運送業の事業報告書|出す時期と2つの書類
目次
毎年、運輸支局に出す書類があります。事業報告書と事業実績報告書です。出し忘れていても催促が来ないことがあり、気づかないまま何年も過ぎている事業者があります。巡回指導で「出していますか」と聞かれて、初めて知る形です。
この記事では、事業報告書を、2つの書類の違い、出す時期、書く中身、出し忘れたときの動き、準備の段取りの順に整理します。様式と提出の方法は制度の見直しで変わります。最新の扱いは所轄の運輸支局に確認してください。
結論:毎年出す書類が2つあり、時期が違う
貨物自動車運送事業者には、毎年出す報告が求められています。
分かれるのは2つです。
1つ目は、事業報告書です。事業の概況、損益、貸借。決算に基づく内容です。
2つ目は、事業実績報告書です。輸送の実績。走行の距離、輸送の量、従業員の数など。
2つは別の書類で、出す時期も違います。「毎年出している」と思っていても、片方だけという事業者があります。両方を出しているかを確かめてください。
出す時期
時期は、それぞれ決まっています。
押さえるのは3つです。
1つ目は、事業報告書の時期です。各事業年度の経過後、定められた期間内に提出することとされています。決算が終わってからになります。
2つ目は、事業実績報告書の時期です。毎年、定められた期日までに、前年度の実績を提出することとされています。
3つ目は、期日が決まっていることです。決算の時期にかかわらず、実績報告書の期日は共通です。
具体的な期日は所轄の運輸支局に確かめてください。決算の時期が事業者ごとに違うので、事業報告書の期限も違います。自社の決算月から逆算して、予定表に入れてください。
事業報告書に書く中身
事業報告書は、決算の数字が中心になります。
主な中身は4つです。
1つ目は、事業の概況です。営業所、車両数、従業員数。
2つ目は、損益の状況です。営業収益、営業費用、営業損益。
3つ目は、貸借の状況です。資産と負債。
4つ目は、運送の収入の内訳です。事業の区分ごと。
経理の担当と組む作業になります。決算の数字がそろわないと書けません。決算が終わった時点で、報告書の作成を依頼する流れにしておくと、期限に追われません。
事業実績報告書に書く中身
実績報告書は、運んだ量と走った距離が中心です。
主な中身は4つです。
1つ目は、輸送の実績です。走行の距離、輸送の量。
2つ目は、車両の数です。年度末の保有台数。
3つ目は、従業員の数です。運転者とそれ以外。
4つ目は、事故の件数です。
1つ目のために、日ごとの記録が要ります。運転日報や運行記録計の記録から集計します。年度が終わってから1年分を数えるのは大変です。月ごとに集計しておく習慣にすると、報告書の作成が数時間で終わります。
出し忘れたときの動き
出していないことに気づいたら、隠さずに動きます。
動きは3段です。
1つ目は、所轄の運輸支局に連絡することです。いつから出していないかを伝えます。
2つ目は、過去の分をそろえることです。何年分を出すかは、支局の指示によります。
3つ目は、今後の仕組みを作ることです。期限を予定表に入れ、担当を決めます。
報告をしないこと自体が、行政処分の対象になることがあります。ただし、自分から気づいて出す場合と、指摘されてから出す場合では扱いが変わります。気づいた時点で連絡してください。
準備の段取り
毎年のことなので、段取りを決めておきます。
決めるのは4つです。
1つ目は、担当者です。事業報告書は経理と、実績報告書は運行管理と組みます。
2つ目は、集計の時期です。実績は月ごとに集計しておきます。
3つ目は、期限の予定です。決算月から逆算した日付。
4つ目は、前年の写しの保管です。次の年に、そのまま形をなぞれます。
4つ目がいちばん時間を節約します。前年の報告書があれば、どの数字をどこから持ってきたかが分かります。写しを取って、次の年の担当が見られる場所に置いてください。
数字のつじつまを合わせる
報告書の数字は、他の書類と突き合わせられます。
そろえるのは4つです。
1つ目は、車両数です。車両管理台帳や、事業計画の届出と合っているか。
2つ目は、運転者の数です。運転者台帳の人数と合っているか。
3つ目は、営業所の数です。事業計画と合っているか。
4つ目は、走行の距離です。運転日報や運行記録計の記録と合っているか。
1つ目と3つ目がずれていると、事業計画の変更届が出ていない可能性があります。車を増やした、営業所を移した。報告書を作るときが、届出の抜けに気づく機会になります。
実績の集計を月ごとにする
年度末にまとめて数えると、丸1日仕事になります。月ごとにすれば、毎月30分です。
集計するのは4つです。
1つ目は、走行の距離です。車両ごとの月間の距離。
2つ目は、輸送の量です。トン数など。
3つ目は、事故の件数です。起きた月に記録します。
4つ目は、従業員の数の変化です。入社と退職。
1つ目は、運行記録計の記録から出せる事業所があります。デジタル式のものを使っているなら、月ごとの集計が自動で出ることがあります。使っている仕組みで何が出せるかを、一度確かめてください。
保存と管理
出した報告書は、控えを残します。
残すのは4つです。
1つ目は、提出した控えです。受付の印があるもの。
2つ目は、根拠になった集計の資料です。
3つ目は、提出した日と方法です。
4つ目は、次の年の期限です。
2つ目を残しておくと、数字を聞かれたときに答えられます。「この走行距離はどこから出したか」を後から聞かれることがあります。集計の表を一緒に綴じておくだけで足ります。
年間の届出の予定を1枚にする
運送事業には、毎年か随時に出す書類がいくつもあります。事業報告書だけを管理しても抜けます。
並べるのは4つです。
1つ目は、毎年出すものです。事業報告書、事業実績報告書。
2つ目は、期限が来たら出すものです。運行管理者や整備管理者の選任と解任、事業計画の変更。
3つ目は、更新が要るものです。許可、資格、講習の受講。
4つ目は、報告が要る場面です。事故が起きたとき。
1つ目と3つ目を、月ごとの表にしてください。決算月、実績報告書の期日、講習の時期。1枚あれば、年度の初めに1年分の予定が決まります。担当者が替わっても、この表があれば続けられます。
数字を経営にも使う
報告書のために集計した数字は、経営の判断にも使えます。
見るのは4つです。
1つ目は、車両あたりの走行距離です。車の使い方の偏りが見えます。
2つ目は、車両あたりの収入です。どの車が稼いでいるか。
3つ目は、運転者あたりの実績です。
4つ目は、事故の件数の推移です。
2つ目が判断の材料になります。「この車は年間これだけ走って、これだけの収入」という数字が出ると、増車や買い替えの判断ができます。報告のためだけに集計するのはもったいない数字です。
電子での届出を使う
報告の提出は、電子で行える仕組みが整ってきています。使えると、窓口へ行く時間が消えます。
確かめるのは4つです。
1つ目は、対応している手続きです。すべての届出が電子でできるとは限りません。
2つ目は、必要な登録です。利用のための登録やアカウントが要ることがあります。
3つ目は、控えの受け取り方です。画面で確かめるのか、印刷するのか。
4つ目は、添付する書類の形です。決算の書類などの出し方。
3つ目を確かめてください。窓口なら受付の印がもらえますが、電子では控えの形が違います。提出した証拠をどう残すかを決めて、社内のファイルに綴じる形にしてください。
担当者が替わるときに渡すもの
報告の担当は、1人が抱えていることが多い仕事です。引き継ぎの材料をそろえます。
渡すのは5つです。
1つ目は、前年の報告書の写しです。
2つ目は、集計の元になった資料と、その出どころです。
3つ目は、期限の一覧です。
4つ目は、提出の方法と、窓口の連絡先です。
5つ目は、過去に指摘された点です。
2つ目がいちばん助かります。「この走行距離の数字は、どこから持ってきたのか」が分からないと、一から数え直すことになります。集計の手順を1枚に書いて、報告書の控えと一緒に綴じてください。
まとめ
運送業の事業報告書は、毎年出す書類が2つあるという点を先に押さえます。
- 事業報告書は決算に基づく内容、事業実績報告書は輸送の実績
- 出す時期が違う。事業報告書は決算から、実績報告書は共通の期日
- 実績は月ごとに集計しておくと、年度末に数時間で終わる
- 車両数や営業所の数がずれていたら、事業計画の変更届が抜けている可能性
- 出していないことに気づいたら、自分から運輸支局に連絡する
様式と提出の方法は制度の見直しで変わります。最新の扱いは所轄の運輸支局に確認してください。
よくある質問
Q. 事業報告書と事業実績報告書は、何が違いますか。 A. 事業報告書は決算に基づく内容(損益、貸借、事業の概況)、事業実績報告書は輸送の実績(走行距離、輸送量、従業員数など)です。別の書類で、出す時期も違います。
Q. 出す時期はいつですか。 A. 事業報告書は各事業年度の経過後、実績報告書は毎年の定められた期日までとされています。具体的な期日は所轄の運輸支局に確かめてください。決算月から逆算して予定に入れます。
Q. 出していないことに気づきました。 A. 所轄の運輸支局に連絡してください。隠して次の年だけ出すことはできません。自分から気づいて出す場合と、指摘されてから出す場合では扱いが変わります。
Q. 誰が作りますか。 A. 事業報告書は経理と、実績報告書は運行管理と組みます。担当を決めておいてください。決算が終わった時点で作成を依頼する流れにすると、期限に追われません。
Q. 走行距離はどこから出しますか。 A. 運転日報や運行記録計の記録です。デジタル式のものを使っているなら、月ごとの集計が自動で出ることがあります。使っている仕組みで何が出せるかを確かめてください。
Q. 年度末にまとめて集計しています。 A. 月ごとに集計する形に変えてください。毎月30分で済み、年度末が数時間で終わります。まとめて数えると、丸1日仕事になります。
Q. 車両数が事業計画と合いません。 A. 事業計画の変更届が出ていない可能性があります。報告書を作るときが、届出の抜けに気づく機会になります。所轄の運輸支局に相談してください。
Q. 提出の方法は何ですか。 A. 窓口への提出のほか、電子での届出が用意されていることがあります。所轄の運輸支局に確かめてください。方法によって、控えの受け取り方が変わります。
Q. 控えは何年残しますか。 A. 法令で年数が定められているものに従いますが、少なくとも前年分は残してください。次の年に、どの数字をどこから持ってきたかが分かります。集計の資料も一緒に綴じておきます。
Q. 報告しないと、どうなりますか。 A. 行政処分の対象になることがあります。扱いは所轄の運輸支局に確かめてください。出していない年数が増えるほど、対応に時間がかかります。
Q. 決算が遅れています。 A. 事業報告書は決算に基づく内容なので、決算が終わらないと作れません。遅れる見込みが立った時点で、所轄の運輸支局に相談してください。黙って期限を過ぎるより、先に連絡したほうが扱いが軽く済みます。
Q. 前年の報告書が見つかりません。 A. 所轄の運輸支局に、提出の記録があるかを相談してください。次からは写しを取って、担当が見られる場所に置く運用にしてください。前年の形があると、作成の時間が大きく変わります。
Q. 届出の予定表には何を入れますか。 A. 毎年出すもの、期限が来たら出すもの、更新が要るもの、事故のときの報告。月ごとの表にすると、年度の初めに1年分の予定が決まります。担当者が替わっても続けられます。
Q. 集計した数字を他に使えますか。 A. 使えます。車両あたりの走行距離と収入、運転者あたりの実績、事故の推移。増車や買い替えの判断の材料になります。報告のためだけに集計するのはもったいない数字です。
Q. 電子で提出した場合、控えはどうなりますか。 A. 窓口とは形が違います。画面の写しを印刷するか、受付の通知を保存するなど、提出した証拠の残し方を決めてください。社内のファイルに綴じる形にしておきます。
Q. 担当が替わるときに何を渡しますか。 A. 前年の報告書の写し、集計の元になった資料とその出どころ、期限の一覧、提出の方法、過去の指摘。集計の手順を1枚に書いておくと、一から数え直さずに済みます。
Q. 営業所ごとに出しますか。 A. 事業者として出すものです。ただし営業所ごとの数字を集める必要があります。各営業所から集計を出してもらう期限を、本社の期限から逆算して決めておいてください。
Q. 事故の件数は、どの範囲を数えますか。 A. 報告書の様式で求められている範囲です。自動車事故報告書の対象になったものと、それ以外の扱いが違うことがあります。所轄の運輸支局に確かめてください。
Q. 実績報告書の期日は、決算月が違っても同じですか。 A. 実績報告書の期日は共通で、事業報告書は決算に基づくため事業者ごとに違います。2つを別々に予定へ入れてください。同じ時期だと思い込んでいると、片方を落とします。