点呼での睡眠不足の確認|聞き方と記録の残し方
目次
点呼の項目に睡眠不足の確認が入りました。「眠れましたか」と聞いて「はい」と返ってくるだけになっている事業所が多くあります。これでは確認したことになりません。聞き方と記録の残し方を決めておくと、形だけの確認から抜けられます。
この記事では、点呼での睡眠不足の確認を、なぜ項目に入ったか、聞き方、判断の目安、乗務させられないときの動き、記録の残し方の順に整理します。確認の項目と運用は制度の見直しで変わります。最新の扱いは所轄の運輸支局に確認してください。
結論:睡眠不足は、事故につながることが分かっている
点呼で確認するのは、その人が安全に運転できる状態かです。睡眠不足は、そこに直接ひびきます。
押さえるのは3つです。
1つ目は、確認が求められていることです。疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無について、確認することとされています。
2つ目は、乗務させてはならない場合があることです。確認の結果、安全な運転ができないおそれがあるときは、乗務させてはならないとされています。
3つ目は、記録することです。確認した内容を点呼記録簿に残します。
2つ目が実務でいちばん難しい部分です。運行が組まれていて、代わりの人がいない。そこで「大丈夫です」という答えを受け入れてしまう形が起きます。代わりの手を先に決めておかないと、確認が形だけになります。
なぜ項目に入ったか
睡眠不足は、本人が自覚しにくいという性質があります。
分かっているのは3つです。
1つ目は、反応が遅くなることです。判断や操作に遅れが出ます。
2つ目は、自分では気づきにくいことです。「眠くない」と感じていても、実際には能力が落ちています。
3つ目は、短時間の居眠りが起きることです。数秒間、意識が途切れる形。本人が気づかないことがあります。
2つ目があるから、確認が要ります。本人の申告だけでは足りないという前提で、点呼を行う側が見ることになっています。
聞き方
「眠れましたか」では、ほとんどが「はい」と答えます。聞き方を変えます。
変え方は4つです。
1つ目は、時間を聞くことです。「何時に寝て、何時に起きましたか」。数字で答えてもらいます。
2つ目は、途中で起きたかを聞くことです。布団に入っていた時間と、眠れた時間は違います。
3つ目は、直前の勤務を見ることです。前の運行の終了時刻。記録を見れば分かります。
4つ目は、様子を見ることです。顔色、目の充血、受け答えの速さ、あくび。
1つ目と3つ目を組み合わせると、矛盾が見えます。「8時間眠りました」と答えても、前の運行が終わったのが3時間前なら、話が合いません。記録を見ながら聞くと、確認になります。
判断の目安
何時間なら大丈夫、という一律の線はありません。事業所で目安を決めておきます。
決めるのは4つです。
1つ目は、目安の時間です。「継続して◯時間」という形。運行の内容と、その人の普段の睡眠から決めます。
2つ目は、下回ったときの扱いです。必ず乗務させないのか、様子を見て判断するのか。
3つ目は、判断する人です。運行管理者が判断します。
4つ目は、迷ったときの原則です。迷ったら乗務させない、と決めておきます。
4つ目を書面にしておいてください。その場で判断すると、運行を優先する方向に傾きます。平常時に「迷ったら乗務させない」と決めて紙に書いておくことしかできません。
乗務させられないときの動き
確認の結果、乗務させられないと判断したとき。その場で困らないよう、手を用意しておきます。
手は4つです。
1つ目は、休ませて時間をずらすことです。出発を数時間遅らせる。
2つ目は、代わりの運転者です。待機の人がいるか、他の便から回せるか。
3つ目は、運行を変更することです。荷主に連絡して、日程を調整する。
4つ目は、断ることです。その日の運行を見送る。
3つ目のために、荷主との関係を平常時に作っておきます。「安全のために遅らせる」と伝えられる関係かどうか。急に言うと通らないことも、事前に伝えておけば通ります。
記録の残し方
点呼記録簿には、確認したことが分かる形で残します。
書くのは4つです。
1つ目は、確認したことです。印か、チェックの欄。
2つ目は、内容です。「何時から何時まで、継続して睡眠」。数字を書きます。
3つ目は、判断です。乗務可、乗務不可。
4つ目は、乗務させなかった場合の対応です。どうしたか。
2つ目を書く欄が無い様式があります。チェックの欄だけだと、印が並ぶだけの記録になります。短くてよいので、数字を書く欄を作ってください。
運転者に説明しておく
聞かれる側にとって、睡眠時間を聞かれるのは踏み込まれる感覚があります。先に説明しておきます。
伝えるのは4つです。
1つ目は、決まりであることです。点呼の項目として確認が求められています。
2つ目は、責めるためではないことです。乗務できる状態かを一緒に確かめるためです。
3つ目は、正直に言っても不利にならないことです。ここがいちばん大事です。
4つ目は、乗務させない判断をしたときの扱いです。給与や評価にどう反映するか。
3つ目と4つ目はセットです。正直に言ったら仕事が減る、という形になっていると、誰も正直に言いません。乗務させなかった日の扱いを先に決めて伝えてください。
眠れない理由に目を向ける
睡眠不足が続く運転者がいる場合、本人の努力の問題ではないことがあります。
見るのは4つです。
1つ目は、勤務の形です。休息期間が足りているか。出発と帰着の時刻が毎日違わないか。
2つ目は、待機の時間です。荷待ちで仮眠が取れない状態になっていないか。
3つ目は、体の問題です。睡眠時無呼吸症候群などの可能性。
4つ目は、生活の事情です。家庭の状況、副業。
1つ目と2つ目は、事業所が変えられます。シフトの組み方、荷待ちの時間の交渉。「よく眠るように」と言うだけでは変わらない部分があります。3つ目が疑われる場合は、検査を勧めてください。
続けるための工夫
睡眠不足の確認は、毎日のことです。手間が増えると続きません。
工夫は4つです。
1つ目は、記録の様式に欄を作ることです。就寝時刻と起床時刻の欄。
2つ目は、聞く言葉を決めることです。「何時に寝て何時に起きましたか」で統一します。
3つ目は、前の運行の記録を手元に置くことです。矛盾に気づけます。
4つ目は、月に1回まとめて見ることです。睡眠時間が短い日が続いている人がいないか。
4つ目を入れると、確認が意味を持ちます。毎日の点呼では1日分しか見えません。月に1回並べて見ると、特定の運行や特定の人に偏っていることが分かります。
確認の項目を1枚にする
点呼では、睡眠不足のほかにも確認することがあります。まとめて1枚にすると、抜けません。
並べるのは4つです。
1つ目は、酒気帯びの有無です。検知器の使用と測定の結果。
2つ目は、疾病と疲労の状況です。体調、けが、服薬。
3つ目は、睡眠不足の状況です。就寝と起床の時刻。
4つ目は、道路と運行の状況です。天候、規制、荷主からの連絡。
4つを同じ順番で毎回聞くと、抜けが減ります。順番が毎回違うと、忙しい日に飛ばします。要領書に順番まで書いて、点呼の場所に貼っておいてください。
交代制勤務での難しさ
早朝と深夜に運行がある事業所では、睡眠の取り方そのものが難しくなります。
見るのは4つです。
1つ目は、出庫の時刻が毎日違わないかです。日によって3時、7時、15時と変わると、体が慣れません。
2つ目は、休息期間の取り方です。継続して取れているか。
3つ目は、仮眠の場所です。車内で仮眠する場合、環境が整っているか。
4つ目は、連続する勤務の日数です。休みが飛び飛びになっていないか。
1つ目を揃えられると、いちばん効きます。同じ運転者に、できるだけ同じ時間帯の運行を割り当てる。配車の工夫で、睡眠の質が変わります。「よく眠るように」と言うより、この調整のほうが結果に出ます。
数字を月ごとに並べてみる
点呼で聞いた睡眠時間は、溜めると使えます。月に1回並べます。
見るのは4つです。
1つ目は、人ごとの平均です。短い人がいないか。
2つ目は、運行ごとの傾向です。特定の便に乗ると短くなる、という形が見えます。
3つ目は、曜日の傾向です。週明けだけ短い、連休明けが短い。
4つ目は、季節です。暑い時期に短くなることがあります。
2つ目が見つかったら、配車を直せます。「この便に入ると前の晩が短くなる」と分かれば、出庫の時刻か前日の運行を変えられます。点呼の記録が、運行の設計に返ってくる形になります。
まとめ
点呼での睡眠不足の確認は、その人が安全に運転できる状態かを見るためのものです。
- 確認し、安全な運転ができないおそれがあるときは乗務させず、記録する
- 「眠れましたか」ではなく、就寝と起床の時刻を数字で聞く
- 前の運行の終了時刻と突き合わせると、矛盾が見える
- 事業所で目安を決め、迷ったら乗務させないと書面にしておく
- 正直に言っても不利にならないことを、先に運転者へ伝える
確認の項目と運用は制度の見直しで変わります。最新の扱いは所轄の運輸支局に確認してください。
よくある質問
Q. 何時間眠っていれば大丈夫ですか。 A. 一律の線はありません。事業所で目安を決めてください。運行の内容と、その人の普段の睡眠から決めます。目安を下回ったときの扱いも、あわせて決めておきます。
Q. 「大丈夫です」と言われたら、そのまま乗務させてよいですか。 A. 本人の申告だけでは足りないという前提の確認です。時刻を数字で聞き、前の運行の記録と突き合わせてください。矛盾があれば、そこから話を聞きます。
Q. 乗務させない判断をすると、運行が回りません。 A. 代わりの手を先に用意してください。時間をずらす、代わりの運転者、運行の変更、見送り。その場で考えると、運行を優先する判断になります。
Q. 記録には何を書きますか。 A. 確認したこと、内容(就寝と起床の時刻)、判断、乗務させなかった場合の対応。チェックの印だけでは、確認したことが伝わりません。
Q. 運転者が正直に言ってくれません。 A. 正直に言っても不利にならないことを伝えてください。乗務させなかった日の給与の扱いを先に決めて伝えることが、いちばん効きます。
Q. 睡眠不足が続く運転者がいます。 A. 勤務の形と待機の時間を先に見てください。休息期間が足りているか、荷待ちで仮眠が取れていないか。事業所が変えられる部分があります。体の問題が疑われる場合は検査を勧めてください。
Q. 中間点呼でも睡眠不足を確認しますか。 A. 確認します。乗務の途中でも、疾病・疲労・睡眠不足の状況を確かめることとされています。電話でも、時刻を数字で聞いてください。
Q. 前の日の勤務時間はどこで分かりますか。 A. 運転日報と点呼記録簿です。前の運行の終了時刻を手元に置いて聞くと、矛盾に気づけます。デジタル式運行記録計を使っている事業所では、そちらでも確かめられます。
Q. 目安を書面にする必要がありますか。 A. 義務として定められているものではありませんが、書いておかないとその場の判断になります。点呼の要領書に、目安と迷ったときの原則を書いてください。
Q. 乗務させなかった日の給与はどうなりますか。 A. 事業所で決める事柄です。労働時間や休業手当の扱いについては、所轄の労働基準監督署に確かめてください。先に決めて伝えておかないと、正直な申告が出てきません。
Q. 月に1回まとめて見るのは、何を見ますか。 A. 睡眠時間が短い日が続いている人がいないか、特定の運行に偏っていないか。毎日の点呼では1日分しか見えません。並べて見ると、シフトの問題が見えてきます。
Q. 睡眠時無呼吸症候群の検査は、事業所が費用を持ちますか。 A. 事業所で決める事柄です。健康診断の一部として行う形と、希望者に補助する形があります。運転者の健康管理の一環として、扱いを決めておいてください。
Q. 確認の順番を決める意味はありますか。 A. あります。順番が毎回違うと、忙しい日に飛ばします。同じ順番で毎回聞く形にして、要領書に書き、点呼の場所に貼ってください。
Q. 車内で仮眠する運転者がいます。 A. 仮眠の環境が睡眠の質を左右します。騒音、温度、体勢。改善できる部分がないか、運転者と一緒に見てください。休息期間として扱えるかどうかは、所轄の労働基準監督署に確かめてください。
Q. 睡眠時間を記録に残すのは、個人情報として問題になりませんか。 A. 点呼の記録として必要な情報です。ただし見られる人の範囲は絞ってください。点呼記録簿の保管の仕方と、誰が見られるかを決めておきます。
Q. 集計は誰がやりますか。 A. 運行管理者か、事務の担当です。月に1回、30分で足ります。人ごとと便ごとに平均を出すだけで、傾向が見えます。毎日の点呼では見えない部分です。
Q. 点呼の記録は何年残しますか。 A. 点呼記録簿の保存期間は1年間とされています。睡眠時間の集計を続けたい場合は、集計した表を別に残す形にしてください。
Q. 目安を下回ったが、本人は大丈夫だと言います。 A. 判断するのは運行管理者です。本人の申告だけでは足りないという前提の確認です。迷ったら乗務させないという原則を、平常時に決めて書面にしておいてください。