年間の拘束時間を管理する|月の積み上げで見る
目次
1か月の拘束時間は毎月見ている。ところが年間の合計は、年度が終わってから数えている。これだと、超えそうなことに気づくのが遅れます。年間の上限は、月の積み上げで管理する必要があります。
この記事では、年間の拘束時間を、月と年の関係、積み上げの見方、超えそうなときの手、繁忙期の組み方、記録の残し方の順に整理します。上限の値と例外の条件は制度で定められ、見直されることがあります。最新の扱いは所轄の労働基準監督署と運輸支局に確認してください。
結論:年の上限は、月の積み上げで決まる
拘束時間には、1日、1か月、1年のそれぞれに上限があります。
押さえるのは3つです。
1つ目は、1日の上限です。1回の乗務での拘束時間。
2つ目は、1か月の上限です。原則の上限と、労使協定による例外があります。
3つ目は、1年の上限です。月の合計が積み上がったもの。
3つ目は、月ごとの管理だけでは守れません。毎月の上限を守っていても、上限に近い月が続くと年間で超えることがあります。月の数字を足していく表が要ります。
月の積み上げを表にする
年間の管理は、1枚の表でできます。
作るのは4つです。
1つ目は、縦に運転者、横に月を並べることです。
2つ目は、各月の拘束時間を入れることです。
3つ目は、累計の行か列を作ることです。その月までの合計。
4つ目は、年間の上限との差を出すことです。あと何時間使えるか。
4つ目がいちばん役に立ちます。「あと何時間使えるか」が見えると、残りの月にどれだけ乗せられるかが分かります。感覚ではなく数字で配車できます。
半期で確かめる
年度の途中で、ペースを確かめる機会を作ります。
見るのは4つです。
1つ目は、半分の時点での累計です。年間の上限の半分を超えていないか。
2つ目は、超えている人です。このペースだと年間で超える人。
3つ目は、その人の運行の内容です。なぜ長いのか。
4つ目は、後半の計画です。減らす方法。
1つ目を9月か10月にやってください。年度の後半に入る前に分かれば、残りの6か月で調整できます。2月に気づいても、できることはほとんどありません。
超えそうなときの手
早く気づけば、手があります。遅いほど選択肢が減ります。
手は4つです。
1つ目は、運行を他の人に回すことです。余裕のある人に振ります。
2つ目は、運行の内容を変えることです。長い便を短い便に。
3つ目は、休みを増やすことです。
4つ目は、人を増やすことです。採用には時間がかかります。
4つ目は、半年前に気づかないと間に合いません。採用して、教育して、1人で乗務できるようになるまでに時間がかかります。半期の確認が、採用の判断の期限になります。
繁忙期を先に見込む
多くの事業所には、忙しい時期があります。先に見込んで組みます。
やることは4つです。
1つ目は、繁忙期を特定することです。去年の月ごとの拘束時間から分かります。
2つ目は、その月に必要な時間を見込むことです。
3つ目は、他の月を抑えることです。繁忙期のぶんの余裕を、他の月で作ります。
4つ目は、応援の手当てです。他の営業所からの応援、傭車。
3つ目が計画の肝です。繁忙期に上限いっぱい使うなら、その前後の月は余裕を持たせる必要があります。去年の数字を見れば、どの月がどれだけ必要かが分かります。
労使協定との関係
1か月の上限には、労使協定による例外があります。年間の管理と関わります。
押さえるのは4つです。
1つ目は、協定が要る場合です。原則の上限を超える月がある場合。
2つ目は、超えられる月数の上限です。協定があっても、回数に制限があります。
3つ目は、協定の期間です。有効期間があります。
4つ目は、届出です。必要な場合があります。
2つ目を数えてください。協定があるから何か月でも超えられる、というものではありません。超えた月の数を、年度の途中で数える形にしてください。詳しい要件は所轄の労働基準監督署に確かめてください。
時間外労働の上限との関係
拘束時間とは別に、時間外労働の上限があります。両方を見ます。
違うのは4つです。
1つ目は、何を数えるかです。拘束時間は始業から終業まで、時間外労働は法定の労働時間を超えた分。
2つ目は、根拠です。改善基準告示と、労働基準法。
3つ目は、上限の値です。
4つ目は、協定の要否です。
2つとも守る必要があります。片方だけを見ていると、もう片方で超えます。同じ表の中に、拘束時間と時間外の両方の列を作ると、まとめて見られます。
記録の残し方
年間の管理の記録は、根拠まで残します。
残すのは4つです。
1つ目は、日ごとの記録です。点呼記録簿、運転日報、運行記録計。
2つ目は、月ごとの集計です。
3つ目は、年間の累計の表です。
4つ目は、超えそうなときにやった対応です。誰の運行をどう変えたか。
4つ目を残してください。監督署の調査では、「気づいて何をしたか」が見られます。超えていない結果だけでなく、管理していた経過が残っていることが大事です。
人ごとの偏りを見る
年間の累計を並べると、人によって大きく違うことが分かります。
見るのは4つです。
1つ目は、いちばん長い人と短い人の差です。倍ほど違う事業所があります。
2つ目は、偏る理由です。特定の長距離の便を同じ人が担当している、断らない人に仕事が集まる。
3つ目は、本人の希望です。稼ぎたくて引き受けている場合もあります。
4つ目は、上限に近い人の来年の見通しです。
3つ目があっても、上限は守る必要があります。本人が希望していても、制度の上限を超えることはできません。稼ぎの仕組みが時間に依存しているなら、そちらの見直しが要ります。歩合の考え方や、手当の付け方を変える検討につながります。
数字を月初に共有する
集計した数字は、使われて初めて意味を持ちます。
共有するのは4つです。
1つ目は、配車の担当です。その月に余裕のある人と、無い人が分かります。
2つ目は、運行管理者です。点呼のときに声をかけられます。
3つ目は、運転者本人です。自分の累計を知ると、引き受け方が変わります。
4つ目は、経営の側です。採用の判断につながります。
1つ目がいちばん効きます。配車をする人が「この人はあと何時間しか使えない」と知っていれば、その月の割り当てが変わります。月初に1枚渡すだけで足ります。
監督署の調査で見られること
労働時間については、労働基準監督署の調査の対象になります。
見られるのは4つです。
1つ目は、記録の有無です。日ごとの拘束時間が分かる記録があるか。
2つ目は、集計されているかです。月と年の合計。
3つ目は、上限を超えていないかです。
4つ目は、超えたときの対応です。気づいて何をしたか。
2つ目が無いと、管理していないことになります。日ごとの記録があっても、集計していなければ「知らなかった」ということになります。集計して見ている事実が、管理の証拠になります。
記録の出どころをそろえる
拘束時間の集計は、どの記録から出すかで数字が変わります。
そろえるのは4つです。
1つ目は、何を根拠にするかを決めることです。点呼記録簿の時刻か、運転日報か、運行記録計か。
2つ目は、ずれたときの扱いです。複数の記録で時刻が違う場合、どれを採るか。
3つ目は、始業と終業の定義です。どこからどこまでを拘束時間とするか。
4つ目は、社内で統一することです。
3つ目を決めておいてください。出庫の前の準備、帰庫後の洗車や書類の整理。これらを入れるか入れないかで、月の合計が数十時間変わります。入れる前提で決めておくほうが安全です。
表を1年使い続ける
年間の管理の表は、年度の初めに作って、1年使い続けます。
続けるための工夫は4つです。
1つ目は、様式を変えないことです。途中で列を増やすと、前の月と比べられません。
2つ目は、入れる日を決めることです。毎月5日までに前月分を入れる、など。
3つ目は、担当を決めることです。入れる人と、見る人。
4つ目は、置き場所を決めることです。配車の担当が見られる場所。
2つ目を決めておかないと、数か月分まとめて入れることになります。まとめて入れると、超えそうな人に気づくのが遅れます。毎月30分の作業として、予定に入れてください。
まとめ
年間の拘束時間は、月の積み上げで管理します。
- 上限は1日、1か月、1年のそれぞれにある
- 毎月の上限を守っていても、上限に近い月が続くと年間で超える
- 縦に運転者、横に月を並べた表に、累計と残りを出す
- 半期の時点で確かめる。採用が必要なら、ここが判断の期限
- 拘束時間と時間外労働は別の制度。両方を同じ表で見る
上限の値と例外の条件は制度で定められ、見直されることがあります。最新の扱いは所轄の労働基準監督署と運輸支局に確認してください。
よくある質問
Q. 毎月の上限を守っていれば、年間も大丈夫ですか。 A. 大丈夫とは限りません。上限に近い月が続くと、年間で超えます。月の数字を足していく表を作って、累計を見てください。
Q. 年間の管理は、いつ確かめますか。 A. 半期の時点です。9月か10月に累計を見てください。年度の後半に入る前に分かれば、残りの6か月で調整できます。2月に気づいても、できることはほとんどありません。
Q. 超えそうな人が出ました。 A. 他の人に回す、運行の内容を変える、休みを増やす、人を増やす。採用は半年前に気づかないと間に合いません。早く気づくほど選択肢が多くなります。
Q. 繁忙期はどう組みますか。 A. 去年の月ごとの数字から繁忙期を特定し、必要な時間を見込んで、その前後の月に余裕を作ってください。繁忙期に上限いっぱい使う前提なら、他の月を抑えることになります。
Q. 労使協定があれば、何か月でも超えられますか。 A. 超えられる月の数には制限があります。超えた月の数を年度の途中で数えてください。詳しい要件は所轄の労働基準監督署に確かめます。
Q. 拘束時間と時間外労働は同じですか。 A. 別のものです。拘束時間は始業から終業まで、時間外労働は法定の労働時間を超えた分です。根拠になる制度も違います。両方を守る必要があります。
Q. 集計は何から作りますか。 A. 点呼記録簿、運転日報、運行記録計です。デジタル式のものを使っていれば、月ごとの集計が出ることがあります。使っている仕組みで何が出せるかを確かめてください。
Q. 月の途中で超えそうなときは。 A. 月の半ばにペースを見てください。15日の時点で超えそうな人が分かれば、後半の運行を減らせます。月末に気づいても調整できません。
Q. 傭車を使うと、拘束時間の管理はどうなりますか。 A. 自社の運転者ではないので、自社の拘束時間には入りません。ただし傭車先の事業者が管理する義務があります。委託の際に、無理な条件になっていないかを確かめてください。
Q. 記録には何を残しますか。 A. 日ごとの記録、月ごとの集計、年間の累計、そして超えそうなときにやった対応です。監督署の調査では「気づいて何をしたか」が見られます。
Q. 表は誰が作りますか。 A. 運行管理者か事務の担当です。月に1回、前月の数字を入れて累計を更新するだけで足ります。30分で終わります。
Q. 運転者にも見せますか。 A. 見せると効果があります。自分の累計が分かると、無理な引き受けを断りやすくなります。個人の数字なので、他の人の分が見えない形にしてください。
Q. 人によって拘束時間が大きく違います。 A. 偏る理由を見てください。特定の便を同じ人が担当している、断らない人に集まるという形が多くあります。本人が希望していても、制度の上限は守る必要があります。
Q. 集計した数字は誰に渡しますか。 A. 配車の担当、運行管理者、運転者本人、経営の側です。配車をする人が「あと何時間使えるか」を知っていることが、いちばん効きます。月初に1枚渡してください。
Q. 拘束時間はどの記録から出しますか。 A. 点呼記録簿、運転日報、運行記録計です。どれを根拠にするかを決めて統一してください。複数の記録で時刻が違う場合の扱いも決めておきます。
Q. 出庫前の準備や帰庫後の作業は入りますか。 A. 事業者の指揮のもとにある時間は拘束時間です。入れる前提で決めておくほうが安全です。扱いに迷うものは所轄の労働基準監督署に確かめてください。
Q. 年度の途中で運転者が入れ替わりました。 A. 入社した月から数えます。前の職場での拘束時間は引き継ぎません。ただし年度の途中から始まる人は、残りの月で上限に近づきやすいので、配車で注意してください。
Q. 表の様式を途中で変えてもよいですか。 A. 変えないほうがよいです。列を増やすと、前の月と比べられません。足りない項目があれば、次の年度から変えてください。年度の途中での変更は、集計の連続性を壊します。
Q. 傭車や日雇いの運転者も表に入れますか。 A. 自社で雇用している人が対象です。傭車先の運転者は、その事業者が管理します。ただし無理な条件で委託していないかは、自社の責任として確かめてください。
Q. 上限を超えてしまいました。 A. 超えた事実と理由、その後の対応を記録に残してください。隠したり、記録を直したりしないことです。所轄の労働基準監督署に相談し、再発を防ぐ手を決めてください。