運行記録計とは?義務がかかる車と記録の残し方
目次
運行記録計は、現場ではタコグラフ、あるいはタコと呼ばれています。円いチャート紙を入れる機械を思い浮かべる人もいれば、デジタルの機器を思い浮かべる人もいて、同じ言葉で別のものを話していることがよくあります。
この記事では、運行記録計が何を指すのか、どの車に付けることとされているのか、記録をどう残して何に使うのかを整理します。機器の選び方の前に、制度として何が求められているのかを押さえます。
結論:運行記録計とは「走った時間と速度と距離を、機械が自動で残す装置」
運行記録計とは、自動車の瞬間の速度、走った時間、走った距離を、連続して自動的に記録する装置のことです。人が書くのではなく機械が残すところが、日報との決定的な違いになります。
ポイントはここです。日報は人が書くので、記憶や都合が入ります。運行記録計はそれが入りません。だから、労働時間の確認や事故の調査では、日報より運行記録計の記録のほうが重く見られます。
一般には、一定の大きさ以上の事業用自動車について、運行記録計による記録を行い、その記録を1年間保存することとされています。対象になるかどうかは車の大きさで決まるので、同じ会社の中でも、付ける車と付けない車が分かれます。
日報との関係でいうと、運行記録計は「裏付け」の役割になります。日報は運転者が何をしたかを書くもので、運行記録計は車が何をしたかを残すもの。人の記録と機械の記録がそろってはじめて、運行の実態を示せます。どちらか一方だけだと、聞かれたときに説明しきれない場面が出てきます。
義務がかかる車の範囲
運行記録計の話でいちばん最初に確かめるのが、自社のどの車が対象かという点です。
一般には、車両総重量が7トン以上、または最大積載量が4トン以上の事業用自動車が対象とされています。これに加えて、これらの車をけん引するトラクタなども対象に含まれるとされています。
車検証を見て判断するのが確実です。車両総重量と最大積載量はどちらも車検証に書いてあります。「うちは4トン車だから」という呼び方で判断すると外れることがあります。4トン車と呼ばれている車でも、車検証上の最大積載量が4トンに届いていないことがあるからです。
対象外の車に付けてはいけない、という話ではありません。義務がかからない車でも、労務の管理や事故のときの証明のために付けている会社は多くあります。義務の有無と、付ける価値があるかどうかは別の話として考えるのが実務的です。
日報と運行記録計が食い違ったとき
同じ運行について、日報と運行記録計の両方に記録が残ります。ここが食い違ったとき、どちらが事実として扱われるかは押さえておく必要があります。
一般には、機械が自動で残した記録のほうが重く見られます。人が書いた日報は、記憶違いや書き間違いが入りうるからです。日報の側を機械に合わせて直すのが筋であって、逆をやると記録の改ざんに近い扱いになりかねません。
食い違いが毎月出るなら、原因は書く場面にあります。帰ってきてから思い出して書く形だと、30分単位で丸まります。距離計と時計を見てその場で書く形にすると、ずれはほとんど無くなります。
アナログとデジタルの違い
運行記録計には、大きく2つの形があります。どちらでも記録の義務は満たせるとされていますが、使える場面が違います。
1つ目が、円いチャート紙に針で書き込む形です。アナログ式やチャート式と呼ばれます。機器が単純で壊れにくく、1枚を見れば1日の動きが分かるという良さがあります。一方で、紙を毎日入れ替える必要があり、集計は人が読み取ることになります。
2つ目が、データとして記録する形です。デジタコと呼ばれているのがこちらで、記録をパソコンに取り込んで集計できます。速度超過や急な操作の回数を自動で出せるものもあり、指導に使いやすくなります。
判断の目安としては、車両が10台を超えて、拘束時間を毎月集計しているならデジタル式が扱いやすくなります。台数が少なく、チャート紙を読むのに困っていないなら、急いで替える理由はありません。紙を読める人が社内にいなくなったときが、替えどきになります。
デジタル式で見落とされること
デジタル式に替えた会社でよく起きるのが、「機器が記録しているから大丈夫」と思い込んでしまう形です。ここに3つの落とし穴があります。
1つ目が、車載機の記憶が上書きされることです。機器によっては、一定期間が過ぎると古い記録から消えていきます。取り込む作業をしていなければ、1年ぶんは残りません。取り込みが誰の仕事なのかを決めていないのが、いちばん多い原因です。
2つ目が、カードやメモリの紛失です。記録媒体を運転者が持ち歩く形の機器では、なくなれば記録も消えます。予備をどう用意するか、なくしたときにどうするかを決めておきます。
3つ目が、契約が終わったあとです。クラウドに保存する仕組みを使っている場合、契約を解約すると過去のデータを取り出せなくなることがあります。解約したあとにどうやって出すのかを、契約する前に確かめておくのが安全です。保存期間の途中で乗り換えると、ここで詰まります。乗り換える前に、過去のデータを取り出して手元に置いておくところまでを段取りに入れておきます。
記録の保存期間と保存の形
運行記録計の記録は、一般に1年間保存することとされています。日報や点呼記録簿と同じ年数なので、まとめて管理できます。
数え始めるのは記録した日からです。チャート紙の場合は、1日1枚が基本になるので、月ごとに封筒や袋に入れて月名を書いておくと扱いやすくなります。チャート紙は重ねると何が何だか分からなくなるので、日付と車両番号をその日のうちに書き込む運用にしておきます。
データの場合は、どこに保存されているかを確かめておきます。車載機の中だけに残っていて、上書きされていく形になっている機器があります。取り込む作業をしていなければ、1年ぶんが残りません。「機器が記録している」ことと「1年ぶんが手元にある」ことは別です。
記録を何に使うのか
保存しているだけでは、手間だけが残ります。実際に使われる場面は3つあります。
1つ目が、労働時間の確認です。改善基準告示では拘束時間や連続運転の時間に決まりがあるとされており、その確認に使われます。日報の申告と記録が合っているかを月に1度見る運用にしておくと、基準を超える前に気づけます。
2つ目が、運転者への指導です。速度の出しすぎ、急な加速や減速、長い連続運転。数字で示せると、指導が感情の話になりません。「危ない運転をしている」ではなく「この区間で連続4時間を超えた回数が月に3回」と言えるかどうかで、伝わり方が変わります。
3つ目が、事故があったときの説明です。事故の直前に何キロで走っていたか、直近で休憩を取ったのはいつか。これは記憶では示せません。
チャート紙の読み方の基本
アナログ式を使っている会社では、チャート紙を読める人が社内にいるかどうかが分かれ目になります。読めないまま保存だけしている状態は、記録を活かせていません。
チャート紙は円い形をしていて、外側から内側に向かって速度の線が描かれます。中心に近いほど速度が遅く、外側にいくほど速いという読み方です。線が中心に張り付いている時間帯は、止まっている時間になります。
見るところは3つです。1つ目が、止まっている帯の長さです。ここが休憩や荷待ちの時間にあたります。2つ目が、連続して走っている時間の長さで、4時間を超える帯が無いかを見ます。3つ目が、速度の線がどこまで外側に出ているかです。
慣れれば1枚あたり30秒で見られます。毎日全部を読む必要はなく、月に1度、運転者ごとに数枚を抜いて見るだけでも、運行の実態はつかめます。読む人がいなくなったときが、デジタル式に替えるタイミングになります。
よくある指摘と、その原因
巡回指導で運行記録計について指摘を受けるとき、内容はだいたい決まっています。
いちばん多いのが、チャート紙が保存されていないものです。付けてはいるが、外したあと捨てている、あるいはどこにあるか分からない状態です。付けることと残すことは別の手順なので、外した紙をどこに入れるかを決めていないと、必ず失われます。
次に多いのが、記録と日報が食い違っているものです。日報では18時に帰着となっているのに、記録では20時まで走っている。この食い違いは、どちらかが事実でないことを示すので、指摘としては重くなります。
3つ目が、記録が読み取れない状態のものです。チャート紙が折れている、インクが薄い、針がずれている。機器そのものの点検をしていないと、記録はあるのに使えない状態になります。運行記録計そのものが正しく動いているかを、定期的に確かめておく必要があります。
機器を選ぶ前に決めること
替えるかどうかを迷っている場合、機器の性能を比べる前に決めておくことが3つあります。
1つ目が、何のために使うのかです。義務を満たすだけでよいのか、拘束時間の集計まで自動にしたいのか、運転の指導に使いたいのか。目的が違えば必要な機能が変わります。「多機能だから」で選ぶと、使わない機能の費用を払い続けることになります。
2つ目が、誰がデータを見るのかです。集計の画面を開く人が社内にいなければ、どれだけ良いデータが出ても活きません。運行管理者が見るのか、事務が見るのかを決めておきます。
3つ目が、既にある書類とどうつなぐかです。日報を手書きで続けるなら、機器のデータと突き合わせる作業が残ります。日報も機器から出す形にできるなら、手間はまとめて減ります。
判断の目安としては、拘束時間の集計に毎月半日以上かかっているなら、替える価値があります。そこまでかかっていないなら、チャート紙のままで困りません。台数が少ない会社が急いで替える理由は、あまりありません。
記録から運転者に返すこと
運行記録計の記録は、運転者にとっては「監視されている」と感じられやすいものです。ここの伝え方を間違えると、機器を壊されたり、電源を抜かれたりすることさえあります。
伝え方のこつは、記録を評価ではなく保護のためのものとして位置づけることです。事故があったときに、こちらに非が無いことを示せるのは記録だけです。相手の車が飛び出してきたことを、記憶では証明できません。
そのうえで、指導に使うときは個人を責める形にしません。「あなたの運転が危ない」ではなく、「この区間で連続運転が4時間を超えている便が月に3回ある。運行の組み方を変えたい」という形にします。原因を運行計画の側に置くと、運転者は協力してくれます。
実際、連続運転が長くなっているのは運転者の意思ではなく、運行の組み方が原因であることがほとんどです。記録を見て運行を直すのが本筋で、運転者の運転を直すのはその後になります。
記録計と労働時間の関係
運行記録計の記録がいちばん強く効くのが、労働時間の場面です。ここを理解しておくと、保存する意味が現場にも伝わります。
改善基準告示では、拘束時間、休息期間、連続運転の時間に決まりがあるとされています。これを守っているかどうかは、申告ではなく記録で示すことになります。日報の申告だけでは、守っていることの証明になりません。
具体的には、1日の拘束時間が原則13時間以内とされている部分、連続運転が4時間以内とされている部分が、記録計から直接読めます。連続運転については、途中で30分以上の休憩を取っているかまで見られます。
ここを会社として把握していないと、労働基準監督署の調査が入ったときに答えられません。記録はあるのに見ていない、という状態は、無いのと同じ扱いにはなりませんが、管理していないことの裏付けにはなってしまいます。
だから、記録計の記録を月に1度は見ておく価値があります。基準を超えている便が見つかったら、その運行の組み方を直します。超えてから直すのではなく、超えそうな傾向のうちに直すのが、この記録の使い方になります。
見るのは全部でなくて構いません。長距離の便、夜間の便、荷待ちの多い路線。ここに絞って見れば、問題のある運行はだいたい見つかります。
まとめ
運行記録計は、走った時間と速度と距離を機械が自動で残す装置です。車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用自動車が対象とされており、記録は1年間保存することとされています。
まず手を付けるなら、車検証を見て自社のどの車が対象かを一覧にするところからです。呼び名で判断すると外れます。次に、チャート紙を外したあとどこに入れるか、データをいつ取り込むかを決めておくと、記録が失われる事故が防げます。
なお、ここに書いたのは一般的な形です。自社の車に何が求められるかは、車両の大きさや事業の種類によって変わります。最終的な判断は、所轄の運輸支局にご確認ください。
記録を見る担当を決めておくと、この作業は続きます。決めないままだと、誰もが「誰かが見ているだろう」と思ったまま1年が過ぎます。
よくある質問
運行記録計とデジタコは同じものですか。
デジタコは、運行記録計のうちデータで記録する形のものを指す呼び方です。運行記録計という言葉のほうが広く、円いチャート紙に書き込むアナログ式も含みます。
運行記録計の記録の保存期間は何年ですか。
一般には1年間とされています。記録した日から数えます。
4トン車には必ず必要ですか。
車検証上の車両総重量が7トン以上、または最大積載量が4トン以上であれば対象とされています。呼び名ではなく車検証の数字で判断します。
白ナンバーの車にも必要ですか。
運行記録計による記録は、事業用自動車についての決まりとされています。白ナンバーの自家用車には、この義務としてはかかりません。ただし、労務管理のために任意で付けている会社はあります。
チャート紙をスキャンしてデータで保存してもよいですか。
保存の方法について特定の形が定められているわけではないとされています。ただし、読み取れる状態であることが前提になるので、スキャンの画質が低くて針の線が判別できない形は避けます。
機器が故障して記録が取れなかった日は、どうすればよいですか。
その日に故障していたことと、修理した日を記録に残しておきます。あわせて、日報などの別の記録で運行の状況が分かる形にしておくと、説明ができます。故障したまま長く走らせている状態が、いちばん説明が難しくなります。