い休息が続くと何が起きるか
管理の話として扱うと、なぜ守るのかが現場に伝わりません。結果の側から見ておきます。
睡眠が6時間を下回る日が続くと、注意力が落ちることが知られています。運転の仕事では、それが直接事故につながります。居眠りだけでなく、判断が半拍遅れる形で出るため、本人も自覚しにくい部分があります。
もう1つが、健康への影響です。睡眠不足が続くと、血圧や血糖の値に出てきます。健康診断で引っかかる運転者が増えている会社では、運行の組み方を疑ってみる価値があります。診断の結果は、労務管理の結果でもあります。
3つ目が、人が辞めることです。帰りが遅く朝が早い生活が続けば、他社に移ります。募集をかけても集まらない会社は、賃金より先に勤務の時間帯を見られていることがあります。
休息期間を確保することは、事故を防ぎ、健康を守り、人を残すことにつながっています。11時間という数字は、そのための最低限の線として置かれているものです。運転者の健康の見方は運転者の健康管理にまとめました。
翌日の運行を組み直す手順を決めておく
帰りが遅れたときに現場で判断できる形にしておきます。決めておくのは3つです。
1つ目が、誰が判断するかです。運行管理者が判断するのか、配車の担当が判断するのか。夜間に帰庫する便が多い会社では、その時間帯にいる人が決められる形にしておかないと止まります。
2つ目が、判断の基準です。「翌日の出庫まで11時間を切ったら組み直す」と数字で決めておきます。感覚で判断させると、忙しい日ほど甘くなります。
3つ目が、組み直しの選択肢です。出庫を遅らせる、別の運転者に替える、便を外注に回す。先に候補を並べておくと、その場で選ぶだけになります。何も決めていないと、考える時間が無くてそのまま出します。
あわせて、組み直した記録を残しておきます。「◯月◯日、帰庫遅延により翌日の出庫を2時間繰り下げ」と1行あれば、守っていたことが示せます。守った記録が残っていないのは、守っていないのとほとんど同じ扱いになります。
この手順があると、現場が遅れを隠さなくなるという効果もあります。報告すると翌日が組み直されると分かっていれば、正直に連絡が来ます。
まとめ
休息期間は、勤務と勤務の間の完全に自由な時間です。継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らないこととされています。11時間が目指す形、9時間が絶対の下限という二段の構えになっています。
まず手を付けるなら、配車表に「前日帰庫」の列を足すところからです。翌日の出庫時刻と並べば、足りない行がその場で分かります。次に、帰りが遅れたときに翌日の運行を組み直す手順を決めておくと、現場任せにならなくなります。
なお、泊まりの運行や2人乗務での扱い、分割して与える場合の条件は制度で定められています。最終的な判断は、所轄の労働基準監督署にご確認ください。
休息期間は、上限を見張る他の数字と違って、下限を確保する数字です。足りているかは、配車を組んだ時点で決まっています。運行が終わってから集計しても、できることは記録に残すことだけになります。
休息期間を確保することは、結局のところ人を辞めさせないことに直結します。帰りが遅く朝が早い生活は、賃金では埋め合わせが利きません。
よくある質問
休息期間と休憩は何が違いますか。
休憩は勤務の中にある小休止で、拘束時間に含まれます。休息期間は勤務と勤務の間にあり、拘束時間には含まれません。休息期間は会社から一切拘束されない時間になります。
休息期間は9時間あればよいのですか。
9時間は下回ってはならない線で、基本は継続11時間以上とされています。毎日9時間台が常態になっている状態は、基本の形から外れます。
2人乗務のときの休息期間はどうなりますか。
車両に寝台が設けられているなど、条件を満たす場合の扱いが別に定められているとされています。条件が細かいため、自社の車両で認められるかは所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。
11時間を分けて与えてもよいですか。
「継続」が求められるため、細切れに足して11時間では足りません。分割して与える場合の条件は別に定められているので、所轄の労働基準監督署に確かめます。
帰りが遅れて休息期間が足りなくなりそうなときはどうしますか。
翌日の出庫を遅らせるか、その便の担当を交替させることになります。遅れが出た時点で判断する手順を決めておかないと、そのまま出てしまいます。
通勤の時間は休息期間に含まれますか。
勤務が終わってから次の勤務が始まるまでの時間なので、通勤の時間も休息期間の中に入ります。そのぶん実際に休める時間は短くなります。
休日は何時間あればよいのですか。
一般には、休息期間に24時間を加えた時間以上とされています。休息期間が11時間なら35時間以上になります。暦の1日を空ければ休日、という数え方ではありません。
休息期間はどこに記録するのですか。
専用の欄があるわけではなく、前日の終業と当日の始業から計算します。日報の始業と終業の時刻が正確であることが前提になります。