アルコール検知器の選び方と「常時有効に保持」の中身
目次
アルコール検知器を買うところまでは進んだ。けれど、機種がたくさんあって何を基準に選べばよいのか分からない。買ったあと、どう管理すればよいのかも書いていない。ここで止まっている事業所は多くあります。
この記事では、アルコール検知器を、求められている要件・選ぶときの見どころ・買ったあとの管理の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社に合う機種を自分で選べる状態を目指します。
結論:性能の細かい規定は無い。求められるのは「常時有効に保持」
アルコール検知器とは、呼気に含まれるアルコールを検出して、酒気帯びの有無を示す機械のことです。確認のときに使うことが求められているとされています。
一般には、呼気中のアルコールを検知し、その有無または濃度を、音、色、数値などで示すことができるものであればよいとされています。型式の認定や、特定の規格への適合が条件になっているわけではありません。
ポイントはここです。選ぶときの制約は緩い代わりに、買ったあとの管理が求められます。アルコール検知器を常時有効に保持すること、つまりいつでも正しく測れる状態にしておくことが条件になっています。
この作りを外すと、「安い機種を買ったから大丈夫」という判断になりがちです。実際に問われるのは、その機種が今も正しく測れるかどうかのほうです。
センサーの方式で、寿命と価格が変わる
機種を分けるいちばん大きな違いは、センサーの方式です。一般に出回っているのは2つで、値段も寿命も違います。
半導体式は、安価で小型のものが多い方式です。1台あたりの価格が抑えられるので、運転者ごとに持たせる使い方に向いています。ただし、周囲のにおいや湿気の影響を受けやすく、寿命も比較的短いとされています。
電気化学式は、アルコールに反応する仕組みが選択的で、他のにおいの影響を受けにくいとされています。価格は上がりますが、測定できる回数や期間が長い機種が多くなります。事業所に据え置いて、多くの人が使う形に向きます。
どちらが正しいということはありません。運転者が事業所に集まる会社なら据置型を1台、直行直帰が多い会社なら携帯型を人数分、という分け方が実務に合います。使い方を先に決めてから機種を見ると、選択肢が一気に絞れます。
価格の見方も、1台の値段だけでは決まりません。センサーの寿命で割ると、1回あたりの費用が出ます。5,000円で3,000回測れる機種は1回あたり約1.7円、20,000円で20,000回測れる機種は1回あたり1円です。運転者が5人で1日2回なら、年間で約3,600回。ここまで出してから比べると、安く見えた機種のほうが高くつく場合があります。
消耗品の有無も見ておきます。マウスピースを使う機種は、衛生の面では優れていますが、人数ぶんの手当てが要ります。吹きかけるだけの機種は消耗品が要らない代わりに、口を近づける位置で数値が変わることがあります。どちらも運用でカバーできる差なので、先に自社の人数と朝の時間で考えます。
据置型と携帯型を、使い方で選び分ける
形の違いも、選ぶときの分かれ目になります。据置型は事業所に置いて全員が使うもの、携帯型は運転者が持ち歩くものです。
据置型の利点は、画面が大きく、印字や記録の機能が付いている機種があることです。測った結果がそのまま残るため、記録簿への転記が減ります。人数の多い事業所では、朝の待ち時間も短くなります。
携帯型の利点は、どこでも測れることです。直行直帰、出張、泊まりを伴う運行でも、その場で測って電話やビデオ通話で報告できます。紛失や電池切れが起きやすいので、予備の扱いを決めておく必要があります。
台数の考え方は、運転者の数ではなく、同じ時刻に測る人の数で決めます。朝8時に10人が集まるなら、据置型1台では列ができます。2台に分けるか、携帯型を併用するかを先に決めておきます。
「常時有効に保持」とは、具体的に何をするのか
条文の言葉だけでは動けないので、実務に落とします。求められているのは、いつ測っても正しい結果が出る状態を保つことです。
見るのは3つです。電源が入るか、損傷や汚れが無いか、メーカーが定める使用期限や測定回数の上限を超えていないか。この3つを周期を決めて確かめます。
周期の目安は、電源と外観は週に1回、正しく反応するかは月に1回という形が取りやすくなります。反応の確認は、アルコールを含む洗口液などを使って、検知されることを確かめる方法が案内されている機種があります。説明書に手順が書かれているかどうかも、選ぶときの見どころになります。
確かめた結果は、記録に残します。アルコールチェック記録簿とは別に、検知器の点検簿を1枚持っておくと、後から「いつ確かめたか」を示せます。壊れていないことを証明できるのは記録だけです。
センサーには寿命がある。期限の管理に入れる
見落としやすいのが、センサーの寿命です。使用回数で決まるものと、購入からの期間で決まるものがあり、機種によって違います。
半導体式では、数千回または1年前後で交換や買い替えを案内している機種があります。電気化学式では、1万回を超える機種や、数年もつ機種もあります。買ったときの説明書に書かれている数字を、その場で控えておくのが要点です。
控えた数字は、車検や免許証の更新と同じ管理表に入れておきます。別の表にすると、見に行く先が増えて忘れます。期限のあるものは1枚にまとめるのが、切らさないための基本です。
寿命が近づくと、測定値が出にくくなったり、逆に反応しすぎたりすることがあります。月に1回の反応の確認で様子が変わったと感じたら、回数や期間を確かめます。
交換のタイミングは、上限に当たってからではなく、手前で決めます。使用回数が上限の8割に達した時点で次を手配する、期限の1か月前に発注する、といった線を引いておくと、切れた日に測れない事態を避けられます。
数値が出たときに迷わないための線引き
機械を入れると、次に出てくるのが「この数値なら乗ってよいか」という問いです。ここは先に決めておかないと、朝の現場で判断が割れます。
前提として、酒気を帯びた状態での運転は認められていません。数値が低ければよいという線は引けません。検知器が反応した時点で、その日は運転させない扱いにしている事業所が多くあります。
そのうえで、決めておきたいのは3つです。反応が出たときに誰が判断するか、その運転者の便を誰が代わるか、記録の指示の欄に何と書くか。この3つが決まっていないと、判断する人がその場で困ります。
うがい薬や栄養ドリンク、パンなど、アルコールを含むものを直前に口にしていた場合、一時的に反応することがあります。水でうがいをして時間をおいてから測り直す手順を決めておくと、原因の切り分けができます。測り直したこと自体も記録に残すのが要点で、消してしまうと後から説明できません。
買ってから運用に乗せるまでの手順
機種が決まったら、運用に乗せるところまでを続けて決めます。ここで止まると、箱から出されないまま置かれることになります。
決めるのは4つです。置き場所、測る順番、結果を誰が見るか、壊れたときにどうするか。置き場所は記録簿のすぐ横にします。測ってから席に戻って書く形にすると、書き忘れが出ます。
測る順番は、朝礼の前か後かを決めます。人数が多い事業所では、班ごとに時間をずらす形にしておくと列ができません。
壊れたときの手順は、先に決めておかないとその日の記録が空きます。予備を1台持つ、近くの営業所から借りる、その日は目視等の確認を行って理由を記録に書く。どれを選ぶかを決めておけば、当日に迷いません。
結果を誰が見るかも、決めておく項目です。運転者が自分で測って自分で記録する形にすると、確認した人の欄が埋まりません。測るのは本人でよいが、見るのは別の人という形にしておくと、記録簿の項目がそのまま埋まります。
導入した最初の1週間は、運用が決まりきらないものとして見ておきます。列ができる、記録簿が遠い、携帯型の電池が切れる、といった問題は、実際に回してみないと出てきません。1週間後に1回だけ見直す日を決めておくと、そのまま固まらずに済みます。
まとめ
アルコール検知器には、性能についての細かい規定が置かれていません。呼気中のアルコールの有無を音、色、数値などで示せるものであればよいとされています。
代わりに求められるのが、常時有効に保持することです。電源が入るか、損傷や汚れが無いか、使用期限や測定回数の上限を超えていないかを、周期を決めて確かめます。
センサーの方式は半導体式と電気化学式があり、寿命と価格が違います。据置型と携帯型の選び分けは、運転者の動き方で決めます。直行直帰が多いなら携帯型、事業所に集まるなら据置型が素直です。
センサーの寿命は、車検や免許証と同じ期限の管理表に入れておきます。判断に迷う点は、所轄の警察署に確かめるのが確実です。
実際に使える様式が必要な方へ
アルコールチェックの記録簿と、期限をまとめて管理できるExcelの表が、商い屋の運送業向けのページにあります。検知器の寿命も同じ表に入れられます。
この様式をひらくよくある質問
Q. スマートフォンにつなぐタイプの検知器でもよいですか。 A. 呼気中のアルコールの有無を示せるものであればよいとされているため、接続の形で除かれるわけではありません。ただし、常時有効に保持できること、結果を記録に残せることが確かめられる形にしておきます。アプリの提供が止まったときにどうするかも、選ぶときに見ておくと安心です。
Q. 1台を何人で使ってもよいですか。 A. 台数の決まりは置かれていません。ただし、同じ時刻に測る人数が多いと列ができ、朝の運行に影響します。マウスピースを使う機種では、人数分の消耗品が要る点も見ておきます。
Q. 検知器が反応したとき、もう一度測り直してよいですか。 A. 測り直すこと自体は取れます。直前にうがい薬や食品を口にしていた場合、一時的に反応することがあるためです。ただし、測り直しを繰り返して数値が下がるのを待つ形は取れません。測り直した場合は、その経過も記録に残します。
Q. 検知器の点検簿に決まった様式はありますか。 A. 決まった様式はありません。日付、確かめた内容、結果、確かめた人の氏名が残る形であれば足ります。アルコールチェック記録簿の裏面や末尾に欄を作っている事業所もあります。
Q. 使用期限が切れた検知器を、そのまま使い続けてもよいですか。 A. 常時有効に保持しているとは言えない状態になります。期限や測定回数の上限を超えたものは、センサーの交換か買い替えが必要です。切らさないために、購入した日と上限の数字を期限の管理表に入れておきます。
Q. 検知器を使わず、目視だけで確認してもよい場合はありますか。 A. 検知器が故障している場合などに限られます。その場合も、目視等による確認を行ったこと、検知器が使えなかった理由を記録に残します。記録が空白のままだと、確認していなかったものとして扱われます。
Q. 検知器を複数の営業所で使い回してもよいですか。 A. 台数の決まりは置かれていないので、使い回すこと自体は取れます。ただし、確認は業務の開始前と終了後に行うものなので、営業所をまたいで持ち運ぶと、どちらかの時刻に間に合わないことが起きます。移動の時間まで含めて回るかどうかを先に確かめておきます。
Q. 寒い場所や暑い車内に置いたままでも大丈夫ですか。 A. 機種ごとに使用できる温度の範囲が決められています。範囲を外れた場所に置くと、測定値が安定しないことがあります。携帯型を車内に置きっぱなしにする運用は避け、持ち帰るか事業所に戻す形にしておくほうが安全です。
Q. 中古の検知器を譲り受けて使ってもよいですか。 A. 使えないわけではありませんが、前にどれだけ使われたかが分からないと、常時有効に保持していることを示せません。譲り受ける場合は、購入した日と、それまでの使用回数が分かる形で引き継ぎます。分からないなら、センサーを交換してから使い始めるほうが安全です。
Q. 検知器の結果を印字できる機種のほうがよいですか。 A. 印字や記録の機能があると、記録簿への転記が減り、書き間違いも減ります。人数の多い事業所では効いてきます。ただし、印字した紙をそのまま保存する形にすると、感熱紙は時間が経つと消えることがあります。データで残せる機種のほうが、1年の保存には向いています。