体制と期限解説2026.03.10 公開JK-05

行政処分とは?違反点数と車両停止のしくみを整理

目次

監査が入ると処分がある、という話は聞く。けれど、どの違反でどれくらいの処分になるのかが分からない。点数が積み上がると何が起きるのかも、はっきりしないまま日々が過ぎていく。

この記事では、行政処分を、種類・違反点数・積み上がった先の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の違反がどこに効いてくるのかが見える状態を目指します。

監査の前段にある巡回指導のほうから確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 巡回指導とは

結論:行政処分は3段階。点数は3年間積み上がる

行政処分とは、法令違反が確認された事業者に対して、国土交通省の地方運輸局などが行う処分のことです。巡回指導とは別で、こちらは行政が行います。

処分の重さは、軽いほうから勧告や警告、車両の使用停止、事業の停止や許可の取消しという段階になっています。

ポイントはここです。違反には点数が付き、一定の期間にわたって積み上がります。1件ごとの処分だけを見ていると、積み上がった先で何が起きるのかが見えません。点数は事業者ごと、営業所ごとに管理され、過去3年間の累計で見るとされています。

処分は3段階で重くなる勧告・警告いちばん軽い段車両の使用停止日車で示される事業停止・取消し営業そのものが止まる
勧告・車両使用停止・事業停止と許可取消しという3段階を並べた層の図

つまり、軽い処分でも3年は残ります。同じ営業所で毎年少しずつ指摘を受けていると、3年目に大きな処分が出る形になります。

車両の使用停止は「日車」で数える

車両の使用停止は、日車という単位で示されます。何台を何日止めるか、を掛け合わせた数え方です。

たとえば20日車なら、1台を20日止める、2台を10日止める、といった組み合わせになります。どの車両を止めるかは事業者が選べる形が一般的ですが、止めている間はその車両を使えません。

20日車の組み合わせ方1台を20日止める1台20日止めている間はその車両を使えない2台を10日止める2台10日掛け合わせて20日車。どの車両を止めるかは選べる
日車の考え方を、台数と日数の組み合わせで示した図

運送の現場では、ここが直接の損失になります。1台止まれば、その便を他の車両で回すか、外注に出すことになります。20日車は、実際の運行では1か月近い影響として出てきます。

停止の期間中は、車両の前面に標章を貼り、自動車検査証を返納するといった手続きが求められる形になっています。止めているつもりで動かしていた、という形は取れません。

どの車両を止めるかを選ぶときは、保有している車両の中で使用の頻度が低いものから当てるのが実務的です。ただし、日数が長くなると、遊ばせておける車両だけでは足りなくなります。日車の数が大きい処分ほど、運行の組み替えが要ります。

点数が積み上がると、何が起きるのか

違反点数は、処分の内容に応じて付きます。一般には、車両の使用停止10日車ごとに1点といった形で換算されるとされています。

累計の点数が一定に達すると、次の段階の処分に移ります。営業所の点数が一定を超えると事業停止、さらに重い場合は許可の取消しという流れが定められています。

点数は3年で見る1年目軽い処分でも点が付く2年目前の点は残っている3年目積み上がって次の段へ3年経過古いものから落ちる毎年少しずつ指摘を受けている状態がいちばん危ない
違反点数が積み上がって次の段階へ移る流れを示した時系列の図

点数は3年間で消えていきますが、3年のあいだに新しい違反があると、そのたびに積み上がります。毎年の監査で少しずつ指摘を受けている状態が、いちばん危ない形です。

もうひとつ効いてくるのが、事業拡大の制限です。処分を受けている事業者は、一定の期間、新しい営業所の設置や車両の増車が認められない扱いになる形があります。事業を伸ばそうとしたときに、過去の処分が壁になります。

安全性優良事業所の認定にも影響します。一般にGマークと呼ばれる制度で、認定を受けていると荷主に対する説明の材料になり、行政の側でも取り扱いが変わる部分があるとされています。処分を受けていると、この認定の要件を満たせなくなることがあります。

もうひとつ、取引の面もあります。荷主が取引先を選ぶときに、安全の取り組みを条件にする動きが広がっています。処分の内容が公表される仕組みがあるため、社内の話では収まらないという性質を持っています。

点数の管理は、自社でも表を持っておくと見通しが立ちます。いつ、どの営業所で、何の違反で、何点が付いたか。3年で落ちる分がいつ落ちるかまで書いておくと、いまの累計が分かります。処分の書面を綴じておくだけでは、合計が見えません。

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実際に使える様式が必要な方へ

巡回指導の38項目を1枚で確かめられるチェック表が、商い屋の運送業向けのページにあります。この記事は処分の側の話です。

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処分が重くなる違反

同じ違反でも、内容によって重さが変わります。重くなりやすいのは、次のようなものです。

点呼の未実施。行っていない件数が多いほど重くなります。記録が無い場合は、行っていなかったものとして扱われます。

乗務時間の基準の違反。改善基準告示に反する運行が、何人について何件あったかで重さが変わります。

運行管理者の未選任。選任していない、届出をしていない、という形は書類だけで分かるため、確実に拾われます。

点検整備の未実施。日常点検や定期点検を行っていない、記録が無い、という形です。

重くなりやすい4つ違反見られ方点呼の未実施件数が多いほど重い乗務時間の基準違反何人・何件で変わる運行管理者の未選任書類だけで分かる点検整備の未実施記録が無ければ未実施
重くなりやすい4つの違反と、見られ方を並べた表

このうち、点呼と乗務時間の2つは、件数で重さが変わる性質があります。1件の見落としと、常態化している状態とでは扱いが違います。日々埋めておくことが、そのまま処分の軽重に効きます。

逆に、是正されているかどうかでも扱いが変わります。同じ違反でも、指摘を受けて直した実績があるかどうか、前回の監査で同じ指摘が出ていないかどうかで重さが動く形です。1回目より2回目のほうが重いという作りになっています。

「知らなかった」は理由になりません。運行管理者を選任し、講習を受けさせている以上、法令を知っている前提で見られます。制度が変わったときに社内へ伝える経路を決めておくことも、実務としては処分を遠ざける動きになります。

監査はどこから始まるか

監査に入る端緒は、いくつかあるとされています。知っておくと、どこを締めておけばよいかが見えます。

1つ目は、重大な事故です。事故報告書や速報から、監査につながることがあります。

2つ目は、巡回指導の結果です。評価が低く、改善報告も出されない場合に、行政へ報告される流れがあります。

3つ目は、労働基準監督署からの通報です。改善基準告示の違反が確認された場合、運輸支局へ通報される形があるとされています。

4つ目は、利用者や従業員からの情報です。荷主や近隣からの申告、退職した従業員からの情報が端緒になることがあるとされています。

監査に入る4つの端緒重大な事故巡回指導の結果労基署からの通利用者や従業員監査
監査に入る4つの端緒を並べた関係の図

このうち、自社で手を打てるのは2つ目と3つ目です。巡回指導で指摘された項目を直し、改善報告を期限までに出す。改善基準告示に反する運行を減らす。どちらも日々の記録が材料になります。

1つ目の事故は、起きてしまえば止められません。ただし、事故のあとの動き方は変えられます。報告書を期限までに出す、社内の記録を残す、再発防止の対策を実際に回す。この3つがそろっていれば、監査で見られたときの説明が変わります。

処分を受けたあとに何をするか

処分が出たら、まず内容を正確に読みます。何の違反で、どの営業所に、何日車の停止が出たのか。車両の指定や手続きの期限があるので、書面の内容をそのまま社内に共有します。

そのうえで、原因を直します。点呼が抜けていたなら、誰がいつ行うかを決め直す。記録が空いていたなら、書く場所と時間を変える。同じ指摘が次の監査でも出ると、扱いが重くなります。

直した内容は、日付とともに記録に残します。次の監査や巡回指導で見られるのは、処分そのものより処分のあとに何が変わったかです。

車両を止めている間の運行の組み替えも、先に考えておきます。どの車両を止めるかは選べる形なので、運行への影響がいちばん小さい車両を選ぶことができます。整備の予定と重ねる、繁忙期を外すといった調整が取れます。

処分を受けたら3段で動く1内容を確かめる車両の指定と期限2原因を直す同じ指摘は次が重3記録に残す直した日付ととも
処分を受けてから、内容の確認・原因の是正・記録の3段で動く流れ

社内への伝え方も決めておきます。処分の事実だけを伝えると、「誰のせいか」という話になりがちです。伝えるのは、何が足りなかったかと、明日から何を変えるかの2つにすると、次の行動につながります。

処分を遠ざけるために日々できること

処分は、ある日突然に出るものではありません。日々の記録が薄いところから順に積み上がります。手を付ける順番を決めておくと、限られた時間で効きます。

1つ目は、点呼記録簿の空欄を無くすことです。行っていない日があるのではなく、行ったのに書いていない日が多いのが実情です。書く場所を点呼の場所に置き、その場で埋める形にします。

2つ目は、乗務時間の月の集計を出すことです。日ごとの記録があっても、月でまとめていなければ改善基準告示に反した回数は分かりません。運転者ごとに月1回、拘束時間と休息期間を集計します。

3つ目は、選任と届出をそろえることです。人が入れ替わったときに届出を出す、という流れを決めておきます。書類だけで分かる指摘なので、ここは確実に拾われます。

4つ目は、点検整備の記録です。日常点検の記録が運転日報に含まれているか、定期点検の記録が残っているかを確かめます。

この4つは、どれも新しい仕組みを入れる話ではありません。いま使っている様式を埋めきるだけで、処分につながる項目の大半が埋まります。

年に1回、38項目のチェック表で自社を見る日を決めておくと、積み上がる前に気づけます。監査が来てから直す形では、過去の分が残ったままになります。

まとめ

行政処分は、勧告や警告、車両の使用停止、事業の停止や許可の取消しという段階で重くなります。巡回指導とは別で、行政が行うものです。

車両の使用停止は日車という単位で示され、台数と日数の組み合わせで運行に効いてきます。違反には点数が付き、過去3年間の累計で見るとされています。

重くなりやすいのは、点呼の未実施、乗務時間の基準の違反、運行管理者の未選任、点検整備の未実施の4つです。点呼と乗務時間は件数で重さが変わるため、日々の記録がそのまま効きます。

監査の端緒は、重大な事故、巡回指導の結果、労働基準監督署からの通報などです。自社で手を打てるのは、巡回指導の改善と、改善基準告示の順守の2つです。処分の内容や手続きは、所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。

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実際に使える様式が必要な方へ

巡回指導の38項目を1枚で確かめられるチェック表が、商い屋の運送業向けのページにあります。処分につながる項目が先に見えます。

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よくある質問

Q. 違反点数は、会社単位ですか、営業所単位ですか。 A. 営業所ごとに管理されるのが基本の形とされています。ただし、同じ事業者の複数の営業所で違反が重なる場合の扱いは別に定められています。自社の状況については、所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。

Q. 点数は3年経てば必ず消えますか。 A. 一定の期間を経過すると消えていく形とされています。ただし、その間に新しい違反があれば積み上がるため、実際には消えないまま増えていく事業所もあります。

Q. 車両の使用停止の期間中、代わりの車両を借りてもよいですか。 A. 止めている車両を使わないことが前提です。他の車両で運行を回すこと自体は取れますが、処分の趣旨を外れる形は取れません。具体的な扱いは、処分の書面と運輸支局の案内に従います。

Q. 行政処分は公表されますか。 A. 処分の内容が公表される仕組みがあります。荷主や取引先が見られる形になるため、営業面の影響も出ます。

Q. 処分に納得できない場合、不服を申し立てられますか。 A. 行政処分に対しては、法令にもとづく不服の申立てや訴訟の手続きが用意されています。期限があるため、書面が届いた時点で期限を確かめます。手続きの詳細は、所轄の運輸支局または専門家に確かめるのが確実です。

Q. 運行管理者が資格者証の返納を命じられることはありますか。 A. 運行管理者が業務に関して法令に違反した場合に、資格者証の返納を命じられる形が定められています。会社への処分とは別に、個人に対して効く仕組みがあります。

Q. 巡回指導で指摘されただけでも、処分になりますか。 A. 巡回指導は指導と助言なので、その場で処分が出ることはありません。ただし、評価が低く改善が見られない場合に行政へ報告される流れがあり、そこから監査を経て処分につながることがあります。指摘を受けた時点で直しておくのが、いちばん確実な形です。

Q. 処分を受けた事実は、いつまで残りますか。 A. 違反点数は一定の期間で消えていく形ですが、公表された内容や社内の記録は残ります。取引先から過去の処分について聞かれることもあるため、処分のあとに何を変えたかを説明できるようにしておくと、話が前に進みます。

Q. 運行管理者が交代した直後の違反は、どちらの責任になりますか。 A. 処分は事業者に対して行われるため、担当者が交代していても営業所の点数として積み上がります。引き継ぎのときに、前任者が受けた指摘と改善の状況を書面で渡しておくと、同じ指摘を繰り返さずに済みます。