適性診断の受診管理|4種類と受ける時期を解説
目次
適性診断は、受けたこと自体は覚えていても、誰がいつ受けるものだったかを説明できる人が社内に少ない手続きです。種類が4つあり、それぞれ対象になる人と時期が違うので、まとめて管理しようとすると必ず混ざります。
この記事では、適性診断の種類と、誰がいつ受けることとされているのか、そして受診の状況をどう管理して記録に残すのかを整理します。切らさない仕組みの作り方まで書きます。
結論:適性診断は「人ごとにきっかけが違う」から抜ける
適性診断とは、運転者の運転の特性を測って、安全な運転に結びつけるための診断のことです。試験ではないので、合格や不合格はありません。結果を指導に使うところまでが1セットになっています。
ポイントはここです。適性診断が抜けるのは、忘れるからではなく、きっかけが人ごとにばらばらだからです。車検のように全車に同じ周期で来るものと違い、採用したとき、年齢が上がったとき、事故を起こしたときに、それぞれ別に発生します。
一般には、貨物自動車運送事業輸送安全規則にもとづいて、一定の運転者に受診させることとされています。年に1回まとめて見直す運用にすると、その間に発生した対象者が漏れます。
適性診断の4つの種類
種類を先に分けておきます。ここが混ざると、誰に何を受けさせるかが決まりません。
1つ目が初任診断です。新たに雇い入れた運転者が対象になります。2つ目が適齢診断で、一定の年齢に達した運転者が対象です。3つ目が特定診断I、4つ目が特定診断IIで、どちらも事故を起こした運転者が対象になります。
4つのうち、事前に分かるのは初任と適齢の2つだけです。特定診断のIとIIは事故が起きてから発生するので、予定に入れておくことができません。予定できるものと、できないものを分けて構えておくと、突然の発生にも慌てません。
特定診断のIとIIは、事故の内容によって分かれます。同じ「事故を起こした」でも、受けるものが違うので、事故のあとに確かめる必要があります。判断に迷う場合は、所轄の運輸支局か診断を実施する機関に確かめるのが確実です。
このほか、義務としてではなく任意で受ける一般診断があります。事故は起こしていないが運転に不安がある運転者に受けさせる、といった使い方です。義務のものと任意のものを同じ欄で管理すると、どれが必須か分からなくなるので、列を分けておきます。
いつ受けるのかを、きっかけ別に固定する
種類が分かったら、発生する場面に紐づけます。この形にしないと、担当者が変わったときに止まります。
初任診断は、採用の手続きの中に入れます。雇い入れの書類を作るタイミングで、診断の予約も取ります。入社してから運行に出るまでの間に受けてもらうのが基本の形になります。
適齢診断は、誕生日の一覧から拾います。年齢で決まるので、事前に分かる唯一の種類です。免許の期限一覧に生年月日の列があれば、そこから出せます。
特定診断は、事故の報告の中に入れます。事故報告書を作る手順の最後に「適性診断の要否を確かめる」という行を足しておきます。3つのきっかけのうち、いちばん取りこぼしやすいのが事故です。相手への対応、車両の修理、保険の手続きと続くので、診断の話まで頭が回りません。報告書の様式そのものに行を作っておくのが、いちばん確実な対策になります。
事故の直後は対応に追われるので、思い出す運用では必ず飛びます。
指導とセットで動く
適性診断とよく混ざるのが、特定運転者への指導です。対象になる人がほぼ同じなので、別の手続きだと気づかないまま片方だけやっていることがあります。
分けて言うと、適性診断は測るもの、指導は教えるものです。初任の運転者なら、初任診断を受けて、あわせて初任運転者への指導を行う。高齢の運転者なら、適齢診断を受けて、高齢運転者への指導を行う。事故を起こした運転者なら、特定診断を受けて、事故惹起運転者への指導を行う。
片方だけ記録が残っている状態が、いちばんよく見つかります。診断は受けさせたが指導の記録が無い、あるいはその逆です。監査ではどちらも見られるので、対で管理しておきます。
表の列も、診断の隣に指導の列を置いておくと、対になっていないことに気づけます。指導そのものの中身は特定運転者の指導記録簿にまとめました。
受診管理の表に入れる列
管理する表は、車の期限とは別に作ります。人に付くものだからです。
列は6つで足ります。氏名、生年月日、入社日、直近の受診日と種類、次回の予定、そして結果を指導に使ったかどうか。
受診日と結果を受け取った日を分けておくのも効きます。結果が出るまでに日数がかかることがあり、受けたのに結果が届いていない期間が生まれます。ここが1列だと、届いていないことに誰も気づきません。
6列目が抜けやすい部分です。適性診断は受けて終わりではなく、結果を本人に伝えて指導につなげるところまでが目的とされています。受診日だけ埋まっていて、その後に何をしたかが残っていないと、受けさせただけの記録になります。
生年月日の列は、適齢診断のために要ります。免許の期限の一覧と同じ表にしてしまう会社もあり、それでも構いません。人に付くものは1枚にまとめるという考え方で、免許・適性診断・指導を並べておくと、月初に開く表が1枚で済みます。
中途採用で経歴が続いている場合
実務でいちばん判断に迷うのが、中途採用の運転者です。前の会社で受けた診断があるとき、こちらでも受け直すのかという話になります。
考え方の起点は、その人が新たに雇い入れた運転者にあたるかどうかです。過去に一定の期間、運転者として選任されていた経歴がある場合の扱いは、期間や条件によって変わるとされています。ここは自己判断せず、所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。
確かめるときに要るのが、前職での受診の記録です。本人が持っていないことが多いので、採用の段階で「前職で受けた診断の記録があれば見せてください」と伝えておくと、後から探す手間が減ります。
記録があった場合も、そのまま台帳に写して終わりにしません。いつ、どの機関で、どの種類を受けたかまで見ます。種類が違えば、こちらで必要なものは受けていないことになります。
記録が手に入らない場合は、受け直すほうが安全側の判断になります。受けさせすぎて問題になることはありません。費用はかかりますが、受けていない状態で事故が起きたときの説明のしにくさと比べると、判断は難しくありません。
結果をどう使うか
受けさせただけで終わっている会社が多いのが、この手続きの実情です。結果を使うところまでやると、事故が減る方向に働きます。
診断の結果には、運転の傾向が出ます。判断が遅い、注意の配り方に偏りがある、といった形です。本人にとっては初めて言われることが多く、そこが使いどころになります。
結果を本人に返さないまま台帳に綴じてしまうと、受けた本人には何も残りません。測っただけで終わるという、いちばんもったいない形になります。
伝え方には気をつけます。結果を成績のように扱うと、身構えられて終わります。「ここが弱いから気をつけろ」ではなく、「この傾向なら、この場面で余裕を持たせる組み方にしよう」という形にすると、運行の組み方の話になります。
伝えた内容は記録に残します。運転者台帳の指導の欄に日付と項目を書き、詳しい中身は別紙にしておきます。適性診断と指導が1本につながっていると、監査でも説明が早く終わります。
実施する機関と、予約の取り方
適性診断は、どこでも受けられるわけではありません。国土交通大臣が認定した機関などで実施されるとされています。
地域によって実施する場所と回数が限られていることがあります。採用が決まってから探し始めると、初回の運行までに間に合わないことがあります。採用の予定が立った時点で、次にいつ受けられるかを調べておくと安全です。
受診には費用と時間がかかります。半日から1日を見ておくことになるので、その日は運行に入れられません。配車の予定にも影響するので、日程が決まったら配車の側にも伝えておきます。
結果が出るまでにも日数がかかることがあります。受けた日と結果を受け取った日が違うので、表の列も分けておくと状況が追えます。
表が回り始めてから見えること
受診の管理が回り始めると、副産物として見えてくるものがあります。
1つ目が、特定診断の発生の偏りです。事故を起こした運転者が対象なので、この行が増えている時期は事故が増えている時期でもあります。診断の表が、事故の傾向の表にもなっています。
2つ目が、適齢診断の増え方です。年齢で決まるので、数年先まで何人が対象になるかが計算できます。運転者の年齢構成がそのまま見えるので、採用の計画にもつながります。
3つ目が、初任診断の回数です。入れ替わりが多い営業所ほど増えます。受診の手配にかかる手間が読めるようになるので、忙しい時期の見通しが立ちます。
3つとも、事故が起きてから振り返るのでは遅い種類の情報です。表を眺めるのは年に1回で足りますが、眺める日を決めていないと1回もやりません。
どれも、表を別に作って集計する必要はありません。もともと管理のために作った表を、年に1回眺めるだけで見えます。見る日を決めておくと、気づくきっかけになります。
受診の手配を止めないための段取り
診断は外部の機関で受けるので、社内だけでは完結しません。止まる場所が決まっているので、先に潰しておきます。
止まる場所は3つです。1つ目が、次にいつ受けられるかを調べていないこと。地域によっては月に数回しか実施されません。2つ目が、運転者の日程を押さえていないこと。半日から1日抜けるので、配車と重なると動けません。3つ目が、費用の承認が要る会社で、その手続きを始めていないことです。
3つとも、慣れれば数分で済む確認です。止まるのは難しいからではなく、やる順番が決まっていないからです。
1つ目を先にやるのがこつです。実施の日程が分かってはじめて、運転者の予定も費用の話も動かせます。順番を逆にすると、承認は取れたのに枠が無い、ということが起きます。
採用が決まった時点、事故の報告書を作った時点で、まず実施機関の日程を見る。この1手を手順に入れておくだけで、手配が遅れる事故はほぼ無くなります。
費用と時間をどう見ておくか
金額そのものは種類と機関によって変わるので、ここでは何にどれだけかかるかの形だけ整理します。
かかるのは3つです。診断そのものの費用、運転者が抜ける半日から1日ぶんの人件費と運行の機会、そして手配にかかる事務の手間です。2つ目がいちばん大きいことが多く、見落とされがちです。
年間でどれだけ発生するかは、表から出せます。適齢診断は年齢で決まるので数年先まで読めますし、初任診断は採用の計画から出せます。読めない のは特定診断だけなので、そこだけ余裕を見ておきます。
予算を組むときに、この読める部分を先に入れておくと、承認で止まることが無くなります。事故が起きてから「この費用は聞いていない」となるのが、手配が遅れるいちばんの理由です。
受診の日は、運行の薄い日に当てます。表で月ごとの発生を見ておけば、配車の側と早めに相談できます。当日になって運転者を抜くのが、現場にとってはいちばん困る形になります。
まとめ
適性診断は、初任・適齢・特定I・特定IIの4種類があり、対象になる人ときっかけがそれぞれ違います。抜けるのは忘れるからではなく、きっかけが人ごとにばらばらだからです。
まず手を付けるなら、いまいる運転者の直近の受診日を1枚の表に集めるところからです。次に、採用・誕生日・事故という3つのきっかけに「診断の要否を確かめる」を組み込むと、発生した時点で気づけるようになります。
なお、どの診断を受けるか、いつまでに受けるかは、事故の内容や年齢によって変わります。最終的な判断は、所轄の運輸支局や診断を実施する機関にご確認ください。
適性診断は、費用も時間もかかるわりに、効果が見えにくい手続きです。だからこそ、結果を運行の組み方に使うところまでやって、はじめて元が取れます。受けさせて終わりにしないのが、この手続きの分かれ目になります。
種類を4つに分けて、きっかけを3つに紐づける。この2つを紙に書いて事務所に貼っておくだけでも、抜けはかなり減ります。
よくある質問
適性診断には合格や不合格がありますか。
試験ではないので、合否はありません。運転の特性を測って、その結果を指導に結びつけるためのものとされています。
初任診断はいつまでに受けるのですか。
新たに雇い入れた運転者が対象になります。時期の考え方は状況によって変わるため、所轄の運輸支局にご確認ください。実務では、運行に出る前に受けてもらう形が多く取られています。
適齢診断は何歳から受けるのですか。
一定の年齢に達した運転者が対象とされており、その後も定められた周期で受けることになります。年齢と周期は制度で定められているため、運輸支局や実施機関で確かめるのが確実です。
特定診断のIとIIはどう違うのですか。
どちらも事故を起こした運転者が対象ですが、事故の内容によって分かれます。事故のあとにどちらを受けるかを確かめる必要があります。
一般診断は受けさせたほうがよいですか。
義務として定められているものではありませんが、事故は起こしていないが運転に不安がある運転者に受けてもらう使い方があります。義務のものと同じ欄で管理すると必須のものが分からなくなるため、列を分けておきます。
適性診断を受けさせなかったらどうなりますか。
受診させることとされている運転者に受けさせていない状態は、指摘の対象になることがあります。あわせて、事故が起きたときに指導の記録が示せない状態になります。
診断はどこで受けられますか。
国土交通大臣が認定した機関などで実施されるとされています。地域によって実施の場所と回数が限られていることがあるため、早めに調べておくと手配が遅れません。
結果は運転者台帳に書くのですか。
受診状況の欄に日付と種類を書くのが一般的です。診断の結果そのものは別紙にして、台帳からたどれる形にしておくと、台帳が分厚くなりません。