点呼は誰がやれるか|運行管理者と補助者の線
目次
早朝と深夜に運行がある事業所では、点呼を誰がやるかが毎日の悩みになります。点呼を行えるのは運行管理者と、選任された補助者だけです。事務員が代わりにやっている、社長が名前だけ書いている。そういう状態は、巡回指導で必ず指摘されます。
この記事では、点呼を行える人を、運行管理者と補助者の線、補助者が行える範囲、選任の手続き、1人しかいない事業所での回し方、指摘されやすい形の順に整理します。選任の要件と補助者の扱いは事業の種類と規模で変わります。自分の事業所に何が適用されるかは、所轄の運輸支局に確認してください。
結論:行えるのは運行管理者と、選任された補助者だけ
点呼は、誰でもできる作業ではありません。行える人が定められています。
分かれるのは3つです。
1つ目は、運行管理者です。資格者証を持ち、選任されて届け出られている人。点呼の全部を行えます。
2つ目は、補助者です。一定の要件を満たし、事業者が選任した人。行える範囲に限りがあります。
3つ目は、それ以外の人です。点呼を行えません。事務員、配車担当、整備の担当。資格が無ければ行えません。
3つ目が現場でいちばん起きています。朝いちばんに出社した人が点呼をして、あとから運行管理者が記録に判を押す。この形は、点呼を行っていないことになります。
補助者になれる人
補助者は、誰でもなれるわけではありません。要件があります。
満たすのは3つです。
1つ目は、運行管理者の資格者証を持っていることです。試験に合格していれば、選任されていなくても資格者証は持てます。
2つ目は、または基礎講習を修了していることです。国土交通大臣が認定する講習実施機関が行う基礎講習。
3つ目は、事業者が選任していることです。要件を満たしていても、選任されていなければ補助者ではありません。
2つ目が現実的な道です。運行管理者試験に受かるのは簡単ではありませんが、基礎講習は受講すれば修了できます。点呼を回す人を増やしたい事業所は、ここから始めます。
補助者が行える範囲
補助者は点呼を行えますが、すべてを任せられるわけではありません。
線は3つです。
1つ目は、割合の制限です。点呼の総回数の一定割合は、運行管理者が行う必要があるとされています。全部を補助者に任せることはできません。
2つ目は、判断の範囲です。乗務させてよいかどうかの最終的な判断は、運行管理者が行います。補助者は、異常を認めたときに運行管理者に報告します。
3つ目は、指示の範囲です。補助者が独自の判断で運行の指示を出すことはできません。
1つ目の割合は、制度で定められています。具体的な割合と数え方は所轄の運輸支局に確かめてください。「補助者がいるから運行管理者は来なくてよい」ではありません。
選任の手続き
補助者は、事業者が選任します。運行管理者とは手続きが違います。
押さえるのは4つです。
1つ目は、運行管理者は届出が要ることです。選任と解任のたびに、所轄の運輸支局へ届け出ます。
2つ目は、補助者は届出の扱いが異なることです。選任したことを事業所の中で明確にしておく必要があります。扱いは所轄の運輸支局に確かめてください。
3つ目は、記録に残すことです。誰をいつ選任したか。資格者証か基礎講習の修了証の写しを保管します。
4つ目は、掲示することです。点呼を行う場所に、誰が行えるかを掲示しておくと、当日に迷いません。
3つ目が抜けやすい部分です。「あの人は講習を受けている」と口で言えても、修了証の写しが無いと示せません。採用のときと、講習を受けたときに、その場で写しを取る運用にしてください。
1人しかいない事業所での回し方
運行管理者が1人しかいない事業所では、24時間その人が点呼をすることはできません。
考えるのは4つです。
1つ目は、補助者を作ることです。基礎講習を受けてもらいます。いちばん確実な方法です。
2つ目は、点呼の時間帯をまとめることです。出庫の時刻を寄せられないか。
3つ目は、IT点呼や遠隔点呼です。営業所が複数ある場合に使えます。
4つ目は、運行の形を変えることです。深夜の出庫を減らせないか。
1つ目から検討してください。基礎講習は受講すれば修了できます。点呼を回せる人が2人になるだけで、事業所の運営がまったく変わります。受講の費用と日程は、講習実施機関に確かめてください。
指摘されやすい形
巡回指導では、点呼を行った人について確かめられます。
指摘されやすいのは4つです。
1つ目は、資格の無い人が行っている場合です。記録の署名が、資格者でない人の名前になっている。
2つ目は、記録だけ後から書いている場合です。実際には点呼をしていないのに、記録が埋まっている。
3つ目は、補助者の割合が多すぎる場合です。運行管理者が行った回数が少なすぎる。
4つ目は、選任の記録が無い場合です。補助者として選任した記録も、修了証の写しも無い。
2つ目がいちばん重い扱いになります。記録が実態と違うことは、帳簿の信用そのものを疑われます。できていないなら、できていないと分かる形で残すほうがはるかに軽く済みます。
点呼の要領書を作る
誰が行うかを決めたら、やり方を書面にします。人が替わっても同じ点呼になります。
書くのは4つです。
1つ目は、行う人です。運行管理者と補助者の氏名。時間帯ごとの担当。
2つ目は、確認する項目です。乗務前、乗務後、中間。それぞれ何を確認するか。
3つ目は、異常を認めたときの流れです。誰に報告し、誰が判断するか。
4つ目は、記録の書き方です。どの欄に何を書くか。
3つ目を具体的に書いてください。補助者が異常を認めたとき、運行管理者に連絡がつかない時間帯があります。そのときにどうするかまで決めておかないと、現場が押し切ることになります。
交代と引き継ぎ
点呼を行う人が交代するとき、引き継ぎが要ります。
引き継ぐのは4つです。
1つ目は、その日の運行の状況です。遅れ、変更、体調の気になる運転者。
2つ目は、前の時間帯で出た異常です。報告した内容と、その後の対応。
3つ目は、機器の状態です。アルコール検知器が正常か、記録の端末が動くか。
4つ目は、未記入の記録です。書きかけの欄を残さないこと。
2つ目を口頭だけで済ませないでください。「あの運転者は体調が気になる」という情報は、次の日の点呼にも効きます。記録の備考欄に一言残す形にすると、交代しても引き継がれます。
人を増やすときの考え方
事業が大きくなると、点呼を回す人の数が足りなくなります。計画的に増やします。
考えるのは4つです。
1つ目は、いま何人で回しているかです。時間帯ごとに、誰が行っているか。
2つ目は、休みと欠勤への備えです。1人休んだら回らない状態になっていないか。
3つ目は、資格を取る順番です。基礎講習を先に、試験はそのあと。
4つ目は、費用と時間です。講習の費用と、受講のあいだの人の手当て。
2つ目を確かめてください。運行管理者1人と補助者1人という体制は、どちらかが休むと崩れます。余裕を持って3人にしておくと、急な欠勤でも回ります。
点呼の時間を確保する
点呼を行える人がいても、時間が取れなければ形だけになります。時間の確保も体制の一部です。
考えるのは4つです。
1つ目は、1回にかかる時間です。確認の項目を全部やると、1人あたり数分かかります。5台が同時に出るなら、それだけの時間が要ります。
2つ目は、出庫の時刻の分散です。同じ時刻に集中していると、点呼が流れ作業になります。5分か10分ずらすだけで変わります。
3つ目は、点呼を行う場所です。事務所の入口で立ち話になっていないか。顔色を見て、受け答えを聞ける場所が要ります。
4つ目は、点呼の担当が他の仕事を持っていないかです。電話を受けながら点呼をしている状態では、確認が雑になります。
2つ目がいちばん手を付けやすい部分です。配車の段階で出庫時刻を少しずらすだけで、1人あたりにかけられる時間が増えます。人を増やさずに質を上げられる方法です。
記録に残す署名の扱い
点呼記録簿の署名は、実際に行った人の名前にします。
押さえるのは4つです。
1つ目は、行った人が書くことです。あとから別の人が書く形にしない。
2つ目は、印だけにしないことです。判を押すだけだと、誰が押したか分かりません。
3つ目は、補助者が行った場合も、その人の名前にすることです。運行管理者の名前にしてはいけません。
4つ目は、運行管理者の確認の欄を別に作ることです。補助者が行った点呼を、運行管理者があとで確かめた記録は、別の欄に残します。
3つ目を取り違えている事業所があります。「責任は運行管理者だから」と、行っていない人の名前を書く形です。実際に行った人の名前でないと、記録が実態と違うことになります。
まとめ
点呼を行えるのは、運行管理者と、選任された補助者だけです。
- 資格の無い人が行った点呼は、点呼を行っていないことになる
- 補助者になるには、運行管理者の資格者証か基礎講習の修了が要る。選任も必要
- 補助者には割合の制限があり、乗務の可否の最終的な判断は運行管理者が行う
- 選任の記録と、資格者証か修了証の写しを保管する
- 1人しかいない事業所は、基礎講習で補助者を作るのがいちばん確実
選任の要件と補助者の扱いは事業の種類と規模で変わります。自分の事業所に何が適用されるかは、所轄の運輸支局に確認してください。
よくある質問
Q. 事務員が点呼をしてもよいですか。 A. 運行管理者の資格者証を持っているか、基礎講習を修了して補助者として選任されていれば行えます。それ以外の人は行えません。基礎講習の受講から始めてください。
Q. 基礎講習はどこで受けられますか。 A. 国土交通大臣が認定する講習実施機関が行っています。日程と費用は機関によって違います。申し込みが混む時期があるので、早めに確かめてください。
Q. 補助者は何人まで選任できますか。 A. 人数の上限が定められているわけではありませんが、点呼の総回数に対する割合の制限があります。全部を補助者に任せることはできません。所轄の運輸支局に確かめてください。
Q. 補助者が異常を認めたら、どうしますか。 A. 運行管理者に報告します。乗務させてよいかどうかの最終的な判断は運行管理者が行います。連絡がつかない時間帯の手順も、要領書に書いておいてください。
Q. 社長が運行管理者を兼ねてもよいですか。 A. 資格者証を持ち、選任されていれば行えます。ただし実際に点呼を行える時間にいるかが問われます。名前だけの選任は、巡回指導で指摘されます。
Q. 点呼の記録は、行った人が書きますか。 A. 行った人が書きます。あとから別の人がまとめて書く形は避けてください。実態と違う記録は、帳簿の信用そのものを疑われます。
Q. 運行管理者が休んだ日は、どうしますか。 A. 補助者が行います。ただし割合の制限があるので、運行管理者が行う回数を確保できる形にしてください。1人と1人の体制は、どちらかが休むと崩れます。
Q. 補助者の選任は、届け出ますか。 A. 運行管理者の選任と解任は届出が要ります。補助者の扱いは異なるので、所轄の運輸支局に確かめてください。いずれにしても、事業所の中で記録に残してください。
Q. 資格者証の写しは、どこに保管しますか。 A. 運行管理の書類と一緒に、事業所で保管してください。採用のときと講習を受けたときに、その場で写しを取る運用にすると抜けません。
Q. 点呼を行う人を、掲示する必要がありますか。 A. 掲示の義務として定められているものではありませんが、点呼を行う場所に貼っておくと当日に迷いません。時間帯ごとの担当まで書いておくと確実です。
Q. 巡回指導で何を見られますか。 A. 記録の署名の人が資格を持っているか、補助者の割合、選任の記録、修了証の写し。「あの人は講習を受けている」と口で言っても、写しが無ければ示せません。
Q. 人を増やしたいのですが、費用がかかります。 A. 基礎講習の費用と、受講のあいだの人の手当てがかかります。1人休んだら回らない状態のほうが、結果として高くつきます。3人体制にしておくと、急な欠勤でも回ります。
Q. 運行管理者の資格者証は、どのくらいで取れますか。 A. 試験は年に複数回行われています。受験には実務の経験か基礎講習の修了が求められます。まず基礎講習を受けて補助者になり、そのあと試験を受ける流れが現実的です。
Q. 出庫が同じ時刻に集中しています。 A. 配車の段階で5分か10分ずらせないかを見てください。人を増やさずに、1人あたりにかけられる時間を増やせます。点呼が流れ作業になる原因の多くは、時刻の集中です。
Q. 補助者が行った点呼の署名は、誰の名前にしますか。 A. 実際に行った補助者の名前です。運行管理者の名前にしてはいけません。運行管理者があとで確認した記録は、別の欄に残してください。
Q. 点呼の場所に決まりはありますか。 A. 場所そのものの決まりより、顔色を見て受け答えを聞ける環境かが問われます。立ち話で済ませず、明るい場所で、他の作業をしながらにならない形にしてください。
Q. 運行管理者が複数いる場合、誰が点呼をしますか。 A. どの運行管理者でも行えます。時間帯ごとに担当を決めて掲示しておくと、当日に迷いません。休みのときの代わりも、あわせて決めておいてください。
Q. 点呼を行う人の教育は必要ですか。 A. 資格を取ったあとも、確認の項目や制度は変わります。運行管理者の一般講習を受ける機会に、補助者にも内容を伝える形にしている事業所があります。