記録と台帳基礎(ピラー)2026.05.21 公開SD-05

乗務員教育とは?12項目の指導と記録の残し方

目次

毎月の安全会議はやっている。朝礼でも話している。けれど、巡回指導で「指導監督の記録はありますか」と聞かれて、出せる紙が無い。やっているのに残っていない、というのが、乗務員教育でいちばん多い形です。

この記事では、乗務員教育を、何を教えるか・いつ行うか・どう残すかの3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の年間計画をそのまま組める状態を目指します。

新人や高齢の運転者への特別な指導から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 特定の運転者への指導

結論:乗務員教育は12の項目が決まっている

乗務員教育とは、事業者が運転者に対して行う指導と監督のことです。教える内容が定められていて、記録を残して保存することまで求められているとされています。

一般には、国土交通省が定める指導監督の指針にもとづき、12の項目について指導することとされています。項目が決まっているので、何を話すかを毎回ゼロから考える必要はありません。

ポイントはここです。記録の保存期間は3年とされています。やったかどうかは記録でしか示せないため、実施と記録は同じ重さで扱うことになります。

実施と記録は同じ重さ12項目の指導内容は決まっている記録の作成誰に何を話したか3年の保存記録が無ければ未実施
12項目の指導・記録の作成・3年の保存という3つを並べた層の図

巡回指導でも監査でも、ここは書類だけで判断される項目です。毎月きちんと話していても、記録が無ければ「行っていない」と扱われます。

12の項目は、大きく4つに分けられる

12項目を並べただけでは覚えられないので、塊で見ます。分けると次の4つになります。

1つ目は、事業用自動車を運転する心構えに関する塊です。運送の社会的な使命、事業用自動車の特性、安全の意識といった内容が入ります。

2つ目は、運行の安全に関する塊です。運行の経路と道路や交通の状況、危険を予測した運転、運転者の健康管理、安全性の向上を図るための装置を備えた自動車の運転方法などです。

3つ目は、貨物の取り扱いに関する塊です。貨物の正しい積載方法、過積載の危険性が入ります。

4つ目は、悪条件と事故に関する塊です。悪条件下での運転、適性診断の結果にもとづく安全運転、交通事故に関わる運転者の生理的・心理的要因などです。

12項目は4つの塊で見る入るもの運転する心構え使命・特性・安全の意識運行の安全経路・危険予測・健康管理貨物の取り扱い積載方法・過積載悪条件と事故悪天候・適性診断・心理
12項目を4つの塊に分けて並べた表

この分け方で見ると、1年で4つの塊を回すという計画が組めます。3か月に1つの塊、1か月に1つの項目、といった割り方にすれば、毎月の話題が自動的に決まります。

年間計画を先に作る

毎月「今月は何を話そうか」と考えていると、話しやすい項目ばかりが繰り返されます。年間計画を1枚作ってしまうほうが早く、記録も整います。

作り方は簡単で、12の項目を12か月に割り当てるだけです。季節に合わせると自然になります。冬の前に悪条件下での運転、繁忙期の前に健康管理と過労、年度の初めに心構え、といった形です。

月に割り当てる年間計画の組み方4月心構えから始める7月健康管理と過労10月積載と過積載12月悪条件下での運転3月やり残しを回す季節に合わせる担当も分ける年の初めに掲示
12項目を月に割り当てる年間計画の見本

計画には、実施の予定日と、担当する人も書いておきます。運行管理者が全部を担うと、忙しい月に飛びます。整備の話は整備管理者、健康の話は総務、というように分けておくと続きます。

作った計画は、年の初めに掲示します。運転者の側も、いつ何をやるかが分かっていれば予定を空けられます。

計画を作るときに決めておきたいのが、1回あたりの長さです。12項目を1年で回すなら、1か月1項目で15分から30分が現実的です。長距離の運転者が多い事業所では、帰庫のタイミングに合わせて同じ内容を2回に分ける形にしておくと、出席率が上がります。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

指導と監督の記録の様式が、商い屋の運送業向けのページにあります。この記事は何をどう教えるかの側の話です。

この様式をひらく

記録に残す項目

記録に決まった様式はありませんが、残す内容は決まってきます。次の項目が入っていれば、後から説明できます。

実施した日時。何時から何時までかまで書きます。10分の朝礼なのか、1時間の会議なのかで、中身の見え方が変わります。

実施した場所。事業所か、現地か、オンラインか。

指導した人の氏名。誰が話したかです。

受けた運転者の氏名。署名をもらう形にしておくと、出席の証明になります。

指導の内容。12項目のどれに当たるかと、実際に話した中身です。

使った資料。配った紙があれば、1部を記録と一緒に綴じます。

記録に残す項目項目抜けるとどうなるか実施した日時時間の長さが分からない指導した人と受けた人誰が受けたか集計できない12項目のどれか全部回したか確かめられない使った資料内容を後から示せない
記録に残す項目と、抜けやすいところを並べた表

抜けやすいのは、12項目のどれに当たるかの欄です。ここが書かれていないと、12項目を全部回したかどうかを後から確かめられません。年間計画の番号をそのまま書く形にしておくと、集計が楽になります。

全員に行き渡らせる

運転者は、全員が同じ日に事業所にいるわけではありません。長距離の便に出ている人、休みの人が必ず出ます。1回の会議で全員に行き渡ることは、実際にはほとんどありません。

回し方は2つあります。同じ内容を複数回やるか、出られなかった人に個別に行うかです。どちらでも、記録に受けた人の氏名が残っていれば足ります。

出られなかった人に届ける2つ同じ内容を複数回帰庫の時間に合わせる出席率が上がる人数の多い事業所向き個別に行う録画か資料を渡す読んで署名でもよい長距離の運転者に向く
会議に出られなかった運転者へ、内容を届ける2つの回し方を並べた比較の図

年に1回、誰が何回受けたかを集計します。運転者ごとに行を作り、12項目を列にして、受けた月に印を付ける形です。空いている運転者が一目で分かります。

この表があると、巡回指導で聞かれたときにそのまま出せます。個別の記録を1枚ずつめくって説明するより、集計の1枚があるほうが早く終わります。

集計の表は、年度の途中でも見ます。半年経った時点で空いている行があるなら、そこから先で埋める計画を立て直せます。年度末に気づくと、残り1か月に全部を詰め込むことになります。

委託や傭車で入っている運転者の扱いも、先に決めておきます。自社で雇用している運転者が対象になるのが基本の形ですが、実際に自社の車両を運転させている場合は扱いが分かれます。所轄の運輸支局に、契約の形を示して確かめるのが確実です。

特定の運転者には、別に指導が要る

12項目の指導とは別に、特定の運転者に対する特別な指導が定められています。対象は3つです。

1つ目は、事故を惹起した運転者です。死者または重傷者を生じた事故を起こし、その運転者に事故の原因があるとされる場合などが対象になります。

2つ目は、初任運転者です。新たに雇い入れた運転者が対象で、実際の車両を用いた指導や、安全性の確認などが含まれます。

3つ目は、高齢運転者です。65歳以上の運転者が対象とされており、適性診断の結果にもとづく指導を行う形になります。

特定の運転者には別に指導対象指導の時期事故を惹起した運転者事故のあと初任運転者乗務を始める前高齢運転者適性診断を受けた後共通期限の管理表に入れる
特定の運転者3つと、それぞれの指導の時期を並べた表

この3つは、時期が決まっているのが12項目との違いです。初任運転者は乗務を始める前、高齢運転者は適性診断を受けた後、というように、いつまでにという条件が付きます。期限の管理表に入れておくと切らしません。

中身を「話す」から「見る」に変える

記録が残るようになっても、内容が形だけだと事故は減りません。続いている事業所がやっているのは、自社の材料を使うことです。

材料は3つあります。1つ目は、自社で起きた事故とヒヤリの記録です。どこで、どういう状況で起きたかを、場所の名前まで出して話します。一般論より、自分が通る道の話のほうが残ります。

2つ目は、運行の記録です。運行記録計の記録やドライブレコーダーの映像は、そのまま教材になります。急ブレーキが多い区間、速度が出やすい下り坂。数字と映像があると、言い方が変わります。

3つ目は、適性診断の結果です。個人の結果を全員の前で出すことはできませんが、傾向としてまとめることはできます。自社の運転者にどういう癖が多いかを話すと、自分のこととして聞かれます。

12項目のどれを扱うときも、この3つのどれかを混ぜる形にしておくと、毎年同じ話にはなりません。資料を作る手間も、既にあるものを使うぶん軽くなります。

続けるための3つの工夫

年間計画を作っても、途中で止まる事業所があります。止まる理由は、たいてい時間と人です。

1つ目の工夫は、時間を短くすることです。1時間の会議を年12回より、15分を年24回のほうが続きます。項目を細かく割って、1回で扱う量を減らします。

2つ目は、場所を選ばないことです。出られない運転者が必ず出るので、録画か資料のどちらかを必ず残します。資料を読んで署名する形でも、記録としては成立します。

3つ目は、担当を分けることです。整備の話は整備管理者、健康の話は総務、荷の積み方はベテランの運転者。運行管理者1人に寄せないのが、いちばん効きます。

年の終わりに、計画と実績を見比べます。できなかった項目があれば、翌年の計画で前に持ってきます。やり残しを翌年に持ち越さない形にしておくと、3年で同じ項目が抜け続ける事態を避けられます。

まとめ

乗務員教育は、12の項目について指導することが定められており、記録を3年間保存するとされています。実施と記録は同じ重さで扱われます。

12項目は、心構え・運行の安全・貨物の取り扱い・悪条件と事故の4つの塊に分けられます。12か月に割り当てる年間計画を先に作ると、毎月の話題が自動的に決まります。

記録には、日時・場所・指導した人・受けた人・内容・使った資料を残します。抜けやすいのは12項目のどれに当たるかの欄です。年間計画の番号を書く形にしておくと集計できます。

全員に行き渡らせるには、複数回やるか個別に行うかの2つです。年に1回、運転者ごとの受講の状況を集計しておくと、巡回指導でそのまま出せます。特定の運転者への指導は別に定められており、時期に条件が付きます。詳細は所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

指導と監督の記録の様式が、商い屋の運送業向けのページにあります。12項目の番号を書く欄が入っているので、年間の集計までつながります。

この様式をひらく

よくある質問

Q. 朝礼で話した内容も、乗務員教育の記録にできますか。 A. 内容が12項目のどれかに当たり、実施の記録が残っていれば含められます。ただし、5分の朝礼だけで1つの項目を扱ったことにするのは無理があります。時間と内容を記録に書いておけば、後から見た人が判断できます。

Q. 外部の講習を受けさせた場合も記録になりますか。 A. なります。受講の証明や資料を、記録と一緒に綴じておきます。どの項目に当たるかを1行書き添えておくと、年間の集計に入れられます。

Q. 記録の保存期間3年は、いつから数えますか。 A. 実施した日から数える形が一般的です。年度ごとにつづりを分けて、表紙に年度と保存の期限を書いておくと間違えません。

Q. 運転者が署名を嫌がる場合はどうしますか。 A. 署名は出席を示す方法の1つで、他の方法でも構いません。出席者の名簿を作って指導した人が確認する、点呼記録と突き合わせるといった形もあります。出席が確かめられる形であればよいので、社内で1つに決めます。

Q. オンラインで行った指導も記録になりますか。 A. なります。実施の方法として「オンライン」と書き、参加した運転者の氏名を残します。録画を残しておくと、出られなかった人への個別の指導にもそのまま使えます。

Q. 12項目を1年で全部やる必要がありますか。 A. 指針では継続的かつ計画的に行うこととされています。1年で全部を回す形が組みやすいので、年間計画をその単位で作る事業所が多くあります。自社の運行の形に合わせて、期間の取り方は決められます。

Q. 指導する人に資格は要りますか。 A. 12項目の指導について、指導する人の資格が定められているわけではありません。運行管理者が行うのが一般的ですが、内容によっては整備管理者や外部の講師でもかまいません。誰が指導したかを記録に残すことが求められます。

Q. 記録を紙ではなくデータで残してもよいですか。 A. 残せます。3年間保存できること、誰がいつ受けたかが分かることが確かめられる形にしておきます。署名の代わりに、受講した運転者が自分で入力する仕組みにしている事業所もあります。

Q. 事故を起こした運転者への特別な指導は、12項目の指導と兼ねられますか。 A. 別に定められているものなので、兼ねる形は取りにくくなります。12項目の指導とは別に、内容と時間を分けて記録します。同じ日に続けて行うことはできますが、記録は分けて書きます。

Q. 12項目の指導を、動画を見せるだけで済ませてもよいですか。 A. 方法が限定されているわけではないため、動画を使うこと自体は取れます。ただし、見せただけで終わると、自社の運行に引き付けた話になりません。動画のあとに、自社で起きた事例を1つ話す形にすると、内容が残ります。記録には、使った動画の題名も書いておきます。