記録と台帳基礎(ピラー)2026.06.17 公開NP-04

日常点検とは?事業用自動車で毎日見るところ

目次

日常点検は毎朝やっている。けれど、記録は運転日報の隅に丸を付けるだけ。何を見ているのか、運転者によって中身が違う。そう気づいていても、直す機会がないまま続いている事業所は多くあります。

この記事では、日常点検を、見る項目・記録の残し方・整備管理者との関係の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の点検表に足りない項目が分かる状態を目指します。

3か月ごとの定期点検と期限の管理から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 事業用自動車の点検の期限

結論:日常点検は運行の前に行い、結果を整備管理者へ報告する

日常点検とは、自動車を運行する前に、その日の状態を確かめる点検のことです。道路運送車両法にもとづくもので、事業用自動車では1日1回、運行の開始前に行うとされています。

自家用の乗用車では「走行距離や運行の状態から判断した適切な時期に」とされていますが、事業用自動車は違います。毎日必ずという形になっています。

ポイントはここです。日常点検は、やって終わりではありません。結果を整備管理者に報告し、整備管理者が運行の可否を判断する、という流れが定められています。異常があったときに誰が判断するかまで含めて、1つの仕組みです。

点検は判断までが1つの仕組み1点検する運行の開始前に毎2報告する整備管理者へ3可否を決める運転者の判断ではない
点検の実施・整備管理者への報告・運行の可否の判断という流れの図

この流れが抜けていると、運転者が自分で「まあ大丈夫だろう」と判断することになります。判断の責任を運転者1人に負わせない形にするのが、制度の狙いです。

見る項目は、大きく3つの場所に分かれる

点検の項目は、見る場所で分けると覚えやすくなります。

1つ目は、運転席に座って見るところです。ブレーキペダルの踏みしろと効き、駐車ブレーキの引きしろ、ウインドウォッシャーの噴射、ワイパーの拭き取り、エンジンのかかり具合と異音、計器や警告灯の表示などです。

2つ目は、エンジンルームを開けて見るところです。ウインドウォッシャー液の量、ブレーキ液の量、バッテリー液の量、冷却水の量、エンジンオイルの量、ファンベルトの張りと損傷です。

3つ目は、車の周りを回って見るところです。タイヤの空気圧、亀裂や損傷、溝の深さ、ホイールナットの緩み、灯火装置とウインカーの点灯、エアタンクの凝水の排出などです。

見る場所は3つ場所見るもの運転席ブレーキ・ワイパー・警告灯エンジンルーム各液の量・ベルト車の周りタイヤ・灯火・ナット車両による追加エアタンク・連結部
運転席・エンジンルーム・車の周りという3つの場所で見る項目を並べた表

車両の種類によって、見る項目が追加されます。エアブレーキを備えた車両ではエアタンクの凝水の排出、けん引する車両では連結部の状態など、自社の車両に合わせた表が要ります。

点検の順番も、表の並びで決まります。運転席から始めて、エンジンルーム、最後に周りを1周する。この順にしておくと、行ったり来たりせずに終わります。項目の並びが場所の順になっていない表を使うと、時間がかかるうえに飛ばしが出ます。

寒い時期や雨の日は、周りを回る項目が飛びやすくなります。タイヤと灯火は、飛ばすと事故に直結する項目です。表の並びで先に持ってくる、あるいは印を付けて目立たせるといった手当てをしておきます。

運転日報の丸だけでは足りない

記録の残し方でつまずくのは、どこまで細かく書くかです。運転日報に「日常点検 済」と1つ丸を付けているだけの事業所が少なくありません。

日常点検の記録そのものについて、決まった様式や保存期間が法令で定められているわけではないとされています。ただし、巡回指導では点検の実施状況が見られます。実施したことを示せる形にしておく必要があります。

丸1つと、項目ごとの差丸を1つ付ける書く手間は少ない何を見たか残らない異常を書く欄が無い項目ごとに残す順番に見ていける見落としが減る異常を書ける定期点検にも渡せる
丸を1つ付ける形と、項目ごとに残す形の違いを並べた比較の図

実務で勧められるのは、項目ごとに欄がある点検表を使う形です。理由は2つあります。1つは、何を見たかが残ること。もう1つは、見落としが減ることです。項目が並んでいれば、順番に見ていけます。

もうひとつの利点は、異常を書く欄があることです。丸だけの様式だと、異常があったときに書く場所がありません。異常の欄が無い様式は、異常を記録しない運用を作ります。

点検表テンプレート
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実際に使える様式が必要な方へ

日常点検の点検表が、商い屋の運送業向けのページにあります。この記事は何を見るかの側の話です。

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異常が見つかったときの流れ

点検で異常が見つかったときの流れも、先に決めておきます。決まっていないと、その場で運転者が判断することになります。

1つ目は、整備管理者への報告です。点検の結果は整備管理者に報告するとされています。異常があったかどうかにかかわらず、報告する形です。

2つ目は、運行の可否の判断です。整備管理者が、その車両を運行させてよいかを決めます。ここは運転者の判断ではありません。

3つ目は、整備の手配です。運行を止める場合、代わりの車両を出すか、便を組み替えるかを決めます。

異常が出たときの3段1報告する異常が無くても報2可否を決める整備管理者が判断3手配する代車か便の組み替
異常を見つけてから運行の可否が決まるまでの3段のフロー

整備管理者が不在の時間帯にどうするかも、決めておきます。早朝の出庫に整備管理者がいないという事業所は多くあります。電話で報告を受ける形、補助する人を決めておく形など、自社の運行の時間に合わせて組みます。

判断に迷う異常があったときの基準も、決めておくと早くなります。灯火が1つ切れている、タイヤの空気圧が低い、警告灯が点いている。それぞれで運行を止めるかどうかが変わります。止める基準を先に書いておけば、早朝の電話でも迷いません。

止めた場合の代わりの手当ても、同じ紙に書いておきます。予備の車両があるか、どの便を組み替えるか、荷主への連絡は誰がするか。止める判断がしやすくなるのは、その後の段取りが決まっているときです。

整備管理者と運行管理者は役割が違う

日常点検に関わるのは整備管理者で、点呼を行うのは運行管理者です。2つは別の資格で、別の業務とされています。

小さな事業所では、同じ人が両方を担うことがあります。それ自体は取れる形ですが、どちらの立場で行った判断かを記録に書き分けておくと、後から整理しやすくなります。

整備管理者は、日常点検の実施の方法を定め、その結果にもとづいて運行の可否を決め、定期点検を実施し、車庫の管理を行うといった業務を担うとされています。選任したときは届出が要り、研修を受けることも求められています。

2つの管理者は別の業務整備管理者日常点検の方法を定める運行の可否を決める定期点検を実施する車両の側を見る運行管理者点呼を行う乗務時間を管理する指導監督を行う人と運行の側を見る
整備管理者と運行管理者の業務を分けて並べた比較の図

巡回指導では、選任の届出と研修の受講が確かめられます。人が入れ替わったのに届出を出していない、という形は書類だけで分かるため、確実に拾われます。

続ける形にする3つの工夫

日常点検は、毎日のことなので形骸化しやすい項目です。続いている事業所の共通点は3つあります。

1つ目は、点検表を車両ごとに置くことです。事務所で受け取る形にすると、点検の前に紙を取りに行くことになります。車内に置いておけば、その場で書けます。

2つ目は、時間を見込んでおくことです。きちんと見れば5分から10分かかります。出庫の時刻から逆算して、点検の時間が入っていないと、形だけになります。

3つ目は、整備管理者が回ることです。月に何回か、出庫の時間に立ち会います。見ているだけで、点検の質は変わります。異常の報告も上がりやすくなります。

異常が報告されたときに嫌な顔をしない、というのも実は大きな要素です。報告すると便が遅れる、と分かっていれば、運転者は黙って出ます。

続けるための3つ車両ごとに置く取りに行く時間を無くす時間を見込む出庫から逆算して5分立ち会う月に何回か見に行く
点検表を車両に置く・時間を見込む・立ち会う、の3つを並べた層の図

日常点検と定期点検のつながり

日常点検で見たことは、定期点検につながります。毎日の点検で気づいた小さな変化が、3か月ごとの点検で確かめる材料になります。

つなげ方は簡単で、点検表の異常の欄に書いたものを、整備の依頼にそのまま渡すことです。「最近ブレーキの踏みしろが深い気がする」「右前のタイヤだけ減りが早い」といった記載は、整備工場にとって有用な情報になります。

逆に、日常点検の記録が丸だけだと、渡せる情報がありません。整備の側は、その日の状態だけを見ることになります。毎日見ている人にしか分からない変化が、そこで失われます。

3か月ごとの定期点検は、記録の保存が1年とされています。日常点検の記録も同じ場所に綴じておくと、車両ごとの履歴が1つにまとまります。車両が入れ替わるときの引き継ぎも、この束があれば足ります。

年に1回、車両ごとに異常の記録を並べてみると、同じ場所が繰り返し出ている車両が分かります。買い替えや大きな整備の判断も、その記録から出てきます。

まとめ

日常点検は、事業用自動車では1日1回、運行の開始前に行うとされています。自家用の乗用車とは求められ方が違います。

見る項目は、運転席・エンジンルーム・車の周りの3つの場所に分かれます。車両の種類によって項目が追加されるので、自社の車両に合わせた点検表を作ります。

記録は、運転日報に丸を1つ付ける形より、項目ごとに欄がある点検表のほうが、見落としが減り、異常も残ります。異常を書く欄が無い様式は、異常を記録しない運用を作ります。

点検の結果は整備管理者に報告し、整備管理者が運行の可否を判断します。整備管理者が不在の時間帯の扱いは、自社の運行の時間に合わせて先に決めておきます。判断に迷う点は、所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。

点検表テンプレート
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実際に使える様式が必要な方へ

日常点検の点検表が、商い屋の運送業向けのページにあります。項目ごとの欄と、異常を書く欄が入った形になっています。

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よくある質問

Q. 日常点検の記録に、法令で定められた保存期間はありますか。 A. 日常点検の記録そのものについて、保存期間が明示されているわけではないとされています。ただし、巡回指導や監査で実施の状況を確かめられるため、1年ぶんは手元に残しておく事業所が多くあります。定期点検の記録は1年保存とされているので、あわせて管理すると分かりやすくなります。

Q. 運転者以外が日常点検を行ってもよいですか。 A. 点検を行う人が運転者に限られているわけではありません。整備の担当者が行う形も取れます。ただし、その日にその車両を運転する人が状態を知っていることには意味があるため、運転者が行う形が一般的です。

Q. 同じ車両を1日に2人で使う場合、点検は2回要りますか。 A. 1日1回、運行の開始前に行うとされています。同じ日に運転者が交代する場合の扱いは、運行の形によって分かれます。交代の際に状態を引き継ぐ仕組みを別に作っている事業所もあります。

Q. 冬にエアタンクの水を抜き忘れると何が起きますか。 A. 凝水が凍ってブレーキの利きに影響することがあるとされています。寒い時期は、点検表の該当する項目を目立たせる、朝礼で声をかけるといった形で注意を向けます。

Q. 点検表は自社で作ってよいですか。 A. 作れます。自社の車両の種類に合わせて項目を決め、異常を書く欄と、整備管理者へ報告した記録の欄を入れておきます。既製の様式を使う場合も、自社の車両に無い項目や足りない項目が無いかを確かめます。

Q. タイヤの溝は、どれくらいまで残っていればよいですか。 A. 使用の限度が定められており、スリップサインで判断する形になります。点検のときに溝の深さを見る項目が入っているのはこのためです。限度に近いものは、次の定期点検を待たずに交換の手配をします。

Q. 日常点検を怠ると、どんな責任が問われますか。 A. 点検の未実施は、巡回指導や監査で指摘の対象になります。さらに、車両の不具合が原因の事故が起きた場合、点検を行っていなかったことが管理の不備として扱われます。記録が無ければ、行っていなかったものとして見られます。

Q. トレーラを連結する場合、点検はどうなりますか。 A. けん引する車両と、けん引される車両のそれぞれについて点検が要ります。連結の装置の状態も見る項目に入ります。自社の車両の構成に合わせて、点検表の項目を足しておきます。

Q. 出先で車両を乗り換えた場合も、点検が要りますか。 A. その車両の運行を開始する前に点検を行う形になります。出先での乗り換えがある運行では、点検表を車両側に置いておくと、誰が乗っても同じ形で点検できます。

Q. 日常点検を短い時間で済ませたい場合、省いてよい項目はありますか。 A. 見る項目は車両の種類に応じて定められているため、省く形は取れません。ただし、点検表の並びを場所の順にする、車内に置いて取りに行く時間を無くす、といった工夫で全体の時間は短くできます。項目を減らすのではなく、動線を短くする方向で考えます。

Q. 日常点検の結果を、整備管理者へどう報告すればよいですか。 A. 方法は決められていません。点検表を提出する、口頭で報告して整備管理者が確認欄に印を付ける、といった形が取られます。早朝で整備管理者が不在の場合は、電話や所定の場所への提出でも足りる形にしておきます。報告したことが分かる欄を点検表に作っておくと確実です。

Q. 点検表は何年分を残しておけばよいですか。 A. 日常点検の記録について保存の期間が明示されているわけではありませんが、定期点検の記録が1年保存とされていることに合わせて、1年ぶんを残している事業所が多くあります。車両ごとに綴じておくと、履歴として使えます。