過積載を防ぐ|責任の範囲と、荷主に言えること
目次
積めるだけ積んでほしいと言われる。断ると次の仕事が来なくなる気がする。過積載は、運転者だけの問題ではありません。事業者にも、荷主にも責任が及ぶ仕組みになっています。誰が何を問われるかを知っておくと、断る根拠ができます。
この記事では、過積載を、何が問題になるか、責任の範囲、荷主に言えること、防ぐ仕組み、記録の残し方の順に整理します。制限の値と責任の範囲は車両と道路で変わります。自分の車両に何が適用されるかは、所轄の運輸支局と道路管理者に確認してください。
結論:運転者だけでなく、事業者と荷主も問われる
過積載は、運転者が捕まって終わりではありません。関わる人が広がります。
問われるのは3つの立場です。
1つ目は、運転者です。違反として処理されます。
2つ目は、事業者です。指示や黙認があれば、事業者としての責任が問われます。行政処分の対象にもなります。
3つ目は、荷主です。過積載になることを知りながら依頼した場合、荷主にも要請や勧告が及ぶ仕組みがあるとされています。
3つ目を知らない事業者が多くあります。「荷主に言われたら断れない」と思い込んでいますが、制度としては荷主の側にも責任が及ぶ形になっています。知っておくと、話し方が変わります。
何が問題になるか
過積載が問題になるのは、取り締まりの対象だからだけではありません。
起きるのは4つです。
1つ目は、止まれなくなることです。ブレーキの距離が伸びます。
2つ目は、車が傷むことです。タイヤ、ブレーキ、サスペンション。整備の費用が増えます。
3つ目は、道路が傷むことです。橋や舗装への負担。
4つ目は、事故の責任が重くなることです。過積載の状態で事故を起こすと、扱いが変わります。
2つ目は、事業者にとっていちばん身近な損です。過積載を続けている車は、タイヤとブレーキの交換が明らかに早くなります。整備の記録を並べると、その車だけ費用が高いことが分かります。
重さの見方
積載の制限は、1つの数字ではありません。
見るのは4つです。
1つ目は、最大積載量です。車検証に書かれています。
2つ目は、車両総重量です。車体と乗員と荷物を合わせた重さ。
3つ目は、軸重です。1つの車軸にかかる重さ。総重量が範囲内でも、軸重で超えることがあります。
4つ目は、道路の制限です。通る道路によって、通行できる重さが違います。
3つ目が見落とされます。荷物を前に寄せて積むと、総重量は範囲内でも前軸で超えることがあります。積み方の指示まで含めて考えてください。
荷主に言えること
断りにくい場面で、言い方の材料を持っておきます。
伝えるのは4つです。
1つ目は、法令の話として伝えることです。「うちの方針」ではなく、制限があるという事実として。
2つ目は、荷主の側にも責任が及ぶことです。知りながらの依頼は、荷主にも要請や勧告が及ぶ仕組みがあります。
3つ目は、代わりの案を出すことです。車を増やす、2回に分ける、大きい車に替える。断るだけにしないと話が進みます。
4つ目は、事前に伝えておくことです。当日に断るより、契約や見積もりの段階で積める量を示すほうが通ります。
4つ目がいちばん効きます。積み込みの現場で断ると、その場の力関係の話になります。見積もりのときに「この車で運べるのは◯トンまで」と書いておくと、当日に揉めません。
防ぐ仕組み
現場の判断に任せると、その場の空気で積んでしまいます。仕組みで止めます。
作るのは4つです。
1つ目は、車両ごとの積載量の一覧です。運転席と事務所に貼ります。
2つ目は、配車の段階での確認です。荷物の量と車の組み合わせを、配車する人が見ます。
3つ目は、計量の仕組みです。荷主側の計量器の値を確かめる、自社で計る。
4つ目は、超えたときの手順です。誰に連絡し、誰が判断するか。
2つ目が本命です。積み込みの現場で止めるのは難しく、配車の段階なら机の上で判断できます。荷物の量が分かった時点で、車の組み合わせを確かめる流れにしてください。
運転者への伝え方
運転者に「積むな」と言うだけでは、板挟みにします。
伝えるのは4つです。
1つ目は、断ってよいことです。会社として断ることを認めます。
2つ目は、断ったあとの連絡先です。その場で運行管理者に電話する。
3つ目は、断ったことで不利益が無いことです。
4つ目は、記録を残すことです。誰に、何と言われたか。
3つ目を明言してください。「断ったら仕事が減る」と思われていると、運転者は黙って積みます。断った日の記録を残して、会社として対応した事実が見えると、次から断れるようになります。
記録に残すこと
過積載を防ぐ取り組みは、記録があると効きます。
残すのは4つです。
1つ目は、車両ごとの積載量の一覧です。
2つ目は、配車のときの確認の記録です。簡単で構いません。
3つ目は、断った場面の記録です。日時、荷主、内容、対応。
4つ目は、指導と監督の記録です。運転者への教育の中で扱った内容。
3つ目を残しておくと、荷主との話の材料になります。「何月何日に、この量でお願いされましたが、お断りしました」という事実が残ります。繰り返し起きる荷主が分かると、契約の条件を見直す判断ができます。
特殊車両の許可との関係
一定の大きさや重さを超える車両は、通行の許可が要ります。過積載とは別の話ですが、重なります。
分かれるのは3つです。
1つ目は、車両そのものが大きい場合です。許可を受けて通行します。
2つ目は、積んだ状態で超える場合です。分割できない荷物を積む場合など。
3つ目は、単に積みすぎている場合です。これは過積載で、許可では解決しません。
3つ目を1つ目や2つ目と混同しないでください。「許可を取れば積める」という話にはなりません。分割できる荷物を積みすぎている場合は、許可の対象ではありません。判断に迷うものは、道路管理者に確かめてください。
計量の仕組みを持つ
「積みすぎかどうか」を、目で見て判断するのは無理です。数字を取る仕組みが要ります。
方法は4つです。
1つ目は、荷主の計量器を使うことです。積み込みの場所に計量器があるなら、値をもらいます。伝票に書いてもらうと記録になります。
2つ目は、公的な計量所を使うことです。経路の途中にある計量の設備。
3つ目は、荷物の量から計算することです。単位の重さ × 個数。確実ではありませんが、目安になります。
4つ目は、車載の計測装置です。軸重を測れる装置が付いている車両があります。
1つ目がいちばん現実的です。荷主の施設に計量器があることは多く、伝票に重さを書いてもらうだけで記録になります。書いてもらえるかを、契約のときに頼んでおいてください。
教育の中でどう扱うか
過積載は、指導と監督の記録に残る形で扱います。説教にしないことがこつです。
扱い方は4つです。
1つ目は、数字で見せることです。制動距離がどれだけ伸びるか。
2つ目は、責任の範囲を伝えることです。運転者だけの問題ではないこと。
3つ目は、断り方を練習することです。実際の場面を想定して、何と言うかを決めます。
4つ目は、断った事例を共有することです。「断って問題にならなかった」という実例がいちばん効きます。
4つ目を集めてください。1件でも「断ったが取引は続いた」という事例があると、次から断りやすくなります。会社として断った経緯を記録に残し、教育の場で共有してください。
荷主との契約に書いておく
過積載を断る根拠を、契約や見積もりの書面に入れておきます。当日の交渉が要らなくなります。
書くのは4つです。
1つ目は、車両ごとの積める量です。「◯トン車、最大積載量◯トン」。
2つ目は、超える場合の扱いです。車を増やす、便を分ける。そのときの費用も書きます。
3つ目は、計量の方法です。誰が、どこで計るか。
4つ目は、断る場合があることです。制限を超える依頼はお受けできない、と一文入れます。
4つ目の一文が効きます。書いてあれば、当日に断っても「聞いていない」とはなりません。見積書の備考欄に1行入れるだけで足ります。新しい取引を始めるときに、必ず入れる形にしてください。
繰り返し起きる相手を見つける
断った記録を溜めると、特定の荷主に偏っていることが分かります。
見るのは4つです。
1つ目は、荷主ごとの件数です。
2つ目は、頼まれる量の大きさです。少し超える程度か、大きく超えるか。
3つ目は、頼まれる時間帯です。締め切りが迫る時間に集中していないか。
4つ目は、断ったあとの対応です。受け入れてもらえたか、揉めたか。
1つ目と2つ目で、話しに行く相手が決まります。「毎回少しずつ超える」荷主とは、車のサイズか便の組み方を見直す話ができます。感情の話ではなく、数字の話として持っていけます。
まとめ
過積載は、運転者だけの問題ではありません。
- 運転者、事業者、荷主のそれぞれに責任が及ぶ仕組みになっている
- 見るのは、最大積載量・車両総重量・軸重・道路の制限の4つ。軸重が見落とされる
- 荷主には、法令として伝え、代わりの案を出し、見積もりの段階で積める量を示す
- 止めるのは積み込みの現場ではなく、配車の段階
- 運転者には「断ってよい」ことと、断っても不利益が無いことを明言する
制限の値と責任の範囲は車両と道路で変わります。自分の車両に何が適用されるかは、所轄の運輸支局と道路管理者に確認してください。
よくある質問
Q. 荷主に言われたら断れません。 A. 制度としては、荷主の側にも責任が及ぶ仕組みがあるとされています。「うちの方針」ではなく、制限があるという事実として伝えてください。代わりの案を一緒に出すと、話が進みます。
Q. 最大積載量を少し超えるくらいなら大丈夫ですか。 A. 超えれば違反です。軸重で超えている場合もあります。総重量が範囲内でも、荷物の寄せ方で1つの軸に集中することがあります。積み方まで含めて確かめてください。
Q. 軸重はどうやって分かりますか。 A. 計量器で軸ごとに計る方法があります。荷主の施設に計量器がある場合は、値を確かめてください。総重量だけ見て安心しないことです。
Q. 積み込みの現場で断ると揉めます。 A. 配車の段階で止めてください。荷物の量が分かった時点で、車の組み合わせを確かめる流れにします。現場で断るのは、いちばん難しい場面です。
Q. 運転者が黙って積んでしまいます。 A. 断ってよいことと、断っても不利益が無いことを明言してください。断った日の記録を残して、会社として対応した事実が見えると、次から断れるようになります。
Q. 過積載で捕まると、事業者はどうなりますか。 A. 指示や黙認があれば、事業者としての責任が問われます。行政処分の対象にもなります。扱いは所轄の運輸支局に確かめてください。
Q. 特殊車両の通行許可を取れば積めますか。 A. 別の話です。許可は、車両そのものが大きい場合や、分割できない荷物を運ぶ場合のものです。分割できる荷物を積みすぎている場合は、許可の対象ではありません。
Q. 車両ごとの積載量を、どこに貼りますか。 A. 運転席と事務所です。配車する人がすぐ見られる場所に貼ってください。車種が複数ある事業所ほど、一覧が効きます。
Q. 断った記録は、何のために残しますか。 A. 荷主との話の材料になります。繰り返し起きる荷主が分かると、契約の条件を見直す判断ができます。日時、荷主、内容、対応を書いてください。
Q. 過積載を続けると、車にどう影響しますか。 A. タイヤ、ブレーキ、サスペンションの傷みが早くなります。整備の記録を並べると、その車だけ費用が高いことが分かります。安全の話と費用の話の両方で説明できます。
Q. 教育ではどう扱いますか。 A. 指導と監督の記録に残る形で扱ってください。制動距離が伸びること、責任の範囲、断ってよいことの3つを伝えます。実際にあった場面を材料にすると伝わります。
Q. 荷主に伝えるのは、いつがよいですか。 A. 契約や見積もりの段階です。「この車で運べるのは◯トンまで」と書いておくと、当日に揉めません。積み込みの現場で言うと、その場の力関係の話になります。
Q. 荷主が計量の値を教えてくれません。 A. 契約のときに、伝票に重さを書いてもらうよう頼んでください。当日に頼むと断られることがあります。書いてもらえない場合は、公的な計量所を使うか、荷物の量から計算します。
Q. 教育では何を伝えますか。 A. 制動距離が伸びること、責任の範囲、断り方の3つです。「断って問題にならなかった」という実例を共有すると、いちばん効きます。説教にしないでください。
Q. 契約書に書く一文は、どんな形にしますか。 A. 「法令の制限を超える積載となる依頼はお受けできません」という一文で足ります。見積書の備考欄でも構いません。書いてあれば、当日に断っても「聞いていない」とはなりません。
Q. 偏った積み方でも問題になりますか。 A. なります。総重量が範囲内でも、荷物を寄せると1つの軸で超えることがあります。積み方の指示まで含めて考えてください。運転者にも、前に寄せすぎない積み方を伝えます。
Q. 断った記録は、どのくらい残しますか。 A. 少なくとも契約の期間中は残してください。荷主ごとに件数を数えると、話しに行く相手が決まります。感情の話ではなく、数字の話として持っていけます。