遠隔点呼とは?IT点呼との違いと必要な機器
目次
営業所が離れていて、夜間に運行管理者を各所に置くのが難しい。そういう事業所のために置かれたのが遠隔点呼です。IT点呼とは別の仕組みで、使える範囲も、必要な機器も違います。混同したまま準備を進めると、届出の段階で止まります。
この記事では、遠隔点呼を、IT点呼との違い、必要な機器と設備、使える範囲、手続き、運用で気をつけることの順に整理します。要件と手続きは制度の見直しで変わります。最新の扱いは所轄の運輸支局に確認してください。
結論:機器で対面と同等とみなす点呼。IT点呼より広く使える
遠隔点呼は、カメラやモニターなどの機器を使って、離れた場所から行う点呼です。一定の要件を満たせば、対面の点呼と同等に扱われます。
押さえるのは3つです。
1つ目は、機器の要件があることです。運転者の顔色や声の調子が分かる映像と音声、アルコール検知器との連動、なりすましを防ぐ仕組み。
2つ目は、設備と体制の要件があることです。通信環境、停電への備え、記録の保存。
3つ目は、事前の手続きが要ることです。要件を満たしていることを示して、届け出ます。
「タブレットで顔を見ながら電話すればよい」ではありません。要件を満たした機器と体制が前提です。導入の前に、要件の一覧と自社の設備を突き合わせてください。
IT点呼との違い
名前が似ているので混同されますが、成り立ちが違います。
| IT点呼 | 遠隔点呼 | |
|---|---|---|
| 使える事業者 | Gマークの取得など条件がある | 条件は機器と体制の要件 |
| 行える場所の範囲 | 同一事業者の営業所間などに限られる | より広い範囲で認められる |
| 時間の制限 | 連続して行える時間に制限がある場合がある | 制限の考え方が異なる |
| 機器の要件 | 定められている | より細かく定められている |
どちらが自社に合うかは、営業所の数と配置で変わります。営業所が2つで近い事業所ならIT点呼で足りることがあり、拠点が多く離れているなら遠隔点呼のほうが使いやすくなります。両方の要件を並べて比べてください。
制度は見直しが続いている分野です。最新の要件は所轄の運輸支局に確かめてください。
必要な機器
遠隔点呼で求められる機器は、点呼の質を落とさないためのものです。
主なものは4つです。
1つ目は、映像と音声の機器です。運転者の顔色、表情、声の調子が分かること。暗い場所では判断できないので、照明も要件に関わります。
2つ目は、アルコール検知器です。測定の結果が、点呼を行う側に届く仕組み。運転者が自分で数値を読み上げる形では足りないとされています。
3つ目は、なりすましを防ぐ仕組みです。顔認証やICカードなど、本人であることを確かめる手段。
4つ目は、記録の保存です。点呼の記録に加えて、映像や測定の結果を残す仕組み。
2つ目と3つ目が、機器を選ぶときの分かれ目になります。検知器と点呼の仕組みが連動しているか、本人確認の手段が用意されているか。カタログで「遠隔点呼対応」と書かれているかを確かめてください。
設備と体制の要件
機器がそろっていても、運用の体制が要件を満たしていなければ使えません。
押さえるのは4つです。
1つ目は、通信環境です。映像が途切れない回線。途切れたときの代わりの手段も決めておきます。
2つ目は、停電や故障への備えです。機器が使えなくなったときに、どう点呼するか。
3つ目は、点呼を行う人の配置です。遠隔でも、運行管理者か補助者が行います。
4つ目は、記録の保存の仕組みです。定められた期間、確実に残せること。
2つ目を決めていない事業所が多くあります。機器が動かない日に、点呼をどうするか。対面に戻す、電話で行う、別の営業所に振る。あらかじめ決めて、点呼の要領書に書いてください。
手続き
遠隔点呼を始めるには、事前の手続きが要ります。
流れは4段です。
1つ目は、要件を確かめることです。機器、設備、体制。所轄の運輸支局に相談します。
2つ目は、機器を用意することです。要件を満たす製品を選びます。
3つ目は、届け出ることです。定められた様式で、実施の前に届け出ます。
4つ目は、開始することです。届出が受理されてから始めます。
3つ目の前に機器を買ってしまう事業所があります。要件を満たさない製品を買うと、買い直しになります。相談を先にしてください。制度の見直しで要件が変わることがあるので、最新の情報は運輸支局に確かめます。
運用で気をつけること
導入したあとに問題になるのは、機器そのものより運用です。
気をつけるのは4つです。
1つ目は、点呼の質が落ちないことです。画面越しでも、顔色と受け答えを見ます。流れ作業にしないことです。
2つ目は、記録の確認です。自動で記録される仕組みでも、内容を人が見る時間を作ります。
3つ目は、機器の点検です。カメラ、マイク、検知器。動くかどうかを定期的に確かめます。
4つ目は、要領書の更新です。遠隔点呼を始めたら、点呼の要領書も直します。
1つ目がいちばん大事です。機器を入れた目的は、人手を減らすことであって、点呼を形だけにすることではありません。画面越しに「異常なし」と言い合うだけの点呼になっていないかを、定期的に見てください。
導入して何が変わるか
遠隔点呼を入れると、営業所の運営の形が変わります。
変わるのは4つです。
1つ目は、夜間と早朝の体制です。すべての営業所に運行管理者を置く必要が減ります。
2つ目は、点呼の質のばらつきです。1か所でまとめて行うと、やり方がそろいます。
3つ目は、記録の集め方です。電子で残るので、集計が速くなります。
4つ目は、機器の維持の手間です。新しく増える仕事もあります。
2つ目は見落とされやすい効果です。営業所ごとに点呼のやり方が違っていた事業所では、まとめることで質がそろいます。指摘の出やすい項目を、一度に直せます。
小さな事業所での考え方
営業所が1つの事業所では、遠隔点呼を入れる意味が薄いことがあります。
考えるのは4つです。
1つ目は、いま困っていることは何かです。夜間の人手か、点呼の質か、記録の手間か。
2つ目は、費用です。機器と通信の費用が、人件費より安くなるか。
3つ目は、代わりの手段です。補助者を増やす、点呼の時間帯をまとめる。
4つ目は、将来の拠点の計画です。営業所を増やす予定があるなら、先に入れておく考え方もあります。
「新しい制度だから入れる」ではなく、困りごとから決めてください。遠隔点呼は、離れた拠点があることが前提の仕組みです。1か所しかないなら、対面のままで足りることが多くあります。
導入までの期間を見込む
遠隔点呼は、思い立ってすぐ始められるものではありません。期間を見込んで進めます。
段階は4つです。
1つ目は、相談と要件の確認です。所轄の運輸支局に、いまの設備で足りるかを聞きます。
2つ目は、機器の選定と見積もりです。複数の製品を比べます。要件を満たしているかを、カタログではなく仕様で確かめます。
3つ目は、設置と試験です。通信が途切れないか、暗いところで顔が見えるか。実際の点呼の時間帯に試します。
4つ目は、届出と開始です。
3つ目を飛ばさないでください。昼間の明るい事務所では問題なく映っても、早朝の暗い時間帯では顔色が分からないことがあります。実際に使う時間帯で試してから、届出に進みます。
要領書に書き足すこと
遠隔点呼を始めたら、点呼の要領書を直します。書き足す項目が決まっています。
書くのは4つです。
1つ目は、遠隔で行う対象です。どの営業所の、どの時間帯の点呼を遠隔にするか。
2つ目は、行う場所と人です。どこから、誰が行うか。
3つ目は、機器が使えないときの手順です。対面に戻す、電話にする、別の営業所に振る。
4つ目は、記録の残し方です。どこに、どの形で、どのくらい残すか。
3つ目を具体的に書いてください。「別の方法で行う」では、当日に迷います。「◯◯営業所の運行管理者に電話で依頼する」というところまで書くと、夜中でも動けます。
費用と効果を数字で並べる
遠隔点呼の導入は、社内で決裁を取る場面が必ずあります。数字で並べます。
並べるのは4つです。
1つ目は、いまかかっている人件費です。夜間と早朝に点呼のために出ている人の時間。営業所ごとに、月あたり何時間かを出します。
2つ目は、機器と通信の費用です。初期の費用と、毎月かかる費用を分けます。
3つ目は、減る人の時間です。遠隔にしたときに、何時間が要らなくなるか。
4つ目は、増える仕事です。機器の点検、記録の確認、要領書の維持。ここを引かずに出すと、あとで話が合わなくなります。
4つ目を入れた数字を出してください。「人件費がこれだけ減ります」だけの説明は、導入したあとに「思ったほど減らない」と言われます。増える仕事も書いたうえで残る差が、本当の効果です。
まとめ
遠隔点呼は、機器を使って離れた場所から行い、対面と同等に扱われる点呼です。
- IT点呼とは別の仕組み。使える事業者の条件も、範囲も、機器の要件も違う
- 機器は、映像と音声、検知器との連動、なりすましの防止、記録の保存が要る
- 通信、停電と故障への備え、点呼を行う人の配置、記録の仕組みも要件になる
- 機器を買う前に、所轄の運輸支局に相談する
- 入れたあとは、点呼が流れ作業にならないかを定期的に見る
要件と手続きは制度の見直しで変わります。最新の扱いは所轄の運輸支局に確認してください。
よくある質問
Q. タブレットのビデオ通話でもよいですか。 A. 要件を満たす機器であることが前提です。映像と音声の質、検知器との連動、なりすましの防止。一般のビデオ通話のアプリだけでは足りないとされています。所轄の運輸支局に確かめてください。
Q. IT点呼と遠隔点呼は、どちらを選べばよいですか。 A. 営業所の数と配置で変わります。近い営業所が2つならIT点呼で足りることがあり、拠点が多く離れているなら遠隔点呼が使いやすくなります。両方の要件を並べて比べてください。
Q. Gマークを取っていないと使えませんか。 A. IT点呼と遠隔点呼では条件が違います。遠隔点呼は機器と体制の要件を満たすことが条件とされています。最新の扱いは所轄の運輸支局に確かめてください。
Q. 機器が故障したら、どうしますか。 A. あらかじめ決めておいてください。対面に戻す、電話で行う、別の営業所に振る。点呼の要領書に書いておくと、当日に迷いません。
Q. 点呼を行う人は、どこにいてもよいですか。 A. 行う場所についても要件があります。自宅から行えるかどうかは制度の扱いによります。所轄の運輸支局に確かめてください。
Q. 記録はどのくらい残しますか。 A. 点呼記録簿の保存期間に従います。1年間とされています。映像や測定の結果の扱いは、機器の仕組みによるので、導入のときに確かめてください。
Q. 届出をせずに始めてよいですか。 A. 事前の手続きが求められています。届け出ずに始めると、点呼を行っていない扱いになることがあります。始める前に所轄の運輸支局に確かめてください。
Q. 費用はどのくらいかかりますか。 A. 機器と通信の費用は、規模と製品で幅が大きくなります。夜間の人件費と比べて判断してください。営業所が1つだけの事業所では、効果が薄いことがあります。
Q. 中間点呼も遠隔点呼で行えますか。 A. 点呼の種類ごとに扱いが違います。中間点呼は電話などで行うものです。併用する場合の扱いは、所轄の運輸支局に確かめてください。
Q. 点呼が流れ作業になりそうです。 A. 画面越しでも、顔色と受け答えを見てください。「異常なし」と言い合うだけの点呼になっていないかを、定期的に確かめます。記録を人が読み返す時間を作ると気づけます。
Q. 要領書は直す必要がありますか。 A. 直してください。点呼のやり方が変わるので、要領書も変わります。機器が使えないときの手順も、あわせて書いてください。
Q. 制度が変わることはありますか。 A. 見直しが続いている分野です。要件が変わることがあります。導入したあとも、年に1回は所轄の運輸支局で最新の扱いを確かめてください。
Q. 導入までどのくらいかかりますか。 A. 相談、機器の選定、設置と試験、届出。数か月を見込んでおくと余裕があります。機器を先に買うと、要件を満たさなかったときに買い直しになります。
Q. 試験はいつやればよいですか。 A. 実際に点呼を行う時間帯です。早朝の暗い時間帯で、顔色が分かるかを確かめてください。昼間の事務所で試しても、本番の条件とは違います。
Q. 営業所が1つしかありません。入れる意味はありますか。 A. 薄いことが多くあります。遠隔点呼は離れた拠点があることが前提の仕組みです。困っているのが夜間の人手なら、補助者を増やすほうが早いことがあります。
Q. 効果をどう測りますか。 A. 導入の前後で、点呼のためにかかっている人の時間を比べてください。増える仕事の時間も入れて計算します。記録の質については、巡回指導の指摘の数で見る方法があります。
Q. 補助者でも遠隔点呼を行えますか。 A. 点呼を行えるのは運行管理者か、選任された補助者です。補助者が行える範囲には限りがあります。遠隔で行う場合の扱いも含めて、所轄の運輸支局に確かめてください。