運送約款とは?標準約款を使う場合の掲示の義務
目次
運送約款は、荷主との取引の条件を定めたものです。多くの事業者は国が定めた標準約款をそのまま使っていますが、事業所に掲示することが求められていることを知らないまま、巡回指導で指摘される形が起きます。
この記事では、運送約款を、何を定めるものか、標準約款を使う場合、掲示の義務、自社で作る場合、実務での使いどころの順に整理します。約款の扱いと手続きは事業の種類で変わります。自分の事業に何が適用されるかは、所轄の運輸支局に確認してください。
結論:取引の条件を定めたもので、掲示が求められる
運送約款は、荷主と運送事業者のあいだの取引の条件をあらかじめ定めた文書です。
押さえるのは3つです。
1つ目は、定めることが求められていることです。運賃や料金、責任の範囲などの条件。
2つ目は、標準約款を使う道があることです。国が定めた標準の約款を使う場合、認可を受けたものとみなされる扱いがあります。
3つ目は、掲示が求められることです。事業所の見やすいところに掲示します。
3つ目が巡回指導で見られます。「約款はどこにありますか」と聞かれて、ファイルの中から出してくる形だと指摘されます。掲示されていることが求められています。
標準約款を使う場合
多くの事業者は、標準貨物自動車運送約款をそのまま使っています。
押さえるのは4つです。
1つ目は、内容を変えないことです。変えると、標準約款を使っていることになりません。
2つ目は、最新の版を使うことです。標準約款は改正されることがあります。古い版のままになっていないかを確かめてください。
3つ目は、掲示することです。
4つ目は、荷主に示せるようにすることです。求められたときに渡せる形。
2つ目が抜けやすい部分です。何年も前に印刷して貼ったまま、改正に気づいていないことがあります。年に1回は、最新の版かどうかを確かめてください。国土交通省や運輸支局のホームページで公表されています。
掲示の仕方
掲示は、見やすいところに行います。
決めるのは4つです。
1つ目は、場所です。営業所の事務所。来客が見られる場所が基本です。
2つ目は、大きさです。読める大きさで印刷します。
3つ目は、営業所ごとに行うことです。複数の営業所がある場合、それぞれに掲示します。
4つ目は、一緒に掲示するものです。運賃料金表など、掲示が求められるものをまとめます。
3つ目が抜けます。本社には貼ってあるが、支店や営業所に無いという形です。営業所を増やしたときの手順に、掲示を入れておいてください。
何が定められているか
標準約款には、取引で問題になる場面の扱いが書かれています。
主なものは4つです。
1つ目は、運送の引受けと拒絶です。どういう場合に断れるか。
2つ目は、運賃と料金です。どのように収受するか。
3つ目は、責任の範囲です。荷物が損傷した場合、遅延した場合の扱い。
4つ目は、引渡しと保管です。受取人がいない場合の扱いなど。
3つ目は実務でいちばん使います。荷物が傷んだときに、どこまで責任を負うのかが書かれています。読んでいないと、その場の話し合いで決めることになります。
自社で作る場合
標準約款ではなく、自社の約款を使うこともできます。ただし手続きが要ります。
押さえるのは4つです。
1つ目は、認可が要ることです。内容について認可を受けます。
2つ目は、時間がかかることです。審査があります。
3つ目は、変更のたびに手続きが要ることです。
4つ目は、標準約款との違いを説明できることです。なぜ変える必要があるのか。
多くの事業者は標準約款で足ります。特別な運送の形を扱う場合や、標準約款では収まらない条件がある場合に検討します。手続きは所轄の運輸支局に確かめてください。
実務での使いどころ
約款は、貼っておくだけの紙になりがちです。使う場面があります。
使うのは4つです。
1つ目は、荷物の損傷が起きたときです。責任の範囲を確かめます。
2つ目は、断りたい依頼が来たときです。引受けを拒絶できる場合の定めを見ます。
3つ目は、運賃の話をするときです。待機や附帯の作業の扱い。
4つ目は、契約書を作るときです。約款と矛盾しない形にします。
2つ目を知っておくと、断る根拠になります。「うちの方針で断ります」ではなく、約款に定めがあることとして伝えられます。読んだことが無い事業者は、一度目を通しておいてください。
運賃料金表との関係
掲示が求められるのは、約款だけではありません。運賃と料金についても掲示が求められます。
押さえるのは4つです。
1つ目は、届け出た運賃料金表を掲示することです。
2つ目は、内容が実態と合っていることです。届け出たものと違う運賃を収受していないか。
3つ目は、変えたときの手続きです。届出が要ります。
4つ目は、営業所ごとに掲示することです。
2つ目がずれている事業者があります。何年も前に届け出たまま、実際の運賃は変わっているという形です。届出の内容を確かめて、必要なら手続きしてください。
荷主との契約書と約款
荷主と個別の契約書を交わす場合、約款との関係を整理しておきます。
見るのは4つです。
1つ目は、矛盾していないかです。契約書と約款で、責任の範囲が違っていないか。
2つ目は、どちらが優先するかです。契約書に書かれていることがあります。
3つ目は、不利な条件になっていないかです。約款より重い責任を負う形になっていないか。
4つ目は、社内で誰が確かめるかです。
3つ目を確かめる人を決めておいてください。営業が持ってきた契約書を、そのまま押印している事業者があります。約款の責任の範囲を超える条件が入っていないか、締結の前に見てください。
掲示するものをまとめて確かめる
運送事業では、約款のほかにも掲示が求められるものがあります。まとめて確かめます。
並べるのは4つです。
1つ目は、運送約款です。
2つ目は、運賃料金表です。届け出たもの。
3つ目は、運行管理者と整備管理者の氏名です。掲示している事業所があります。
4つ目は、苦情の受付の窓口です。
掲示板を1つ決めて、そこにまとめてください。あちこちに貼られていると、古いものが残ったままになります。年に1回、掲示板の中身を全部見直す日を決めると、最新の状態を保てます。
新しい取引を始めるときに渡すもの
荷主との取引を始めるとき、先に渡しておくと後が楽になるものがあります。
渡すのは4つです。
1つ目は、約款の写しか、掲示している旨の案内です。
2つ目は、運賃と料金の考え方です。待機や附帯の作業の扱いを含めて。
3つ目は、積める量の目安です。車両ごとの最大積載量。
4つ目は、連絡先です。運行の担当と、緊急時の連絡先。
2つ目と3つ目を先に渡しておくと、揉めごとが減ります。待機の料金や積載の制限は、当日に話すといちばん揉める内容です。取引を始める時点で紙にして渡しておけば、あとから確かめられます。
約款を読む機会を作る
約款は、貼ってあるだけで誰も読まない書類になりがちです。読む機会を作ります。
作り方は4つです。
1つ目は、新しく入った事務の担当に読んでもらうことです。運賃と責任の範囲の条項だけで足ります。
2つ目は、事故や損傷が起きたときに開くことです。その場で約款を見る習慣にします。
3つ目は、教育の場で扱うことです。指導と監督の記録に残る形で。
4つ目は、契約書を作るときに見ることです。
2つ目が実務でいちばん効きます。荷物が傷んだときに、約款の責任の条項を見てから話をするのと、見ずに話をするのとでは、結論が変わります。事務所の掲示のそばに、要点をまとめた1枚を置いておくと開きやすくなります。
改正に気づく仕組み
標準約款は改正されることがあります。気づく仕組みが無いと、古いまま貼り続けます。
作るのは4つです。
1つ目は、確かめる時期を決めることです。年に1回。事業報告書を出す時期に合わせると忘れません。
2つ目は、見る場所です。国土交通省や運輸支局のホームページ。
3つ目は、貼り替えの担当です。
4つ目は、営業所への展開です。複数ある場合、全部の掲示を替えます。
1つ目を他の年次の作業とセットにしてください。約款だけのために年に1回思い出すのは難しく、事業報告書や実績報告書を出す時期に一緒に確かめる形にすると続きます。
まとめ
運送約款は、荷主との取引の条件を定めたもので、事業所に掲示することが求められます。
- 多くの事業者は標準貨物自動車運送約款をそのまま使う
- 内容を変えず、最新の版を使い、営業所ごとに掲示する
- 巡回指導では「掲示されているか」を見られる。ファイルから出す形では足りない
- 定められているのは、引受けと拒絶、運賃と料金、責任の範囲、引渡しなど
- 運賃料金表も掲示が求められる。届け出た内容と実態が合っているかを確かめる
約款の扱いと手続きは事業の種類で変わります。自分の事業に何が適用されるかは、所轄の運輸支局に確認してください。
よくある質問
Q. 標準約款をそのまま使えますか。 A. 使えます。国が定めた標準約款を使う場合、認可を受けたものとみなされる扱いがあります。ただし内容を変えると、標準約款を使っていることになりません。
Q. どこに掲示しますか。 A. 営業所の見やすいところです。来客が見られる場所が基本になります。複数の営業所がある場合は、それぞれに掲示してください。
Q. ファイルに綴じてあれば足りますか。 A. 足りません。掲示が求められています。巡回指導で「約款はどこにありますか」と聞かれて、ファイルから出す形だと指摘されます。
Q. 標準約款は変わることがありますか。 A. あります。古い版のまま貼っている事業者があります。年に1回は最新の版かどうかを確かめてください。国土交通省や運輸支局のホームページで公表されています。
Q. 自社の約款を作れますか。 A. 作れますが、認可が要ります。審査があるので時間がかかります。多くの事業者は標準約款で足ります。特別な運送の形を扱う場合に検討してください。
Q. 運賃料金表も掲示しますか。 A. 掲示が求められます。届け出た内容と、実際に収受している運賃が合っているかも確かめてください。何年も前に届け出たまま、実態が変わっていることがあります。
Q. 荷物が傷んだとき、どこまで責任を負いますか。 A. 約款に定めがあります。読んでいないと、その場の話し合いで決めることになります。責任の範囲の条項に一度目を通しておいてください。
Q. 断りたい依頼が来ました。 A. 約款に、引受けを拒絶できる場合の定めがあります。「うちの方針で断ります」ではなく、約款に定めがあることとして伝えられます。根拠を持って断れます。
Q. 荷主の契約書に押印を求められました。 A. 約款と矛盾していないか、約款より重い責任を負う形になっていないかを確かめてください。社内で誰が確かめるかを決めておくと、そのまま押印する形を防げます。
Q. 営業所を新しく作りました。 A. 掲示も必要です。営業所を増やしたときの手順に、掲示を入れておいてください。本社には貼ってあるが支店に無い、という形がよく起きます。
Q. 掲示は印刷したもので構いませんか。 A. 読める大きさで印刷したもので構いません。文字が小さすぎて読めないと、掲示の意味がありません。来客が立って読める大きさにしてください。
Q. 約款の内容を荷主に説明する必要がありますか。 A. 求められたときに示せる形にしておいてください。契約のときに一部を渡している事業者もあります。責任の範囲については、先に伝えておくと後の話が早く済みます。
Q. 掲示物が増えて、どれが最新か分かりません。 A. 掲示板を1つ決めて、そこにまとめてください。年に1回、中身を全部見直す日を決めると、古いものが残りません。約款、運賃料金表、管理者の氏名、苦情の窓口が基本です。
Q. 新しい荷主に何を渡しますか。 A. 約款の案内、運賃と料金の考え方、積める量の目安、連絡先の4つです。待機の料金と積載の制限は、当日に話すといちばん揉めます。先に紙で渡しておいてください。
Q. 約款を読む機会をどう作りますか。 A. 新任の事務担当への説明、事故や損傷が起きたとき、教育の場、契約書を作るとき。荷物が傷んだときに約款を見てから話をする習慣が、いちばん効きます。
Q. 改正に気づく仕組みはどう作りますか。 A. 確かめる時期を年に1回決めてください。事業報告書を出す時期に合わせると忘れません。国土交通省や運輸支局のホームページで公表されています。
Q. 契約書と約款で責任の範囲が違います。 A. どちらが優先するかは契約書の定めによります。約款より重い責任を負う形になっていないかを、締結の前に確かめてください。社内で誰が見るかを決めておくと防げます。
Q. 掲示を写真で撮って残す意味はありますか。 A. あります。いつからその内容を掲示していたかの記録になります。貼り替えたときに撮っておくだけで足ります。巡回指導のときの説明にも使えます。
Q. 標準約款以外に、荷主ごとの覚書を交わしてもよいですか。 A. 交わせますが、約款と矛盾しない形にしてください。待機料や附帯作業の扱いを個別に決める場面で使われます。内容は社内で確かめる担当を決めておいてください。