荷役作業の時間を記録する|書く項目と使い方
目次
運転者が荷物を積んだり降ろしたりしている時間は、運転している時間と同じように拘束時間に入ります。ところが、この時間を記録していない事業所が多くあります。記録が無いと、拘束時間の管理もできず、運賃の交渉の材料にもなりません。
この記事では、荷役作業の時間を、記録が求められる場面、書く項目、荷待ちとの違い、集計して使う方法、荷主との話に持っていく形の順に整理します。記録が求められる範囲と条件は事業の形で変わります。自分の事業所に何が適用されるかは、所轄の運輸支局に確認してください。
結論:運転していない時間も、拘束時間に入る
運転者の拘束時間は、ハンドルを握っている時間だけではありません。
入るのは3つです。
1つ目は、運転している時間です。
2つ目は、荷待ちの時間です。荷物を積むか降ろすために待っている時間。
3つ目は、荷役の作業の時間です。積み込み、荷降ろし、仕分け、検品。
2つ目と3つ目が記録されていないと、拘束時間の管理ができません。運転の時間だけ見て「収まっている」と思っていても、実際には超えていることがあります。記録から始めてください。
記録が求められる場面
一定の条件にあたる場合、荷待ちや荷役の時間を記録することが求められています。
押さえるのは4つです。
1つ目は、対象になる車両です。車両総重量や最大積載量の条件があります。
2つ目は、対象になる作業です。荷待ち、荷役、附帯の作業。
3つ目は、記録する内容です。発生した日時と場所、時間。
4つ目は、保存の期間です。定められた期間、保存します。
条件や範囲は制度の見直しで変わります。自分の事業所が対象かどうかは、所轄の運輸支局に確かめてください。対象でなくても、記録を取る価値はあります。
書く項目
記録は、運転日報の中に欄を作る形が使いやすくなります。
書くのは5つです。
1つ目は、日付と運転者です。
2つ目は、場所です。荷主の名称と、現場の名前。
3つ目は、到着と出発の時刻です。
4つ目は、作業の内容です。荷待ちか、積み込みか、荷降ろしか、附帯の作業か。
5つ目は、作業の開始と終了の時刻です。
3つ目と5つ目を分けて書くことが大事です。到着してから作業が始まるまでが荷待ち、作業が始まってから終わるまでが荷役です。分けて書けば、どちらが長いかが分かります。
荷待ちと荷役を分ける
同じ「現場で止まっている時間」でも、中身が違います。
違うのは4つです。
1つ目は、何をしているかです。荷待ちは待っているだけ、荷役は作業しています。
2つ目は、責任の所在です。荷待ちは相手の都合で発生することが多く、荷役は誰がやるかの取り決めで決まります。
3つ目は、減らし方です。荷待ちは予約や時間の調整で減らせ、荷役は作業の分担を変えることで減らせます。
4つ目は、対価の考え方です。待機料と、荷役の作業の料金は別に立てられます。
4つ目のために、記録を分けます。「現場で3時間かかりました」では交渉できません。「荷待ち2時間、荷役1時間」と分けて言えると、どちらの話をするかが決まります。
集計して使う
記録は、溜めて集計すると使えます。
集計するのは4つです。
1つ目は、荷主ごとの平均です。どの荷主の現場が長いか。
2つ目は、現場ごとの平均です。同じ荷主でも、現場によって違います。
3つ目は、時間帯による差です。朝いちばんと午後で違うことがあります。
4つ目は、運転者ごとの差です。同じ現場でも人によって違うなら、やり方に差があります。
1つ目と2つ目を月ごとに出してください。表にすると、どこを直せばいちばん効くかが一目で分かります。全部の現場を改善するのは無理でも、いちばん長い1か所から始められます。
荷主との話に持っていく
集計した数字は、荷主との話の材料になります。
持っていくのは4つです。
1つ目は、その現場の平均の時間です。月ごとの推移も添えます。
2つ目は、他の現場との比較です。「他社では30分です」。
3つ目は、影響です。待った分、次の運行が遅れる。拘束時間が超える。
4つ目は、提案です。時間を分けて予約する、フォークリフトを貸してもらう、着時刻を変える。
4つ目を必ず添えてください。「長いので何とかしてください」だけでは動きません。相手ができることを具体に示すと、話が進みます。予約の仕組みを入れるだけで解決することがあります。
拘束時間の管理に使う
荷役の時間は、改善基準告示で定められた拘束時間の一部です。
見るのは4つです。
1つ目は、1日の拘束時間です。運転、荷待ち、荷役を足した時間。
2つ目は、1か月の拘束時間です。
3つ目は、超えそうな運行の見つけ方です。荷役が長い現場を含む運行。
4つ目は、超えたときの記録です。理由と対応。
3つ目が配車で効きます。「この現場は平均2時間かかる」と分かっていれば、その日の他の運行を減らす判断ができます。当日に超えてから気づくのでは遅すぎます。
運転者に記録してもらう
記録を取るのは運転者です。負担が大きいと続きません。
工夫は4つです。
1つ目は、書く項目を絞ることです。到着、作業開始、作業終了、出発の4つの時刻。
2つ目は、運転日報の中に欄を作ることです。別の紙にしない。
3つ目は、選択式にすることです。作業の内容は丸で囲む形に。
4つ目は、何に使うかを伝えることです。運賃の交渉と、拘束時間の管理に使うと伝えると、書く意味が伝わります。
4つ目が続くかどうかを決めます。「書かされている」と感じていると、あとからまとめて書く形になります。記録を使って待機料が取れたという結果が出ると、書き方が変わります。
記録から改善の順番を決める
集計した数字は、どこから手を付けるかを決めるために使います。
決め方は4つです。
1つ目は、時間の長さです。平均がいちばん長い現場。
2つ目は、件数の多さです。時間は短くても、回数が多ければ合計は大きくなります。
3つ目は、直せそうかどうかです。相手が話を聞いてくれる関係か。
4つ目は、拘束時間への影響です。その現場のせいで超えている運行があるか。
1つ目と2つ目を掛け算してください。「2時間 × 月4回」より「30分 × 月40回」のほうが合計は大きくなります。平均だけを見ると、回数の多い現場を見落とします。
荷主の側にも仕組みがある
荷待ちや荷役の負担については、荷主の側にも取り組みが求められる仕組みが整ってきています。
知っておくのは4つです。
1つ目は、荷主に対する要請や勧告の仕組みがあることです。
2つ目は、荷主の側でも計画や責任者を置く仕組みが進んでいることです。
3つ目は、相談できる窓口があることです。
4つ目は、制度が変わり続けていることです。
1つ目と3つ目を知っておくと、話し方が変わります。「お願いする」だけでなく、制度として双方が取り組む話として持っていけます。最新の扱いは、所轄の運輸支局や、トラック協会などの窓口に確かめてください。
記録の様式を運転日報と一体にする
荷役の記録を別の紙にすると、書かれません。運転日報の中に組み込みます。
組み込むのは4つです。
1つ目は、行を増やすことです。立ち寄り先ごとに1行。
2つ目は、時刻の欄を4つにすることです。到着、作業開始、作業終了、出発。
3つ目は、作業の内容を選択式にすることです。荷待ち、積み込み、荷降ろし、附帯。
4つ目は、備考の欄を1つ置くことです。待たされた理由など。
2つ目が核心です。時刻が2つ(到着と出発)しかないと、荷待ちと荷役が分かれません。4つにするだけで、集計できる記録になります。運転者の手間は、数字を2つ増やすだけです。
拘束時間の集計に組み込む
荷役の記録は、拘束時間の集計に直接つながります。別々に管理しないでください。
つなげるのは4つです。
1つ目は、1日の合計です。出庫から帰庫までの時間に、すべてが含まれます。
2つ目は、月の合計です。日ごとの拘束時間を足します。
3つ目は、超えそうな人の見つけ方です。月の半ばで、ペースを見ます。
4つ目は、次の月の配車への反映です。
3つ目を月の半ばにやってください。月末に気づいても、もう調整できません。15日の時点で月の合計を見て、超えそうな人の運行を減らす。この1回の確認で、月末の無理が消えます。
まとめ
荷役作業の時間は、運転していなくても拘束時間に入ります。
- 拘束時間は、運転・荷待ち・荷役の3つを足したもの
- 一定の条件にあたる場合、荷待ちや荷役の時間の記録が求められる
- 到着と出発、作業の開始と終了を分けて書くと、荷待ちと荷役が分かれる
- 荷主ごと現場ごとに集計すると、いちばん長い1か所が見える
- 荷主には、数字と比較と提案をセットで持っていく
記録が求められる範囲と条件は事業の形で変わります。自分の事業所に何が適用されるかは、所轄の運輸支局に確認してください。
よくある質問
Q. 荷役の時間も拘束時間に入りますか。 A. 入ります。運転していない時間でも、事業者の指揮のもとにある時間は拘束時間です。運転の時間だけ見て「収まっている」と思っていても、実際には超えていることがあります。
Q. 記録はどの車両が対象ですか。 A. 車両総重量や最大積載量の条件があります。制度の見直しで変わることがあるので、所轄の運輸支局に確かめてください。対象でなくても、記録を取る価値はあります。
Q. 荷待ちと荷役は、分けて書く必要がありますか。 A. 分けてください。待機料と、荷役の作業の料金は別に立てられます。「現場で3時間」では交渉できませんが、「荷待ち2時間、荷役1時間」なら、どちらの話をするかが決まります。
Q. 運転者が書いてくれません。 A. 書く項目を絞り、運転日報の中に欄を作り、選択式にしてください。何に使うかを伝えることも大事です。記録を使って待機料が取れた結果が出ると、書き方が変わります。
Q. 集計は誰がやりますか。 A. 運行管理者か事務の担当です。月に1回、荷主ごと現場ごとの平均を出すだけで足ります。表にすると、どこを直せばいちばん効くかが一目で分かります。
Q. 荷主に何を持っていきますか。 A. その現場の平均の時間、他の現場との比較、影響、提案の4つです。提案を必ず添えてください。「長いので何とかしてください」だけでは動きません。
Q. 提案には何がありますか。 A. 時間を分けて予約する、フォークリフトを貸してもらう、着時刻を変える、荷役の分担を変える。相手ができることを具体に示すと話が進みます。
Q. 荷役を運転者がやるのは当たり前ですか。 A. 契約の内容によります。運送そのものと、荷役の作業は別として扱えます。誰が行うかを取り決めで決めて、運転者が行うなら対価の話をしてください。
Q. 記録は何年保存しますか。 A. 定められた期間です。所轄の運輸支局に確かめてください。集計した表は、交渉に使うために別に残しておくと役に立ちます。
Q. 拘束時間が超えそうなとき、どうしますか。 A. 配車の段階で気づけるようにしてください。「この現場は平均2時間かかる」と分かっていれば、その日の他の運行を減らせます。当日に超えてから気づくのでは遅すぎます。
Q. 同じ現場でも、運転者によって時間が違います。 A. やり方に差がある可能性があります。早い人のやり方を聞いて共有してください。ただし、急がせる方向の指導にはしないでください。安全が先です。
Q. 附帯の作業とは何ですか。 A. 仕分け、検品、棚入れ、ラベル貼りなど、運送そのもの以外の作業です。契約に入っているかを確かめてください。入っていないなら、対価の話ができます。
Q. どの現場から改善しますか。 A. 時間の長さと件数を掛け算してください。「2時間 × 月4回」より「30分 × 月40回」のほうが合計は大きくなります。平均だけを見ると、回数の多い現場を見落とします。
Q. 荷主が話を聞いてくれません。 A. 荷主の側にも取り組みが求められる仕組みが整ってきています。制度として双方が取り組む話として持っていってください。相談できる窓口もあるので、所轄の運輸支局やトラック協会に確かめてください。
Q. 記録の様式は、どこを直せばよいですか。 A. 時刻の欄を4つ(到着、作業開始、作業終了、出発)にしてください。2つしかないと、荷待ちと荷役が分かれません。運転者の手間は、数字を2つ増やすだけです。
Q. デジタル式運行記録計の記録で代えられますか。 A. 停車の時間は分かりますが、待っていたのか作業していたのかは分かりません。作業の内容は運転者が書く必要があります。両方を突き合わせると、記録の確かさが上がります。
Q. 拘束時間の集計は、いつやりますか。 A. 月の半ばに1回、途中のペースを見てください。月末に気づいても調整できません。15日の時点で超えそうな人が分かれば、後半の運行を減らせます。
Q. 荷役の時間を減らす方法はありますか。 A. 荷主との分担を変える、機材を借りる、着時刻を変える。記録が無いと、どれが効くかを判断できません。まず現場ごとの平均を出すところから始めてください。
Q. 荷待ちの記録を、荷主に見せてもよいですか。 A. 見せて構いません。事実の記録なので、話の材料になります。ただし他の荷主の名前が出ない形にしてください。比較を示すときは「他社では」という言い方にします。