運行の記録やり方2026.09.16 公開NP-03

荷待ち時間の記録|30分ルールと2時間の考え方

目次

荷待ち時間は、運送の現場でいちばん納得のいかない時間です。走ってもいないのに拘束され、そのぶん帰りが遅くなり、翌日の休息期間が削られる。運転者にとっては損しかないのに、長らく記録にも残っていませんでした。

近年、この荷待ち時間を記録することが求められる形になり、さらに時間そのものを短くすることが荷主の側にも求められる流れになっています。この記事では、何をどこまで記録することとされているのか、よく聞く30分と2時間という数字が何を指すのかを整理します。

荷待ちの時間は乗務記録に書き込みます。日報そのものの書き方から確かめたい方はこちらが早いです。→ 運転日報とは

結論:荷待ち時間とは「着いているのに、積み下ろしが始まらない時間」

荷待ち時間とは、運転者が荷物の積み込みや荷下ろしの場所に到着してから、実際に作業が始まるまでの待たされている時間のことです。走ってもいないし、作業もしていないのに、帰れない時間がこれにあたります。

ポイントはここです。荷待ち時間は運転者の労働時間に入ります。入るということは、拘束時間の上限に食い込み、連続運転の計算にも影響するということです。だから、この時間を把握していないと、改善基準告示の基準を守れているかどうかを会社として説明できなくなります。

一般には、一定の大きさ以上の車について、荷主の都合で待たされた時間を乗務記録に書くこととされています。ここでよく出てくるのが30分という数字です。

到着から出発までの内訳到着 〜 出発荷待ち荷役出発準備茶の帯が荷待ち。走ってもいないし、作業もしていない時間
到着から出発までの時間を、荷待ち・荷役・走行に分けた帯の図

荷待ち時間が問題になってきた背景には、労働時間の上限が厳しくなったことがあります。走っている時間が同じでも、待っている時間が長ければ、1日の拘束時間は上限に届きます。待機を減らさないと、運べる量そのものが減るという構造になったため、記録が制度として求められる形になりました。

30分という数字が指しているもの

30分は、記録する義務が発生する境目として出てくる数字です。

一般には、荷主の都合により30分以上待機した場合に、その待機の時間を乗務記録に記録することとされています。30分未満なら書かなくてよい、という意味であって、30分までなら待たせてよいという意味ではありません。ここが読み違えられやすいところです。

対象になる車の大きさも決まっています。一般には、車両総重量8トン以上、または最大積載量5トン以上の車とされています。運行記録計の対象が7トン以上・4トン以上だったのに対し、こちらは1トンずつ大きい数字になっています。似た数字が並ぶので、混ぜないように用紙の側に書いておくと間違えません。

似た数字を混ぜない記録の種類車両総重量最大積載量運行記録計7トン以上4トン以上荷待ちの記録8トン以上5トン以上
運行記録計と荷待ち記録で、対象になる車の大きさが違うことを並べた表

書く内容は、待機した場所、到着した日時、荷積みまたは荷下ろしを開始した日時、終了した日時、そして待機していた理由にあたる部分です。「待った」とだけ書いても、あとで短くするための材料になりません。どこで、どれだけ、なぜ待ったかがそろってはじめて、荷主と話ができます。

荷待ちと荷役はどう違うのか

記録の話をするときに、荷待ちと荷役が混ざると数字がぶれます。線を引いておきます。

荷待ち時間は、着いているのに作業が始まらない時間です。運転者は待っているだけで、手は動いていません。一方、荷役等時間は、実際に積み下ろしをしている時間です。運転者が手伝う場合、これも運転以外の拘束された時間になります。

荷待ちと荷役は分けて記録する荷待ち着いたのに始まらない手は動いていない到着時刻の調整が効く荷役等実際に積み下ろす運転者が手伝う分機材とパレット化が効く
到着から出発までを、荷待ち・荷役・待機の3つに分けた帯の図

分けて記録するのは、対策が違うからです。荷待ちが長いなら、荷主の受け入れ体制や到着時刻の調整が効きます。荷役が長いなら、機材やパレット化の話になります。1つにまとめて「2時間かかった」と記録しても、次に何をすればよいかが出てきません。

近年の制度の見直しでは、この2つを合わせた時間が対象として扱われる形になっています。だからこそ、合計だけでなく内訳を持っておくと、削れるほうから手を付けられます。

2時間という数字が指しているもの

もう1つよく聞くのが2時間です。こちらは記録の話ではなく、時間の長さそのものを抑えるための目安として出てきます。

物流の効率化に関する制度の見直しの中で、1回の運行あたりの荷待ちと荷役などの時間を、おおむね2時間以内に収めることが求められる形が整えられてきているとされています。すでに2時間以内に収まっている場合は、さらに1時間以内を目指すという考え方も示されています。

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実際に使える様式が必要な方へ

運転日報や荷待ちの記録に使えるExcel様式は、商い屋の運送業向けのページにそろっています。この記事は制度と運用の側です。

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ここは制度の移行が進んでいる部分で、適用の時期や対象が順次広がる形になっています。自社や取引先がいつから何を求められるのかは、所轄の運輸支局や国土交通省の案内で確かめるのが確実です。記事に書かれた施行日だけを見て判断すると、対象の範囲を読み違えることがあります。

大事なのは、この流れが運送事業者だけでなく荷主の側にも向いているという点です。これまで「待たされるのは仕方がない」とされてきた部分が、荷主にとっても改善すべき対象になりました。記録が残っていれば、その話を数字で持ち出せます。

記録が荷主との関係を悪くしないか

ここを心配して記録を始めない会社があります。実際に相談として多い懸念なので、触れておきます。

結論から言うと、記録そのものが関係を悪くすることはほとんどありません。悪くなるのは、記録を「告発の材料」として使ったときです。同じ数字でも、持って行き方で受け取られ方がまったく変わります。

避けたいのが、「御社のせいで毎回2時間待たされている」という出し方です。相手は身構えます。代わりに、「到着を1時間ずらすと待ちが30分減りそうなのですが、そちらの受け入れは何時からが動かしやすいですか」という形にすると、一緒に考える話になります。

近年は、荷待ちを短くすることが荷主の側にも求められる流れになっています。つまり、荷主にとっても改善したい課題になっているということです。数字を持っているのが運送側だけなら、その数字は相手にとっても役に立ちます。

それでも取引に影響するのが心配な場合は、まず社内で3か月ためてから考えても構いません。記録を取ることと、相手に見せることは別の判断です。

記録を取ったあと、何に使うのか

記録を取るだけでは、仕事が増えただけになります。使い道を先に決めておくと、現場も納得して書いてくれます。

1つ目が、荷主との交渉です。「いつも待たされる」では話が進みませんが、「◯◯倉庫で、過去3か月に到着から開始までが平均1時間20分、最長は2時間40分」なら、具体的な相談になります。待機料の話をする場合も、記録が無ければ根拠が示せません。

2つ目が、運行計画の組み直しです。特定の時間帯に着く便だけ待ち時間が長い、という形が見えることがあります。到着時刻を1時間ずらすだけで待ちが消えるなら、荷主と交渉するより早く解決します。

記録がつながる先荷主との交渉待機料の根拠運行計画の組み直し拘束時間の管理荷待ちの記録
荷待ちの記録から、荷主との交渉と運行計画の見直しへつながる流れの図

3つ目が、労働時間の管理です。荷待ちが長い便は、そのぶん拘束時間が延びます。月の拘束時間が基準に近づいている運転者がいるとき、原因が走行なのか待機なのかで、打つ手が変わります。走行が原因なら運行を減らすしかありませんが、待機が原因なら荷主と話す余地があります。

記録が取れているかを確かめる

記録を始めても、実際に書かれているかは別の話です。仕組みを入れたあと、1か月後に確かめることを決めておきます。

見るのは2つです。1つ目が、待機があったはずの便で欄が埋まっているかです。同じ路線で、ある運転者は待ちを書いていて、別の運転者は空欄が続いている。この差があるなら、書き方が伝わっていません。

2つ目が、時刻がきりのよい数字ばかりになっていないかです。到着が10時00分、開始が11時00分と並んでいるなら、あとから思い出して書いている可能性があります。実際の時刻は、10時07分や11時23分のような数字になるはずです。

もう1つ、書かれているのに集まってこない形もあります。日報は提出されているのに、待機の欄だけ別の紙になっていて回収されていない、といった状態です。集める経路が1本になっているかも、あわせて確かめます。

どちらの場合も、責める形で確かめないのがこつです。書きにくい理由があることが多く、欄の位置が悪い、ペンが車内に無い、といった単純な原因のこともあります。現場に聞いてから直します。

現場で記録を取るための工夫

記録が続かない理由は、たいてい書く場面が決まっていないことにあります。待っている間は手が空いているので、本来は書きやすいはずです。

書く場面を2つに固定します。1つ目が到着した瞬間で、着いた時刻をその場で書きます。2つ目が作業が始まった瞬間で、開始時刻を書きます。この2つだけ押さえれば、差が待ち時間になります。

書くのは2回だけ1着いたとき到着の時刻をその場で2始まったとき開始の時刻をその場で3差が待ち時間思い出して書くと丸まる
到着時と開始時の2回だけ書けば待ち時間が出ることを示したフロー

終わってから思い出して書く形にすると、必ず丸まります。30分待っても「特になし」になり、記録としては何も残りません。その場で時刻を書く形にするのが、いちばん効きます。

書く場所は、日報の中に欄を作っておくのが扱いやすくなります。別の用紙にすると、待機のあった日だけ用紙が増えるので、紛れます。待機が無かった日は空欄のままで構いません。

3か月ためてから最初に見ること

記録がたまったら、最初に見るのは平均ではありません。平均から見ると、手を打つ場所が見つかりにくくなります。

最初に見るのは、場所ごとの最長です。平均40分の場所より、平均20分でもときどき3時間になる場所のほうが、運行を壊します。ばらつきが大きい場所は、受け入れの体制に何か問題があることが多く、話をする価値があります。

次に見るのが、時間帯です。同じ場所でも、午前に着く便と午後に着く便で待ち時間が大きく違うことがあります。ここで差が出ているなら、荷主と交渉する前に自社の運行計画で解決できる可能性があります。

3つ目が、その待機がどの運転者の拘束時間を押しているかです。荷待ちが特定の路線に集中していると、その路線を担当する運転者だけ拘束時間が伸びます。人ごとの偏りは、記録を人で束ね直さないと見えません。

3か月ためたら、この順で見る場所ごとの最長時間帯ごとの差運転者ごとの偏社内で直せるものからたまった記録
場所・時間帯・運転者の3つの切り口で記録を見ることを示した関係の図

この3つを見たうえで、社内で直せるものと、荷主と話すものに分けます。社内で直せるほうが早く効くので、先に手を付けます。

荷待ちを減らした会社が何をしたか

最後に、実際に効いた打ち手の型を挙げておきます。特別なことはしていません。

1つ目が、到着時刻をずらすことです。荷主の受け入れが9時からなのに8時に着いていた、という形は珍しくありません。早く着けば早く積めると考えて出発を早めていた結果、待ち時間が増えていたわけです。記録を取ってはじめて、早く着くことに意味が無いと分かります。

2つ目が、順番を事前に決めることです。着いた順に受け入れる倉庫では、混む時間に入ると長く待ちます。時間帯ごとの予約に変えてもらえれば、待ちはほぼ消えます。これは荷主と話す必要がありますが、荷主の側も構内の混雑が減るので、断られにくい提案になります。

3つ目が、積み方を変えることです。荷物の順番が納品先の順と逆になっていると、降ろすのに時間がかかります。これは自社で直せる部分です。

4つ目として、荷主を変えるという選択もあります。何度話しても改善せず、待機料も払われない取引先が、運転者の拘束時間を押している。このとき、その荷物を運び続けることが会社にとって得かどうかは、計算できる話になります。記録があれば、その計算ができます。感覚で「あそこは待たされる」と言っている間は、判断できません。

3つのうち、自社だけで始められるのは1つ目と3つ目です。荷主と話す前に、この2つを試しておくと、交渉のときに「こちらもできることはやった」と言えます。相手の受け止め方が変わります。

運転者にどう説明するか

記録を増やすとき、いちばん抵抗が出るのは現場です。「仕事が増えるだけ」と受け取られると続きません。伝え方を決めておきます。

伝えるのは1つでいいです。この記録は、あなたの拘束時間を減らすために取るということです。待たされている時間が数字で残らなければ、会社は荷主と交渉できません。交渉できなければ、待ち時間は減りません。

逆に言ってはいけないのが、「法令で決まったから」です。間違いではありませんが、書く側にとっては理由になりません。義務だから書く、という説明は、忙しい日に真っ先に飛ばされます。

そのうえで、記録を取った結果を返します。「◯◯倉庫との話し合いで、来月から到着を10時に変える」「待機料の交渉が始まった」。自分の書いたものが何かを動かしたと分かれば、記録は続きます。

何も動かなかった月も、そのことを伝えます。「今月は数字を集めていて、来月に話をする」でも構いません。黙っているのがいちばん良くない形になります。

まとめ

荷待ち時間は、到着しているのに作業が始まらない待機の時間です。一定の大きさ以上の車について、荷主の都合で30分以上待機した場合に記録することとされており、あわせて時間そのものを短くする流れが制度として進んでいます。

まず手を付けるなら、日報に到着時刻と作業開始時刻の2つの欄を作るところからです。書くのは2回だけなので、現場の負担はほとんど増えません。次に、3か月ぶんたまったところで場所ごとに平均を出すと、どこと話すべきかが見えてきます。

なお、この分野は制度の移行が進んでいる部分です。自社と取引先に何がいつから求められるかは、所轄の運輸支局にご確認ください。

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実際に使える様式が必要な方へ

運転日報や荷待ちの記録に使えるExcel様式は、商い屋の運送業向けのページにそろっています。欄を足して自社の形にするときの下敷きにも使えます。

商い屋で様式をさがす

荷待ちの記録は、始めるまでが重いだけで、始まってしまえば負担の小さい記録です。書くのは1日に数回、時刻を2つだけ。それで拘束時間の内訳が分かるようになります。

よくある質問

荷待ち時間の記録は、すべての車で必要ですか。

一般には、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の車が対象とされています。それより小さい車については、この義務としての記録は求められないことになります。

30分未満なら記録しなくてよいのですか。

記録の義務としては、30分以上の待機が対象とされています。ただし、短い待機が毎回積み重なっている場合は、実態を知るために記録しておく価値があります。

荷待ち時間は労働時間に入りますか。

待機している間も拘束されている状態なので、拘束時間に含まれる扱いになります。改善基準告示の上限を計算するときにも入ってきます。

待機料は必ずもらえるのですか。

自動的に発生するものではなく、荷主との契約によります。ただし、標準的な運賃の考え方の中で待機に対する料金が示されており、交渉の材料にはなります。記録が無いと、その話を始められません。

荷主の都合かどうかは、誰が判断するのですか。

到着が遅れたなど運送側に原因がある場合は、荷主都合とは扱いにくくなります。到着時刻を記録しておくと、この判断の材料になります。

記録は誰が書くのですか。

運転者が書く形が一般的です。ただし、車載の機器で到着と出発の時刻が自動で残る場合は、その記録を使う形も行われています。