巡回指導とは?38項目の中身と当日までの準備
目次
巡回指導の連絡が来た。書類を見せればよいとは聞いているけれど、何を出せばよいのかが分からない。前回は担当者が変わっていて、引き継ぎの資料も残っていない。1か月後に来ると言われて、そこから慌てる。よくある形です。
この記事では、巡回指導を、誰が来るのか・何を見るのか・当日までに何をそろえるのかの3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社に足りない書類がどれかを、その場で確かめられる状態を目指します。
結論:巡回指導は行政処分ではなく、指導と助言の仕組み
巡回指導とは、貨物自動車運送事業の適正化事業実施機関が、事業所を訪問して法令の順守の状況を確かめ、指導と助言を行うものです。行政による監査とは別の仕組みとされています。
来るのは、各都道府県のトラック協会などに置かれた適正化事業実施機関の指導員です。行政の職員ではないため、その場で処分が出ることはありません。
ポイントはここです。巡回指導と監査は別ですが、つながっています。巡回指導で評価が低く、改善の報告も出されない場合、行政に報告される形があります。そこから監査につながることがあるため、指導の場だからと軽く扱える話ではありません。
一般には、2年から3年に1回の周期で訪問されるとされています。新規に許可を受けた事業所には、事業を開始してから早い時期に訪問がある形になっています。
見られるのは38の項目
巡回指導では、あらかじめ決められた項目に沿って確かめられます。一般に38項目と呼ばれるもので、大きく分けると次のようになります。
事業計画に関するもの。主たる事務所や営業所の位置、車庫の位置と収容能力、休憩や睡眠の施設、最低車両台数などが見られます。
帳票類の整備と保存に関するもの。運転者台帳、点呼記録簿、運転日報、運行記録計の記録、指導監督の記録、事故の記録などです。ここがいちばん項目数が多く、指摘も集まります。
運行管理に関するもの。運行管理者の選任と届出、補助者の選任、点呼の実施状況、乗務時間の基準、健康状態の把握などが入ります。
車両管理に関するもの。整備管理者の選任、日常点検の実施、定期点検の実施と記録が見られます。
このうち、いくつかは重点項目として扱われ、評価への影響が大きくなっています。点呼の実施、運転日報の記載、乗務時間の基準の順守といった、日々の運行に直結する項目が該当します。
指摘が集まるのは、点呼と日報と記録の3つ
実際に指摘されやすいのは、制度を知らないことより、毎日の記録が埋まっていないことです。集まるのは次の3つです。
1つ目は点呼です。乗務前・乗務後・中間の点呼が行われているか、記録簿に必要な項目が書かれているかを見られます。よくあるのは、対面でできない場合の理由が書かれていない、酒気帯びの確認の欄が空いている、点呼を行った人の氏名が無い、という形です。
2つ目は運転日報です。運転者ごと、車両ごとに作られているか、必要な項目が書かれているかを見られます。休憩の時刻が書かれていない、荷待ちの時間が分からない、といった指摘が出ます。
3つ目は指導監督の記録です。運転者に対する指導と監督を行った記録が残っているか、特定の運転者への特別な指導が行われているかを見られます。やっているのに記録が無いことが多いのがここです。
3つとも、当日に作れるものではありません。過去の分を見られるので、連絡が来てから始めても間に合わない性質のものです。
当日までにそろえる書類
訪問の連絡は、事前に来るのが一般的です。何を用意するかも案内されますが、社内で先に並べておくと当日が短くなります。
そろえるのは、事業の許認可に関するもの(許可書、事業計画、車庫の賃貸借契約など)、人に関するもの(運転者等台帳、選任の届出、健康診断の結果、指導監督の記録)、運行に関するもの(点呼記録簿、運転日報、運行記録計の記録、乗務時間の管理表)、車両に関するもの(車検証、日常点検の記録、定期点検の記録)の4つの束です。
束ごとに保存期間が違うので、表紙に年数を書いておくと、その場で「いつからいつまでの分か」を説明できます。探す時間が減るだけで、当日の印象は大きく変わります。
過去1年ぶんを見られることが多いので、直近の12か月を1つの箱にまとめておく形が実務的です。年度で区切ると、年度をまたいだ月が探しにくくなります。
書類のほかに、事業所そのものも見られます。休憩や睡眠の施設が事業計画のとおりにあるか、車庫が届け出た場所にあるか、収容できる台数に収まっているか。車庫に入りきらず路上に置いている車両があると、その場で分かります。
掲示物も見られます。運行管理者の氏名、整備管理者の氏名、点呼の実施場所の表示など、掲示が求められているものがそろっているかを確かめます。紙が1枚剥がれているだけで指摘になるので、前日に一度見て回るだけでも効きます。
評価は5段階。低いと改善報告が要る
巡回指導の結果は、総合評価として示されます。一般にはA・B・C・D・Eの5段階とされていて、下のほうになると改善の報告を求められる形になっています。
評価が低い場合、期限を切って改善報告書の提出を求められます。提出しない、あるいは改善が見られない場合に、行政へ報告される流れがあるとされています。ここが監査につながる経路です。
改善報告書には、指摘された項目ごとに、何をいつまでにどう直したかを書きます。書いただけでは足りず、次の訪問で続いているかを見られます。様式を変えた、運用を変えた、といった内容であれば、実物を添えるほうが伝わります。
逆に、評価が高いと訪問の周期が延びることがあります。日々の記録が埋まっていれば、指導の時間そのものが短くなります。
評価は、いくつかの重点項目で決まる部分が大きくなっています。点呼の実施、乗務時間の基準の順守、運転日報の記載、指導監督の実施。この4つが埋まっていれば、細かい項目で指摘があっても総合の評価は大きく下がりにくい形です。
逆に、この4つのどれかが空いていると、他をそろえても上がりません。書類の数を増やすより、毎日の4つを埋めるほうが早いというのが、実際に効く順番です。
当日の流れと、聞かれること
当日は、書類の確認と、担当者への聞き取りが中心になります。時間は半日ほどが一般的です。
聞かれるのは、運行管理者が実際に何をしているかです。点呼を誰が行っているか、補助者はいるか、乗務時間をどう管理しているか、指導監督をいつ行ったか。書類と話が食い違うと、そこを深く聞かれます。
同席するのは、運行管理者と、できれば事業者本人が望ましい形です。運行管理者だけに任せると、事業計画や許認可の話で止まります。
終わりに講評があります。指摘された項目は、その場でメモを取ります。後から書面で届きますが、口頭で補足された内容のほうが具体的なことがあります。
連絡が来てから当日までにできること
過去の記録は作り直せませんが、連絡から当日までの1か月でできることはいくつかあります。手を付ける順番を決めておくと、限られた時間で効きます。
1つ目は、いま空いている欄を埋めることです。今日から先の点呼記録簿と運転日報を、正しい形で埋めます。過去を直すのではなく、現在が正しいことを示します。運用を直したのがいつかが分かるように、直した日を社内のメモに残しておきます。
2つ目は、選任と届出の確認です。運行管理者、整備管理者、補助者の選任が届出の内容と合っているかを見ます。人が入れ替わっているのに届出を出していない、という指摘は書類だけで分かるため、確実に拾われます。
3つ目は、指導監督の記録です。年間の計画があるか、実施した記録があるか、特定の運転者への特別な指導が行われているかを見ます。実施したのに記録が無い場合は、そのときの資料や出席者から復元できることがあります。
4つ目は、書類の並べ替えです。4つの束に分けて、表紙に保存期間を書きます。中身が同じでも、探せる状態かどうかで当日の時間が変わります。
この4つは、どれも1か月あれば動きます。逆に、過去1年ぶんの点呼記録簿を後から作るような形は取れません。作り直した記録は、筆跡や用紙の状態で分かります。
担当者が代わっても回る形にする
巡回指導で毎回つまずく事業所には、共通点があります。前回の書類が残っていないことです。担当者が代わると、指導の書面も改善報告書も行方が分からなくなります。
置き場所を1つ決めて、そこに入れる形にします。入れるのは、前回の指導の書面、提出した改善報告書、そのときに使ったチェック表、訪問の日付を書いたメモ。次に来るのは2年後か3年後なので、人の記憶には残りません。
あわせて、38項目のチェック表を年に1回だけ自分で埋める日を決めておくと、訪問の連絡が来ても慌てません。埋めるのに半日もかかりませんし、足りない書類がその場で分かります。
まとめ
巡回指導は、適正化事業実施機関が行う指導と助言の仕組みで、行政監査とは別です。ただし、評価が低く改善が見られない場合は行政へ報告される形があり、監査につながります。
見られるのは38項目で、帳票類の整備と保存に指摘が集まります。とくに点呼記録簿、運転日報、指導監督の記録の3つです。どれも当日には作れないため、日々の運用で埋めておくことになります。
当日までにそろえるのは、許認可・人・運行・車両の4つの束です。束ごとに保存期間が違うので、表紙に年数を書いておくと説明が早くなります。
評価が低いと改善報告書の提出を求められ、次の訪問で続いているかを見られます。自社の準備で迷う点は、所轄のトラック協会または運輸支局に確かめるのが確実です。
実際に使える様式が必要な方へ
巡回指導の38項目を1枚で確かめられるチェック表が、点検板のテンプレートのページにあります。読んだあと、自社に足りない書類をその場で洗い出せます。
この様式をひらくよくある質問
Q. 巡回指導を断ることはできますか。 A. 適正化事業実施機関による指導は、事業者の協力を前提とした仕組みとされています。ただし、応じない場合は行政に報告される形があります。日程の都合がつかない場合は、断るのではなく日程の調整を申し出るのが実務的です。
Q. 巡回指導と監査は、何が違うのですか。 A. 巡回指導は指導と助言で、その場で処分が出ることはありません。監査は行政が行うもので、法令違反が確認されれば行政処分につながります。巡回指導の結果が監査の端緒になることがある、という関係です。
Q. 書類が一部足りない場合、当日はどうすればよいですか。 A. 無いものを有るように見せることはできません。足りない理由と、いつまでにそろえるかを説明する形になります。改善報告で示せるように、当日にメモを取っておきます。
Q. 訪問の周期はどれくらいですか。 A. 一般には2年から3年に1回とされています。評価が低い事業所には早く訪問されることがあり、逆に評価が高いと周期が延びることがあります。新規に許可を受けた事業所には、開始から早い時期に訪問がある形です。
Q. 運行管理者が不在の日に来ることはありますか。 A. 訪問の日程は事前に調整されるのが一般的です。運行管理者が同席できる日を選びます。当日に急な運行が入らないよう、配車の担当にも日程を伝えておきます。
Q. 指摘された項目は、次の訪問まで残りますか。 A. 前回の指摘に対して改善されているかを見られる形があります。前回の指導の書面と改善報告書は、次の訪問まで手元に残しておきます。担当者が代わると引き継がれないことが多いので、書類の箱に一緒に入れておくと確実です。
Q. 巡回指導の費用はかかりますか。 A. 適正化事業実施機関による巡回指導について、事業者が費用を負担する形にはなっていないのが一般的です。ただし、扱いは都道府県によって案内が異なることがあるため、所轄のトラック協会に確かめるのが確実です。
Q. 巡回指導の結果は、荷主や取引先に知られますか。 A. 指導の結果そのものが公表される仕組みにはなっていません。ただし、安全性優良事業所の認定を受ける場合など、別の制度の評価に関わることがあります。取引先から安全の取り組みを聞かれる機会は増えているので、結果を自社の説明の材料として使う形もあります。