重大事故の速報とは?24時間以内に伝える相手と中身
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事故報告書は30日以内。そこまでは知っている。けれど、それとは別に24時間以内の連絡が要る事故があると聞いて、自社のどの事故が当たるのかが分からない。夜中に事故の連絡が来たとき、誰に何を伝えるのかも決まっていない。
この記事では、重大事故の速報を、対象・期限・伝える中身の3つに分けて整理します。読み終えたときに、事故の連絡を受けたその場で、速報が要るかどうかを判断できる状態を目指します。
結論:重大事故の速報は、報告書とは別の仕組み
重大事故の速報とは、特に重い事故が起きたときに、24時間以内にできる限り速やかに、電話や電子メールなどで運輸支局に知らせることです。自動車事故報告規則に定められているとされています。
30日以内に提出する自動車事故報告書とは、別の仕組みです。速報を出したから報告書は要らない、という関係にはなりません。両方を出すことになります。
ポイントはここです。速報の対象は、報告書の対象より狭くなっています。報告書に当たる事故のうち、特に重いものだけが速報の対象です。逆に言えば、速報が要る事故は必ず報告書も要ります。
この入れ子の関係を押さえておくと、判断が早くなります。速報が要るかどうかを先に見て、要るなら報告書も自動的に要る、という順番で確かめられます。
速報が必要になる事故
速報の対象として挙げられているのは、次のようなものです。数字が付いているものが多いので、覚えるより一覧を手元に置く形が実務的です。
2人以上の死者が出た事故。5人以上の重傷者が出た事故。10人以上の負傷者が出た事故。人の被害では、この3つが挙げられています。
酒気帯び運転があったもの。これは被害の大きさに関係なく速報の対象とされています。自社の運転者に酒気帯びがあった事故は、軽い接触であっても速報が要る形になります。
旅客に重傷者が出た事故や、自動車の装置の故障により運行を継続できなくなったもののうち一定のものなども挙げられています。
自社の事業の区分によって、当たるものが変わります。貨物と旅客では挙げられている内容が違うため、自社に関係する行だけを抜き出した一覧を作っておくと、夜中でも迷いません。
一覧を作るときは、数字を大きく書くのが要点です。「2人以上の死者」「5人以上の重傷者」「10人以上の負傷者」。この3つの数字さえ見えていれば、けが人の数を聞いた時点で当たりが付きます。条文の言葉をそのまま写すと、夜中に読んでも頭に入りません。
重傷の意味も、一覧の脇に書いておきます。入院を要する傷害で医師の治療期間が30日以上のもの、といった形で定められています。現場では「重傷かどうか」はすぐに分からないので、救急車で搬送されて入院したなら重傷の可能性がある、という見当の付け方をしておきます。
判断が付かない場合は、対象だと考えて連絡する側に倒します。後から対象外だったと分かっても困ることはありません。
24時間の数え方と、連絡の方法
24時間は、事故があったときから数えます。深夜に起きた事故なら、翌日の同じ時刻までということになります。営業日ではなく時間で数えるため、金曜の夜の事故は土曜のうちに動くことになります。
連絡の方法は、電話や電子メールなど、速やかに伝えられる手段とされています。書面を作って郵送する形では間に合いません。
実務で問題になるのは、夜間と休日の連絡先を知らないことです。平日の日中の代表番号しか控えていないと、つながりません。運輸支局の案内に夜間の連絡先が出ている場合があるので、あらかじめ確かめて紙に控えておきます。
控えておく紙には、運輸支局の連絡先のほかに、社内の誰に連絡するかも書いておきます。運行管理者、その代わりの人、事業者。夜中に電話を受けた人が、順番に見て動ける形にしておくのが要点です。
速報で伝える中身
速報の段階では、分かっていないことのほうが多いのが普通です。その時点で分かっている範囲で伝える形になります。
伝えるのは、事業者の名称と連絡先、事故の発生日時と場所、事故の概要、死傷者の数と程度、当事者の車両、運転者の氏名といったところです。
分からない項目は「確認中」と伝えます。全部そろうまで待つと、24時間を過ぎます。後から分かったことは、報告書や続報で伝える形になります。
伝えた内容と、伝えた日時、伝えた相手の氏名は、社内に控えておきます。控えが無いと、速報を出したこと自体を後から示せません。電話で伝えた場合も、その場でメモを1枚残す形にしておきます。
夜中に電話を受けた人が動ける形にする
速報でいちばん多いつまずきは、制度を知らないことではなく、夜中に連絡を受けた人が何をすればよいか分からないことです。
置いておくのは1枚の紙です。書くのは4つ。確かめること、連絡する先、伝える中身、控えを残す場所。確かめることは、けが人の数と程度、酒気帯びの有無、車両の状態の3つで足ります。
この3つが分かれば、速報が要るかどうかの見当が付きます。けが人が5人以上、死者が2人以上、酒気帯びがあった。どれかに当たれば、その場で運輸支局に連絡します。
迷ったときは、連絡してしまうほうが安全です。速報の対象でなかった場合に、出したことで不利になる扱いはありません。逆に、対象だったのに出していないと、後の監査で問われます。
紙に書いておく連絡先は、年に1回は確かめます。運輸支局の番号や受付の時間は変わることがあります。古い番号のまま貼ってあると、夜中にかけて初めて気づくことになります。免許証や車検と同じ期限の管理表に「連絡先の確認」の行を入れておくと、忘れずに回せます。
紙は、事務所の電話のそばと、運行管理者の手元の2か所に置きます。1か所だけだと、その場にいない人が使えません。
連絡を受ける側の順番を決めておく
夜間の事故で止まりやすいのは、誰に連絡が入るかが決まっていない場合です。運転者は、まず誰に電話すればよいのかを知っている必要があります。
決めるのは3段です。1番目に連絡する人、その人が出ないときの2番目、さらに出ないときの3番目。携帯電話の番号まで含めて、運転者が持っている紙か、車内に貼った紙に書いておきます。
1番目は運行管理者、2番目はその補助者か別の運行管理者、3番目は事業者、という並びが一般的です。人数の少ない事業所では、2番目まででかまいません。空欄を残さないことが要点で、空いていると運転者はそこで止まります。
連絡を受ける側の準備も要ります。夜間に電話が鳴ることが分かっているなら、着信音を切らない設定にしておく、休みの日の当番を決めておく、といった段取りです。制度の話ではありませんが、ここが抜けると24時間はすぐ過ぎます。
運転者には、連絡するときに伝える内容も先に渡しておきます。場所、けが人の有無と人数、車両が動くかどうか、警察を呼んだかどうか。この4つを聞ける形にしておけば、受けた側がその場で判断できます。
速報のあとに何をするか
速報を出したら、そこで終わりではありません。続けて動くのは3つです。
1つ目は、30日以内の報告書の準備です。速報で伝えた内容に、原因と再発防止の対策を足す形になります。速報の控えがあれば、日時や場所を書き写すだけで済みます。
2つ目は、社内の事故の記録です。運行管理者の業務として、事故の記録を3年間保存することが求められているとされています。速報の対象になるような事故は、記録の中身も厚くなります。
3つ目は、運行の見直しです。重い事故のあとは、監査が入ることがあります。そのときに見られるのは、事故そのものより、事故のあとに何を変えたかです。
見直した内容は、記録に残します。点呼で聞く項目を足した、経路を変えた、便の組み方を変えた。日付とともに残っていれば、動いた証拠になります。
監査で見られるのは、変えた内容そのものより、変えたことが続いているかです。事故の直後だけ点呼を厚くして、3か月後には元に戻っている、という形は記録から読み取れます。続けられる大きさの対策にしておくほうが、結果として評価されます。
まとめ
重大事故の速報は、24時間以内にできる限り速やかに、電話や電子メールなどで運輸支局に知らせる仕組みです。30日以内の自動車事故報告書とは別で、両方を出すことになります。
対象は報告書より狭く、2人以上の死者、5人以上の重傷者、10人以上の負傷者、酒気帯び運転があったものなどが挙げられています。酒気帯びは被害の大きさに関係なく対象になります。
伝えるのは、その時点で分かっている範囲で足ります。分からない項目は確認中と伝え、後から報告書や続報で補います。
夜間や休日の連絡先を紙に控え、確かめること・連絡先・伝える中身・控えの置き場所を1枚にまとめておきます。自社の事業の区分でどれが対象になるかは、所轄の運輸支局に確かめるのが確実です。
実際に使える様式が必要な方へ
30日以内に出す事故報告書のExcelの様式が、商い屋の運送業向けのページにあります。速報の控えから、そのまま書き写せる形になっています。
この様式をひらくよくある質問
Q. 速報を出す相手は、警察ではなく運輸支局ですか。 A. 速報は運輸支局が相手になります。警察への届出は道路交通法にもとづくもので、別の手続きです。保険会社への連絡も含めて、3つを別々に進めることになります。
Q. 24時間を過ぎてしまった場合はどうすればよいですか。 A. 過ぎたことに気づいた時点で、速やかに連絡します。出さないままにしておくより、遅れた理由とともに伝えるほうが安全です。あわせて、なぜ気づかなかったのかを社内で確かめ、手順を直します。
Q. 自社の運転者にけがが無く、相手方だけが重傷の場合も対象ですか。 A. 対象になるかどうかは、自社か相手方かではなく、事故によって生じた被害で判断する形になります。相手方に5人以上の重傷者が出ていれば対象に当たります。判断に迷う場合は運輸支局に確かめます。
Q. 酒気帯び運転があった場合、けが人がいなくても速報が要りますか。 A. 酒気帯び運転があったものは、被害の大きさに関係なく速報の対象として挙げられています。物損だけの事故であっても対象に当たる形になります。
Q. 速報はメールでもよいのですか。 A. 電話や電子メールなど、速やかに伝えられる手段であればよいとされています。ただし、メールは読まれるまでに時間がかかることがあります。夜間であれば電話でつないだうえで、内容をメールで送る形が確実です。
Q. 速報を出したことを、どう記録に残しますか。 A. 決まった様式はありません。伝えた日時、伝えた相手の氏名、伝えた内容を1枚のメモに残し、事故の記録と一緒に綴じておきます。30日以内の報告書を作るときの下書きにもなります。
Q. 速報を出すと、必ず監査が入りますか。 A. 速報を出したことが直ちに監査につながるわけではありません。ただし、重い事故は監査の端緒になることがあるとされています。速報を出さなかったからといって監査を避けられるわけではなく、出していないこと自体が指摘の対象になります。
Q. 運転者が救急搬送されて連絡が取れない場合はどうしますか。 A. 警察や病院、同乗者、荷主など、分かる範囲から状況を集めて連絡します。速報は分かっている範囲で伝えるものなので、運転者本人から話を聞けるまで待つ必要はありません。連絡が取れない状況であること自体も伝えます。
Q. 高速道路上の事故で、現場にすぐ行けない場合も24時間は変わりませんか。 A. 期限は事故があったときから数えるため、現場に行けるかどうかで変わりません。現場に向かう人と、運輸支局に連絡する人を分ける形にしておくと、両方が進みます。1人で全部を抱えると、どちらかが遅れます。
Q. 速報の対象になる事故が起きたあと、運転者にはどう伝えればよいですか。 A. 速報は会社が行う手続きなので、運転者に作業を増やす必要はありません。ただし、事故の直後は本人も動揺しています。「会社のほうで手続きを進めるので、聞かれたことに答えてほしい」と先に伝えておくと、必要な情報が集まりやすくなります。