点呼と記録解説2025.11.06 公開TK-05

運転者の健康管理とは?健康診断と点呼で見るところ

目次

健康診断は毎年受けさせている。けれど、結果の紙をファイルに綴じたところで止まっていて、運行に使えていない。そういう状態のまま、体調が原因の事故の話だけが増えていく。運送の現場でよく聞く形です。

この記事では、運転者の健康管理を、健康診断・点呼での確認・記録の3つに分けて整理します。読み終えたときに、受けさせた結果を運行のどこで使うのかが分かる状態を目指します。

点呼そのものの流れから確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 点呼とは

結論:運転者の健康管理は「受けさせる」で終わらない

運転者の健康管理とは、健康診断や日々の点呼を通じて、安全に運転できる状態かどうかを確かめ続けることです。健康診断を受けさせることだけを指す言葉ではありません。

一般には、事業者は運転者の健康状態を把握し、疾病や疲労によって安全な運転ができないおそれがある場合は、乗務させてはならないとされています。乗務させない判断まで含めて、事業者側の責任という作りになっています。

ポイントはここです。判断する場面は2つあります。1つは健康診断の結果を受け取ったとき、もう1つは毎日の点呼のときです。前者は年に1回か2回、後者は毎日です。両方を回さないと、健康管理は成立しません。

判断する場面は2つ健康診断年に1回か2回。就業の判定まで日々の点呼今日乗れる状態かを見る乗せない判断どちらの場面でも
健康診断と日々の点呼という2つの場面を並べた層の図

現場で抜けやすいのは前者です。診断は受けさせているのに、結果を見て何かを変えたことが1度も無い、という事業所が少なくありません。

健康診断は3つの種類に分かれる

運転者に受けさせる健康診断は、種類で分かれます。混ぜて考えると、受けさせる時期が分からなくなります。

1つ目は雇入時の健康診断です。雇い入れるときに行うもので、既往歴や業務歴、視力や聴力、血圧、血液検査などが項目に入るとされています。

2つ目は定期健康診断です。1年以内ごとに1回、定期に行うものとされています。運転者も他の従業員と同じ扱いになります。

3つ目は深夜業を含む業務に従事する人の健康診断です。深夜業の回数が一定以上の場合、6か月以内ごとに1回行うとされています。夜間に走る運転者は、こちらに当たることが多くなります。

3つの健康診断種類受けさせる時期雇入時雇い入れるとき定期1年以内ごとに1回深夜業6か月以内ごとに1回見落とし夜間の便がある人は深夜業
雇入時・定期・深夜業の3つの健康診断を、受けさせる時期で並べた表

長距離や夜間の便がある事業所では、3つ目の見落としが起きやすい形です。年1回で足りると思っていて、実際は6か月ごとだった、という取り違えが実際にあります。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に勤務の実態を示して確かめるのが確実です。

結果を受け取ったら、就業の判定まで進める

健康診断は、受けさせて結果をファイルに綴じるところまでが「半分」です。残りの半分は、結果をもとに就業の扱いを決めることです。

一般には、所見のあった人について、医師の意見を聴き、必要があれば就業の場所や作業の転換、労働時間の短縮といった措置を取るとされています。運転の業務に就かせてよいかどうかまで含めて判断する形になります。

受け取ったら就業の判定まで進める1結果を受け取るファイルに綴じて終わりにしない23つに仕分けるそのまま・条件付き・意見を聴く3医師の意見所見のある人について4就業を決め条件は記録に残す
診断の結果を受け取ってから就業の判定までの流れ

運行の現場では、ここが「所見あり」という文字で止まりがちです。止めないために、結果を受け取った時点で3つに仕分ける形にしておくと動けます。そのまま乗務してよい人、条件を付けて乗務させる人、医師の意見を聴いてから決める人の3つです。

条件を付ける例としては、長距離の便から外す、夜間の便を減らす、休憩を長めに取らせる、といった形があります。条件を付けたことは記録に残し、次の診断のときに見直します。

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実際に使える様式が必要な方へ

運転者ごとの健康診断の結果と、次に受けさせる時期を1枚で管理できるExcelの表が、商い屋の運送業向けのページにあります。この記事は判断の側の話です。

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点呼で見るのは、数字ではなく「今日の状態」

年に1回か2回の診断では、その日の体調は分かりません。毎日の点呼が、もう1つの場面になります。

点呼で確かめるのは、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により、安全な運転をすることができないおそれの有無とされています。酒気帯びの確認と並んで、点呼の項目に入っています。

聞き方を決めておくと、答えが返ってきやすくなります。「体調はどうですか」だけだと「大丈夫です」で終わります。何時間眠れたか、痛いところはないか、薬を飲んでいるか、というように具体的に聞く形にします。

点呼で聞く3つ聞くこと返事の扱い何時間眠れたか数字で答えてもらう痛いところはないか場所と程度を書く薬を飲んでいるか眠気の出る薬か確かめる共通言いやすい聞き方にする
点呼で聞く3つの質問と、返ってきた答えの扱いを並べた表

薬の扱いは、特に見落としやすいところです。市販の風邪薬や花粉症の薬には、眠気が出るものがあります。飲んでいること自体は問題ではありませんが、何を飲んだかを点呼で言える関係をつくっておくのが要点です。言えない雰囲気だと、黙って乗ります。

脳・心臓の疾患は、健康診断だけでは見つからない

運転中に意識を失う事故の原因として挙がりやすいのが、脳と心臓の疾患、それと睡眠時無呼吸症候群です。これらは、通常の定期健康診断の項目だけでは見つからないことがあります。

一般に、事業者向けの手引きでは、血圧や血液検査で所見があった人には、より詳しい検査を勧めることが案内されています。義務として一律に課されているわけではありませんが、実施している事業所は増えています。

睡眠時無呼吸症候群は、本人に自覚が無いことが多い病気です。いびきが大きい、日中に強い眠気がある、といった様子が手がかりになります。同乗する人や家族からの話が、本人の申告より早いことがあります。

定期健康診断で分かるのは、血圧や血液の数値、視力や聴力といった項目です。脳の血管の状態や、睡眠中の呼吸の止まり方は、項目に入っていません。ここを補うために、別の検査を案内する形になります。

検査を勧めるときは、費用の扱いを先に決めておくと話が進みます。会社が負担するのか、健康保険の範囲で受けるのか。決めていないと、勧めた時点で止まります。

期限は1枚の表にまとめる

健康管理で切らしやすいのは、次に受けさせる時期です。人によって入社の月が違い、深夜業の対象かどうかでも周期が変わるため、頭の中では管理できません。

作るのは、運転者ごとに1行の表です。列は、氏名、入社の月、前回の受診日、次回の予定日、深夜業の対象かどうか、所見の有無、就業の条件の7つ。前回の受診日から次回を自動で出す形にしておくと、更新の手間が消えます。

期限は1枚の表にまとめる健康診断の管理表氏名運転者ごとに1行前回受診した年月日次回前回から自動で出す深夜業対象なら6か月条件就業の条件があれば適性診断も同じ表に入れておく
運転者ごとの健康診断の期限を1枚で管理する表の見本

同じ表に、適性診断の期限も入れておくと、見に行く先が1つで済みます。免許証や車検の期限を別の表で管理しているなら、そちらに列を足す形でもかまいません。大事なのは表を増やさないことで、増えるほど見ない表が出ます。

月の初めに一度だけ、翌月に期限が来る行を抜き出して並べます。並べたものを配車の担当と共有しておけば、受診の日に便を入れてしまう、という行き違いも減ります。

体調不良を言いやすくする

制度を整えても、運転者が体調を言わなければ点呼では拾えません。言いにくさの原因は、たいてい2つです。

1つ目は、休むと収入が下がることです。歩合の割合が大きい賃金の形だと、少しの体調不良では申告しない方向に働きます。ここは制度の外側の話ですが、健康管理が効くかどうかを大きく左右します。

2つ目は、代わりがいないことです。自分が休むと誰かに迷惑がかかると分かっていれば、黙って乗ります。代車や代務の手当てをどうするかを決めておくと、言いやすさが変わります。

体調を言いにくくする2つ言いにくい理由休むと収入が下がる代わりがいない黙って乗る方向に働く会社側で打てる手代務の手当てを決める点呼で先に声をかける聞かれなければ言わない
体調を言いにくくする2つの理由と、会社側で手を打てるところを並べた比較の図

点呼のときに「今日は無理そうなら言ってください」と一言添えるだけでも違います。聞かれなければ言わないのが普通なので、聞く側が先に口を開く形にしておきます。

記録に残すのは3つ

健康管理の記録は、次の3つを残す形にしておくと、後から説明できます。

1つ目は、健康診断の結果です。一般に5年間保存するとされています。深夜業の健康診断も同じ扱いになります。

2つ目は、結果を受けて何をしたかです。医師の意見を聴いた記録、就業の扱いを決めた記録がここに入ります。所見があったのに何もしていないと、判断そのものが無かったことになります。

3つ目は、点呼での確認の結果です。点呼記録簿に、疾病や疲労の有無を書く欄があります。乗務させなかった日があれば、その理由まで書きます。

保存の年数が種類ごとに違うので、つづりを分けて、年数を表紙に書いておくと間違えません。同じ場所にまとめると、短いほうに合わせて捨ててしまうことがあります。

健康に関する記録は、他の書類より扱いに気を配ります。見られる人を決め、鍵のかかる場所に置くのが基本です。データで持つ場合も、共有のフォルダに置くのではなく、権限を絞った場所に分けます。

誰が見られるかを決めるときは、必要な範囲で分けると運用しやすくなります。診断の数値そのものを見るのは事業者と担当者だけにして、配車を組む人には乗務の可否と条件だけを伝える形です。全員が全部を見る形にすると、扱いが雑になります。

まとめ

運転者の健康管理は、健康診断を受けさせることだけを指す言葉ではありません。結果をもとに就業の扱いを決めるところまでが事業者の責任とされています。

健康診断は、雇入時・定期・深夜業の3つに分かれます。夜間の便がある運転者は6か月以内ごとに1回になる形があり、見落としが起きやすいところです。

日々の点呼では、疾病・疲労・睡眠不足のおそれを確かめます。聞き方を具体的に決めておくと、答えが返ってきます。薬を飲んでいることを言える関係をつくっておくのが要点です。

記録は、診断の結果・結果を受けた判断・点呼での確認の3つを残します。保存の年数が違うので、つづりを分けます。自社の判断に迷う点は、所轄の労働基準監督署か運輸支局に確かめるのが確実です。

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実際に使える様式が必要な方へ

健康診断の結果と次に受けさせる時期を運転者ごとに管理できるExcelの表が、商い屋の運送業向けのページにあります。読んだあと、そのまま自社の名簿に当てはめられます。

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よくある質問

Q. 健康診断を受けたがらない運転者には、どう対応すればよいですか。 A. 受診は労働者側にも義務があるとされています。ただし、受けたくない理由が費用や時間のことであれば、会社側で調整できる場合があります。就業時間内に受けられるようにする、指定の医療機関を増やすといった形で、受けやすさを先に見直すのが実務的です。

Q. 健康診断の結果を、本人の同意なく運行管理者が見てもよいですか。 A. 健康情報は取り扱いに配慮が要るとされています。就業の判定に必要な範囲で扱う形にし、誰が見られるかを決めておきます。詳しい数値まで全員が見る必要は無く、乗務の可否と条件だけを共有する形にしている事業所もあります。

Q. 所見ありと書かれていたら、必ず乗務させてはいけませんか。 A. 所見があることと、運転させてよいかどうかは別の話です。医師の意見を聴いたうえで判断する形になります。何もせずに乗せるのと、意見を聴いたうえで条件を付けて乗せるのとでは、後から問われたときの説明が変わります。

Q. 深夜業の健康診断は、何回から対象になりますか。 A. 深夜業の回数によるとされています。自社の運行がどれに当たるかは勤務の実態で決まるため、シフトの実績を示して所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。年1回で足りると思い込んでいると、半年ぶんの空白ができます。

Q. 健康診断の結果は何年保存しますか。 A. 一般に5年間とされています。点呼記録簿は1年、運転者等台帳は退職などから3年と、それぞれ年数が違うので、つづりを分けて表紙に年数を書いておくと間違えません。

Q. 高齢の運転者には、別の検査が要りますか。 A. 年齢そのもので別の健康診断が課されるわけではありませんが、適性診断の側で高齢運転者を対象にした診断が定められています。健康診断と適性診断は別の制度なので、両方の期限を管理する形になります。

Q. 点呼で体調が悪いと言われたら、必ず乗務させてはいけませんか。 A. 安全な運転ができないおそれがあると判断したときは、乗務させない扱いになります。ただし、軽い不調であれば、便を短いものに替える、休憩を増やす、同乗者を付けるといった調整で乗務できる場合もあります。判断した内容と理由を点呼記録簿に残しておくと、後から説明できます。

Q. 健康管理を担当するのは、運行管理者ですか。 A. 点呼で健康状態を確かめるのは運行管理者の業務に入りますが、健康診断の実施や就業の判定は事業者の責任とされています。小さな事業所では同じ人が両方を担うことになりますが、どちらの立場で行った判断かを記録に書き分けておくと、後から整理しやすくなります。

Q. 健康診断の費用は、会社と本人のどちらが負担しますか。 A. 事業者が行うべきものとされている健康診断は、費用も事業者が負担する形が一般的です。受診に要した時間の賃金の扱いは、労使で決めることとされています。就業時間内に受けさせて賃金を支払う形にしておくと、受診率が上がります。