アルコールチェックの義務化とは?白ナンバーの対象と手順
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営業車を何台か持っているだけの会社なのに、アルコールチェックが必要だと言われた。トラック事業者の話だと思っていたのに、自社も対象だった。ここ数年、そういう相談がいちばん増えています。
この記事では、アルコールチェックを、対象・方法・記録の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社が対象かどうかと、明日から何をすればよいかが分かる状態を目指します。
結論:アルコールチェックは緑ナンバーだけの話ではない
アルコールチェックとは、運転する人が酒気を帯びていないかを、運転の前後に確認することです。運送事業者だけでなく、一定の台数以上の自動車を使う事業所に義務づけられているとされています。
もともと、緑ナンバーの運送事業者には、点呼の一部として酒気帯びの確認が求められていました。そこに、道路交通法の側から、白ナンバーの事業所にも同じ趣旨の義務が入った形になっています。
ポイントはここです。根拠になる法令が2つあり、対象も呼び方も別です。緑ナンバーは貨物自動車運送事業輸送安全規則にもとづく点呼の一部、白ナンバーは道路交通法にもとづく安全運転管理者の業務とされています。同じ「アルコールチェック」という言葉で呼ばれていても、出どころが違います。
自社がどちらなのかで、記録の様式も保存期間も変わります。まず「うちは白ナンバーか緑ナンバーか」を決めてから、その側の決まりだけを見るのが近道です。
対象になるのは、安全運転管理者を置く事業所
白ナンバー側で対象になるのは、安全運転管理者を選任しなければならない事業所です。一般には、乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使用している事業所が該当するとされています。
台数の数え方でつまずくのは、原動機付自転車の扱いです。大型自動二輪車と普通自動二輪車は、1台を0.5台として数えるとされています。営業で原付やバイクを使っている会社は、ここで台数が変わることがあります。
数えるのは事業所ごとです。会社全体で20台あっても、5つの営業所に4台ずつ置いているなら、どの営業所も5台に届きません。逆に、本社に5台あれば本社だけが対象になります。会社単位ではなく事業所単位という点を外すと、判断が丸ごと変わります。
自社が該当するかどうか迷う場合は、所轄の警察署に台数と使い方を示して確かめるのが確実です。リース車や社員の自家用車を業務に使っている場合など、数え方が分かれる形があります。
何を確認するのか
確認する中身は2つあるとされています。目視等による確認と、アルコール検知器を用いた確認です。どちらか一方ではなく、両方を行う形になっています。
目視等による確認とは、運転する人の顔色、呼気のにおい、声の調子、受け答えの様子を見ることです。数字に出ないところを人が見る部分で、機械では置き換えられません。
アルコール検知器を用いた確認は、呼気に含まれるアルコールを機械で測ることです。検知器に求められる細かい性能の規定は置かれておらず、酒気帯びの有無を音や色、数値で示せるものであればよいとされています。
大事なのは、数値がゼロであることだけを見るのではない点です。数値が出ていなくても、明らかに様子がおかしい場合は運転させない判断が要ります。機械は人の判断を助ける道具で、判断そのものを肩代わりするものではないという位置づけになっています。
いつ行うのか
確認するのは、運転する前と、運転した後とされています。1日に何度も運転する場合、そのたびに行う必要はなく、業務の開始前と終了後で足りる形とされています。
ここでよくある質問が、直行直帰のときにどうするかです。出社しない日であっても確認は必要とされており、電話やビデオ通話など、運転者の様子を確認できる方法であればよいとされています。携帯型の検知器を持たせて、通話しながら測ってもらう形が一般的です。
確認するのは安全運転管理者ですが、常に本人が行う必要はありません。副安全運転管理者や、補助する立場の人が行う形も認められているとされています。ただし、誰が確認したかは記録に残す必要があります。
もうひとつ分かれるのが、泊まりを伴う運行です。前日の夜に業務を終え、翌朝に出発地から運転を始める形では、前日の終了後の確認と、当日の開始前の確認がそれぞれ要ります。宿泊先で測って電話で報告する運用を決めておくと、抜けが出ません。
確認する時刻は、運転の直前と直後である必要はないとされています。業務の開始前と終了後で足りるため、朝の朝礼のときと、夕方の戻りのときにまとめて行う形が一般的です。ただし「前日にまとめて」「翌朝にまとめて」は成り立ちません。その日の業務の前後であることが前提になります。
記録に残す項目と保存期間
記録は1年間保存するとされています。何を書くかは、次の項目が挙げられています。
確認した人の氏名、運転者の氏名、運転する自動車の登録番号など車両が分かるもの、確認した日時、確認の方法、酒気帯びの有無、指示した内容があればその内容、その他必要な事項です。
書き落としやすいのは、確認の方法と指示した内容の2つです。方法は「対面」「電話」「ビデオ通話」のように書き分けます。指示した内容は、酒気帯びが確認されたときだけでなく、運転を代わらせた、休ませた、といった判断があれば書きます。
保存期間の1年は、作った日からではなく、記録が完結した日から数えるのが安全です。1か月ごとにつづりを分けておくと、期間が来たものだけを取り出せます。
検知器は「常時有効に保持する」ことまで求められる
検知器を置いているだけでは足りません。常時有効に保持すること、つまりいつでも正しく測れる状態にしておくことが求められているとされています。
具体的には、電源が入ること、損傷や汚れが無いこと、メーカーが定める使用期限や測定回数の上限を超えていないことを確かめます。週に1回は電源と損傷を、月に1回は正しく反応するかを確かめるといった形で、点検の周期を自社で決めておくと運用しやすくなります。
センサーには寿命があります。使用回数で決まるものと、期間で決まるものがあり、機種によって違います。買ったときの説明書に書いてある数字を控えておき、期限の管理表に入れておくと、切らさずに済みます。
もうひとつ決めておきたいのが、壊れたときにどうするかです。予備を1台持っておくのがいちばん簡単ですが、台数の少ない事業所では現実的でないこともあります。その場合は、近くの営業所から借りる、当日は目視等の確認を行ったうえで記録に理由を書く、といった手順を先に決めておきます。
決めていないと、その場で「今日は測れないから、まあいいか」という判断が生まれます。記録に空白の日があると、後から説明ができません。測れなかった日は、測れなかったこととその理由を書いて残すほうが、何も書かないより安全です。
守られていないと、どこに効いてくるか
アルコールチェックそのものに直接の罰則が置かれているわけではないとされています。ただし、効いてくる場所は2つあります。
1つ目は、安全運転管理者の業務を行っていないことへの対応です。公安委員会から是正の措置が命じられることがあるとされており、従わない場合は罰則の対象になる形になっています。
2つ目は、事故が起きたときです。確認を行っていなかった事実は、会社の管理が及んでいなかった証拠として扱われます。記録が無いことは「やっていない」と同じ意味で読まれます。
判断に迷う点は、所轄の警察署に確かめるのが確実です。台数の数え方、直行直帰の確認方法、検知器の要件など、実際の運用で分かれる部分があります。
続ける形にするには、誰がやるかを先に決める
制度を理解しても、続かなければ記録は空きます。続いている事業所に共通しているのは、やる人と時間が決まっていることです。
決めておきたいのは3つです。朝は誰が確認するか、その人が休みの日は誰が代わるか、記録をどこに置くか。この3つが決まっていないと、忙しい朝に飛びます。
代わりの人を決めるときは、副安全運転管理者を置いているかどうかを先に確かめます。置く義務があるのは一定の台数を超える事業所とされていますが、義務が無くても補助する人を決めておくことはできます。義務の有無と、実務を回せるかどうかは別の話です。
記録の置き場所は、検知器のすぐ横が続きます。測ってから席に戻って書く形にすると、書き忘れが出ます。紙のつづりでも、共有のファイルでも、測る場所で完結するのが要点です。
まとめ
アルコールチェックは、緑ナンバーの運送事業者だけの話ではありません。乗車定員11人以上を1台、またはその他の自動車を5台以上使っている事業所は、白ナンバーでも対象になるとされています。数えるのは会社ではなく事業所ごとです。
確認するのは、目視等による確認とアルコール検知器による確認の2つです。運転の前と後に行い、直行直帰の場合は電話やビデオ通話など、様子が分かる方法で行う形が認められています。
記録は1年保存します。書き落としやすいのは確認の方法と指示した内容の2つです。検知器は置くだけでなく、常時有効に保持することまで求められています。
罰則が直接置かれているわけではありませんが、事故が起きたときに記録が無ければ、管理していなかったものとして扱われます。自社の判断に迷う点は、所轄の警察署に確かめるのが確実です。
実際に使える様式が必要な方へ
アルコールチェックの記録簿は、商い屋の運送業向けのページにExcelの様式があります。上の8項目がそのまま列になっているので、読んだその日から使えます。
この様式をひらくよくある質問
Q. 台数が5台に満たない事業所は、アルコールチェックをしなくてよいのですか。 A. 安全運転管理者の選任義務が無い事業所は、法令上の義務の対象外とされています。ただし、業務で運転させる以上、酒気帯び運転を防ぐ責任は残ります。義務が無い事業所でも、簡単な確認と記録を残している会社は多くあります。
Q. 自家用車を業務に使わせている場合、台数に入りますか。 A. 使用の実態によって判断が分かれます。会社が業務のために使わせているのであれば、事業所が使用する自動車として数えられることがあります。マイカー通勤で業務に使っていないのであれば数えません。実態を示して所轄の警察署に確かめるのが確実です。
Q. アルコール検知器は、どの機種でもよいのですか。 A. 酒気帯びの有無を音、色、数値などで示せるものであればよいとされており、特定の型式に限られているわけではありません。ただし、常時有効に保持することが求められるため、センサーの寿命や校正の方法が説明書に書かれている機種のほうが管理しやすくなります。
Q. 確認の記録を、紙ではなくデータで残してもよいですか。 A. 様式が決まっているわけではないため、データで残す形も取れます。1年間保存できること、後から書き換えた形跡が分かることが確かめられるようにしておきます。表計算ソフトで管理する場合は、月ごとにファイルを閉じて保管する運用にしておくと安全です。
Q. 運転者が1人しかいない小さな事業所でも、確認する人は別に要りますか。 A. 安全運転管理者は、運転者本人とは別に選任するのが原則とされています。人数が少なく別に置けない場合の扱いは事業所の形によって変わるため、所轄の警察署に相談して決めるのが確実です。
Q. アルコールチェックの結果が出た場合、どう対応すればよいですか。 A. 運転させないことが前提になります。代わりの運転者を立てる、便を組み替える、公共交通に切り替えるといった対応を取り、その内容を記録の「指示した内容」の欄に書きます。数値が低いから大丈夫、という判断は取れません。
Q. 点呼と別に、アルコールチェックの記録簿を作る必要はありますか。 A. 緑ナンバーの事業者であれば、点呼記録簿に酒気帯びの有無を書く欄があるため、そこで足りる形になります。白ナンバーの事業所は点呼記録簿を持っていないことが多いので、確認の記録簿を別に用意することになります。
Q. 前日に飲酒した運転者は、翌朝に数値が出なければ運転させてよいですか。 A. 数値が出ないことは条件のひとつですが、それだけで判断しない形が安全です。目視等による確認で、顔色や受け答えに残っている様子があれば、運転させない判断が取れます。酒が抜けるまでにかかる時間は体質や量で大きく変わるため、前夜の飲酒の状況を聞き取る運用にしている事業所もあります。