運行管理者の補助者とは?できることと基礎講習の要件
目次
運行管理者が1人しかいないのに、出庫は早朝で帰庫は深夜。全部の点呼をその人が行うのは、どう考えても無理がある。かといって、誰に任せてよいのかも分からない。多くの事業所が同じところで止まっています。
この記事では、運行管理者の補助者を、要件・できること・記録の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の誰を補助者にすればよいかを決められる状態を目指します。
結論:補助者は基礎講習の修了が要件。点呼の一部を担える
運行管理者の補助者とは、運行管理者の業務を補助する立場の人のことです。運行管理者が選任し、その指導と監督のもとで業務を行う形とされています。
一般には、補助者になるための要件は2つのうちどちらかとされています。運行管理者の資格者証を持っていること、または国土交通大臣が認定する基礎講習を修了していることです。
ポイントはここです。誰でも補助者にできるわけではありません。「人手が足りないから事務の人に点呼をやってもらう」という形は取れません。基礎講習の修了が入口になります。
基礎講習は数日で修了できます。運行管理者試験より入口が広いため、まず補助者を作り、そこから運行管理者へ進むという道筋を取る事業所が多くあります。
補助者にできることと、できないこと
補助者は点呼を行えますが、すべてを任せられるわけではありません。ここが実務でいちばん誤解されるところです。
一般には、1営業所における点呼の総回数の3分の2を超えない範囲で補助者が行えるとされています。逆に言えば、3分の1以上は運行管理者自身が行う必要があります。
また、補助者が点呼を行った結果、運行の可否を判断するのは運行管理者です。酒気帯びが確認された、体調が悪い、といった場面で、補助者が単独で乗務の可否を決めることはできません。運行管理者に報告して指示を受ける形になります。
異常が無い場合でも、補助者が行った点呼の内容は運行管理者に伝えられる必要があります。報告の経路を決めておかないと、この部分が抜けます。
3分の2をどう数えるか
3分の2という割合は、営業所の点呼の総回数で見ます。運転者の人数ではありません。
1日に乗務前と乗務後の2回、運転者が10人いれば、1日で20回。1か月を25日とすれば500回です。このうち補助者が行えるのは、3分の2にあたる約333回まで。167回以上は運行管理者が行うことになります。
数えられる形にしておくには、点呼記録簿の点呼を行った人の欄が埋まっている必要があります。氏名が空欄だと、割合が出せません。
月に1回、点呼記録簿から回数を数えて記録しておくと、巡回指導で聞かれたときにそのまま出せます。表計算ソフトで管理しているなら、行った人ごとの件数を数えるだけで済みます。
数えてみると、運行管理者が行う3分の1をどの時間帯に置くかが見えてきます。日中の帰庫が多い時間帯に運行管理者が入る形にすれば、回数を無理なく満たせます。早朝と深夜を補助者が担い、日中を運行管理者が担う、という分け方が自然です。
割合が足りていない月が出たら、その月のうちに調整します。年度末にまとめて気づいても、過去の点呼をやり直すことはできません。
誰を補助者にするか
選ぶときに見るのは、資格の要件だけではありません。実際に回るかどうかで決まります。
1つ目は、点呼の時間に事業所にいる人であること。早朝の出庫が多いなら、早朝にいる人です。運行管理者が日中しかいないなら、補助者は早朝と深夜を担うことになります。
2つ目は、運転者と話せる人であること。点呼は、体調や睡眠について聞く場面です。聞きにくい関係だと、形だけになります。
3つ目は、続けて勤めてもらえる見込みがあること。基礎講習の費用と時間をかけるので、短期で入れ替わると積み上がりません。
配車の担当者を補助者にしている事業所が多いのは、この3つを満たしやすいからです。出庫の時間に事業所にいて、運転者と日常的に話し、内勤で定着している。役割が近いぶん、業務としても自然に回ります。
選任と記録
補助者の選任は、運行管理者が行う形とされています。運行管理者の選任のような届出が求められるわけではありませんが、社内で誰が補助者かを明らかにしておく必要があります。
残しておくのは3つです。誰を補助者に選任したか、その人が要件を満たしていること(基礎講習の修了証の写しなど)、いつから補助者としているか。この3つが分かる形にしておけば、巡回指導で説明できます。
補助者の情報は、運行管理者の期限の管理表に同じように入れておきます。立場の列を1つ足すだけで足ります。人が入れ替わったときに、誰が要件を満たしているかがその場で分かります。
指導と監督も、運行管理者の業務に入ります。補助者が行った点呼の内容を確かめ、必要があれば直す。任せきりにしないというのが、制度上の前提です。
補助者を置いても解決しないこと
補助者を置くと、点呼の時間の問題はかなり楽になります。ただし、解決しないこともあります。
1つは、運行管理者が最終的に判断する部分です。運行の可否、乗務時間の管理、指導監督の実施。これらは補助者に移せません。運行管理者の仕事の量そのものは、大きくは減りません。
もう1つは、必要な運行管理者の人数です。営業所が保有する事業用自動車の数によって必要な人数が定められており、補助者を置いても、この人数は減りません。車両が増えたら運行管理者を増やすことになります。
補助者は、あくまで時間帯を埋めるための仕組みです。人数の要件を満たすための仕組みではないという点を押さえておくと、体制を考えるときに間違えません。
もう1つ、補助者を置いたことで起きやすいのが、運行管理者が現場を見なくなることです。点呼を任せきりにすると、運転者の様子を直接見る機会が減ります。月に何回かは自分で立つ、という形にしておくと、記録には出てこない変化に気づけます。
体制を作る順番
1人しか運行管理者がいない事業所が体制を作るなら、順番は次のようになります。
1つ目は、補助者を1人作ることです。基礎講習を受けさせれば、数日で要件を満たせます。これで点呼の時間帯の問題が大きく減ります。
2つ目は、その補助者に実務を積んでもらうことです。1年の実務の経験があれば、運行管理者試験を受けられます。基礎講習は既に受けているので、どちらの経路でも受験できます。
3つ目は、試験を受けてもらうことです。合格すれば、運行管理者が2人になります。1人が辞めても営業所が止まりません。
この順番だと、最初の数日で効果が出て、1年から2年かけて体制が固まります。いきなり試験から始めると、合格するまでのあいだ何も変わりません。
補助者に渡す1枚
補助者に任せるときは、口頭の説明だけでは足りません。点呼で何を確認し、どこで運行管理者に連絡するかを1枚にまとめて渡します。
書くのは4つです。点呼で確認する項目、記録に書く項目、運行管理者へ連絡する場面、連絡先。確認する項目は、酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足の状況、日常点検の実施、運行の経路や注意点など、点呼の内容として定められているものをそのまま並べます。
連絡する場面は、具体的に書きます。検知器が反応した、体調が悪いと言われた、日常点検で異常があった、車両が間に合わない。この4つを書いておけば、判断に迷う場面がほとんど無くなります。
紙は点呼の場所に置きます。事務所の奥に置くと、早朝には見られません。記録簿と同じ場所にしておくと、書きながら確かめられます。
内容は、最初の1か月で見直します。実際に立ってみると、書いていない場面が必ず出てきます。補助者から出た質問を、そのまま紙に足していく形にすると、2か月目には使える1枚になります。
まとめ
運行管理者の補助者は、資格者証を持っているか、基礎講習を修了していることが要件です。人手が足りないからといって、要件を満たさない人に点呼を任せることはできません。
補助者が行える点呼は、営業所の点呼の総回数の3分の2までとされています。3分の1以上は運行管理者自身が行います。数えられるように、点呼記録簿の「点呼を行った人」の欄を必ず埋めます。
運行の可否を判断するのは運行管理者です。補助者は報告して指示を受ける形になるため、報告の経路を決めておきます。
補助者を置いても、必要な運行管理者の人数は減りません。時間帯を埋める仕組みであって、人数の要件を満たす仕組みではありません。自社の体制で判断に迷う点は、所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 補助者は何人まで置けますか。 A. 人数の上限が定められているわけではありません。ただし、点呼の総回数の3分の2という制限は営業所全体で見るため、補助者を増やしても運行管理者が行う回数は減りません。時間帯を埋める目的で必要な人数を置く形になります。
Q. 補助者に定期的な講習は必要ですか。 A. 選任されている運行管理者に求められる定期的な講習とは別の扱いになります。ただし、基礎講習の内容は年月が経つと古くなるため、一般講習を受けさせている事業所もあります。
Q. 運転者を補助者にできますか。 A. 要件を満たしていれば取れる形です。ただし、点呼の時間に事業所にいる必要があるため、長距離に出る運転者では実際に回りません。自分自身への点呼を自分で行うことはできない点にも注意します。
Q. 補助者が行った点呼で、運転者に異常があった場合はどうしますか。 A. 運行管理者に報告し、指示を受けます。補助者が単独で乗務の可否を判断することはできません。夜間や早朝で運行管理者が不在の場合も、電話で連絡を取る形にしておきます。
Q. 補助者の選任に届出は要りますか。 A. 運行管理者の選任のような届出が求められるわけではありません。ただし、社内で誰を補助者としているか、要件を満たしているかを示せる形にしておきます。巡回指導では、基礎講習の修了証の写しを見せることになります。
Q. 点呼の3分の2という割合は、どの期間で見ますか。 A. 期間の取り方は事業所の運用によりますが、月ごとに数えておくと管理しやすくなります。年で均すと、月によっては3分の2を超えていることが見えなくなります。月ごとの集計を残しておくと説明もしやすくなります。
Q. 基礎講習の費用は会社が負担しますか。 A. 業務に必要な要件として受けさせるものなので、費用と時間を会社が負担する形が一般的です。就業時間内に受けられるようにしておくと、予定が付けやすくなります。
Q. 補助者が辞めた場合、すぐに代わりが要りますか。 A. 補助者は法令上の必置の役職ではないため、いないこと自体が違反になるわけではありません。ただし、点呼を運行管理者が全部行う形に戻るため、運行の時間帯によっては回らなくなります。複数の補助者を作っておくと途切れません。
Q. 補助者が行った点呼も、点呼記録簿は同じ様式でよいですか。 A. 同じ様式で足ります。点呼を行った人の欄に補助者の氏名を書き、運行管理者に報告したことが分かる形にしておきます。様式を分けると、総回数の集計がしにくくなります。
Q. 補助者を運行管理者に昇格させる場合、何が要りますか。 A. 運行管理者試験に合格して資格者証の交付を受けるか、一定の実務の経験と講習の要件を満たす経路があります。基礎講習を既に修了していれば、実務の経験が1年に満たなくても受験できます。
Q. 補助者が点呼を行った日の記録は、運行管理者が確認した証拠まで要りますか。 A. 補助者は運行管理者の指導と監督のもとで業務を行う形なので、確認した記録があると説明しやすくなります。記録簿に確認欄を1つ設けて、運行管理者が目を通した日に印を付ける運用にしている事業所があります。
Q. 補助者を置けば、運行管理者は毎日出社しなくてよいですか。 A. 点呼の3分の1以上は運行管理者自身が行う必要があるため、出社しない日が続く形は取れません。運行の可否の判断も運行管理者が行うため、連絡が取れる状態は常に必要になります。