実運送体制管理簿とは?1.5トンの線と記載事項
目次
下請けに出した荷物を、最後に誰が運んだのか。元請の手元に、その答えを1年分そろえておく書類が実運送体制管理簿です。2025年4月1日に施行された改正貨物自動車運送事業法で、作成と保存が元請に義務づけられました。
この記事では、作る義務がかかる場面(1.5トンの線と元請の条件)、必須の記載事項、請負階層の数え方、下請けからの情報の集め方、配車表を使った書き方、保管期間と罰則、2026年4月からの変更までを、条文と国土交通省のQ&A(令和8年3月31日時点)に沿って整理します。自社の運送が対象になるかの最終的な判断は、所轄の運輸支局か地方運輸局に確認してください。
実運送体制管理簿とは?元請が作る1年保存の記録
実運送体制管理簿は、真荷主から引き受けた貨物の運送について、実際にトラックを走らせた事業者(実運送事業者)の名前と、その事業者が何次請けだったかを記録する帳簿です。根拠は貨物自動車運送事業法第24条の5で、記載すること、作る人、保存の年数まで条文に書かれています。
ねらいは、多重下請けの形を見えるようにすることです。荷主から見ると、元請に頼んだ荷物を誰が運んだのかは、これまで分かりませんでした。下請けが重なるほど運賃は途中で差し引かれ、実際に運ぶ会社の取り分が薄くなります。誰が何次で運んだかが記録に残れば、荷主は元請に説明を求められ、元請は下請けの使い方を見直す材料を持てます。
押さえる骨組みは3つです。
1つ目は、作るのは元請だということです。真荷主から直接運送を引き受けた事業者が作ります。下請けの側に作る義務はありませんが、元請に情報を伝える義務がかかります。
2つ目は、作るのは他社に運ばせたときだけだということです。引き受けた荷物をすべて自社のトラックで運んだなら、作る必要はありません。一部でも他社に運ばせたら対象になります。
3つ目は、運送が終わった日から1年間、営業所に備え置くことです。国への定期的な提出はありませんが、監査や調査で求められたら出します。
似た名前の書類に、運送契約のときに荷主と互いに交わす運送引受書があります。運送引受書は荷主との契約の中身を書く書類で、実運送体制管理簿はその荷物を下請けの誰が運んだかを書く書類です。同じ運送について両方が要る場面が多いので、セットで整えると漏れが減ります。
実運送体制管理簿の対象:1.5トンの線と元請の条件
実運送体制管理簿を作る義務がかかるのは、次の3つが全部そろったときです。
- 真荷主から直接、貨物の運送を引き受けた(=元請である)
- その運送の重さが1.5トン以上である
- その運送の全部か一部を、他の運送事業者に運ばせた
1.5トンという数字は、貨物自動車運送事業法施行規則第13条の13に定められています。
真荷主とは誰か
真荷主とは、自分の事業のために運送事業者と運送契約を結んで荷物を預ける人で、運送事業者・利用運送事業者ではない人とされています。メーカー、卸、小売などが当たります。一般の消費者は「自らの事業に関して」に当たらないので、真荷主に含まれません。
運送会社から仕事を受けた場合、その相手は真荷主ではありません。この場合、自社は元請ではないので実運送体制管理簿は作らず、後で説明する通知の側に回ります。
1.5トンは「荷主から頼まれた時点」の重さで見る
Q&Aでは、1.5トンの判定は真荷主から運送の依頼があった時点で行うとされています。実際に走るトラックに何トン積んだか、途中で混載したかは関係ありません。
判断に迷いやすい形を表にまとめます。
| 場面 | 判定 | 考え方 |
|---|---|---|
| 1回の依頼で2トン。配達先が3か所で、それぞれ1トン未満 | 対象 | 1つの運送契約なら、依頼全体の重さで見る |
| 配達先ごとに別の契約で、それぞれ1トン未満 | 対象外 | 契約ごとの重さで見る |
| 基本契約で月に合計5トン。1回ずつの依頼は1トン未満 | 対象外 | 依頼1回ごとの重さで見る |
| 実重量が分からない | 容積換算重量で判断してよい | Q&Aで認められている |
| 2トンを引き受け、全部を自社で運んだ | 対象外 | 他社に運ばせていない |
積合せの運送も同じ考え方です。1回の運送依頼あたりの重さが1.5トン以上かどうかで決まります。
例外は「災害その他緊急やむを得ない場合」だけ
作らなくてよいのは、災害など緊急でやむを得ない場合です。Q&Aでは、単なるスポットの運送はこれに当たらないとされています。急に頼まれた仕事だから作らなくてよい、とはなりません。
実運送体制管理簿の必須項目と請負階層の数え方
実運送体制管理簿の必須項目は、条文で3つに決まっています。
| 必須項目 | 書く中身 | 書き方の目安 |
|---|---|---|
| 実運送事業者の商号又は名称 | 実際に運んだ会社の名前 | 会社単位でよい |
| 貨物の内容及び区間 | 何を、どこからどこまで | 「食料品」「東京〜大阪」の粒度でもよい |
| 実運送事業者の請負階層 | 何次請けか | 元請、1次請け、2次請け… |
Q&Aでは、記載の粒度はどの運送の記録か、真荷主と元請の両方が分かればよいとされています。運送区間を都道府県単位で書くことも、貨物の内容を「雑貨」のようにまとめることもできます。車番やドライバー名は必須ではありません。国土交通省のリーフレットの記入イメージには、赤枠で示した必須の列とは別に、車番とドライバー名の列が載っています。
ただし、真荷主は元請に対して実運送体制管理簿の閲覧や写しを求めることができます。荷主に見せたときに、自分の荷物のどの運送か分かる書き方にしておくと、問い合わせへの対応が速くなります。
請負階層は「真荷主との契約の後に結ばれた契約の数」
実運送体制管理簿の請負階層は、真荷主と元請の契約の後に、運送契約が何回結ばれたかで数えます。元請の委託先が1次請け、1次請けの委託先が2次請け、と契約のたびに1つ増えます。元請が自社で運んだ部分は「元請」と書きます。
数え方で迷う場面は2つあります。
1つ目は、荷物のマッチングサービスを挟んだ場合です。そのサービス事業者が第一種貨物利用運送事業者であれば、運送契約の当事者になるので階層に数えます。利用運送事業者でなければ、契約の当事者ではないので数えません。
2つ目は、荷主の物流子会社が入る場合です。資本関係があっても、物流子会社が運送事業者・利用運送事業者として親会社と運送契約を結んでいるなら、階層に含まれます。「グループ内だから数えない」とはならないので、物流子会社を通した仕事を受けている会社は特に注意が要ります。
実運送体制管理簿のための情報の集め方:下請けからの通知
実運送体制管理簿を元請が書けるように、法律は下請けの各社に通知の義務をかけています。元請が電話で一社ずつ聞いて回る形を、通知の流れに置きかえた仕組みです。
元請から委託先へ伝えること
元請は、対象の運送を他社に頼むときに、次の3つを委託先へ通知します。
- 元請事業者の連絡先
- 真荷主の商号又は名称
- 委託先の請負階層(「御社は1次請けです」)
このとき、その運送が実運送体制管理簿の作成対象であることも、はっきり伝えるようQ&Aで求められています。委託先が対象だと知らなければ、その先の通知が止まるためです。
中間の事業者がさらに再委託するとき
1次請けがさらに2次請けに出すときは、元請から受け取った連絡先と真荷主の名前に、再委託先の請負階層を足して伝えます。2次請け、3次請けと続く場合も、同じ通知を繰り返します。
実際に運んだ事業者から元請へ返すこと
実運送事業者は、運び終えたら、通知に書かれた元請の連絡先へ、実運送体制管理簿の必須項目と同じ3つ(自社の名前、運んだ貨物の内容と区間、自社の請負階層)を通知します。中間の会社を経由する必要はなく、元請へ直接返す形です。
実運送体制管理簿(真荷主ごと・必須3項目つき)
貨物自動車運送事業法第24条の5の必須3項目(実運送事業者の商号又は名称、貨物の内容及び区間、請負階層)を列にした実運送体制管理簿です。真荷主ごとに1枚使い、下請けから通知を受けた日も残せます。
Excelを見る・ダウンロード通知が来なかったときの責任
Q&Aでは、通知が途中で止まって実運送体制管理簿が作れなかった場合、一義的には通知を滞らせた事業者に責任があるとされ、その事業者が行政処分の対象になりうるとされています。とはいえ元請も、通知が来ないからと放っておいてよいわけではなく、実運送事業者と請負階層の把握に取り組むよう求められています。
実務で回すなら、通知の様式を元請の側で用意して、委託先に配ってしまうのが確実です。たとえば発注書の欄外に「実運送体制管理簿の作成対象(1.5トン以上)」の印と、返信用の3項目(会社名・区間と貨物・何次請けか)を刷っておくと、委託先は書いて返すだけで済みます。返ってこない運送は、配車担当が週に1回まとめて催促する、という形にしておけば漏れが見えます。
実運送体制管理簿の書き方と記入例:配車表を使ってよい
実運送体制管理簿に決まった様式はありません。Q&Aでは、必要な事項が書かれていれば、いまの配車表を使ってもよいとされています。電子データでの作成・保存もできます。
いちばん手間が少ないのは、配車表に列を足す方法です。
| 積込日 | 運送区間 | 貨物の内容 | 実運送事業者の商号又は名称 | 請負階層 |
|---|---|---|---|---|
| 10/6 | 埼玉工場〜大阪倉庫 | 飲料 | 自社(青葉運輸) | 元請 |
| 10/6 | 埼玉工場〜名古屋倉庫 | 飲料 | 白石物流 | 1次請け |
| 10/7 | 埼玉工場〜仙台倉庫 | 飲料 | 北辰トランスポート | 2次請け |
記入例の会社名は架空のものです。
書くときの注意は3つです。
1つ目は、自社で運んだ分も1行にしておくことです。一部だけ他社に運ばせた運送は対象になるので、自社の分を「元請」として並べておくと、その運送の全体が1枚で分かります。
2つ目は、真荷主ごとに見られるようにしておくことです。真荷主から閲覧を求められたとき、他の荷主の取引まで見せることになると困ります。真荷主ごとにシートを分けるか、絞り込める列を用意しておきます。
3つ目は、作る時期を決めておくことです。作成期限の定めはありませんが、Q&Aでは運送完了後、遅滞なく作るのが望ましいとされています。通知を受け取った日に書き写す、と決めておくのが現実的です。
委託先がいつも同じなら、毎回は書かなくてよい
施行規則第13条の14には、運送を引き受ける時点で、元請から実運送事業者までの一連の委託関係が明らかになっている場合は、運送ごとに作らなくてよいと定められています。系列で取引の形が固まっている場合などです。
この場合は、その真荷主の運送を引き受けてから最初の運送で実運送体制管理簿を作れば、以後は記録しなくてよいとされています。貨物の内容や区間が変わっても、委託関係と実運送事業者が同じなら追加は要りません。ただし、1社でも違う会社が入った運送はその都度記録し、最初の記録から1年たったら、そこから最初の運送で記録し直します。
「委託先を2〜3社に絞っている」だけでは、この例外に当たらないことがあります。Q&Aでは、荷物の種類や区間で委託先を使い分けていて、引き受けた時点で実運送事業者と階層が実質的に決まっている場合は例外に当たり、決まっていない場合は運送ごとに記録が要るとされています。迷う場合は毎回書いておくほうが安全です。
実運送体制管理簿の保管期間と罰則
実運送体制管理簿の保管期間は、引き受けた運送が完了した日から1年間で、営業所に備え置きます。紙でも電子データでもかまいません。電子データの場合は、閲覧を求められたときに紙か画面に表示できるようにしておきます(施行規則第13条の15)。
運送業の帳簿は、書類ごとに保存の年数と数え始めの日が決まっています。棚やフォルダを分けるときは、運送業の書類の保存期間一覧とあわせて整理すると、捨ててよい時期を間違えません。
罰則については、Q&Aで「罰則はありません」とされています。ただし、貨物自動車運送事業法第33条にもとづく行政処分の対象になる可能性があるとされています。国への定期的な提出はありませんが、監査や、トラック・物流Gメンの調査で求められたら提出します。
Gメンの調査では、荷主側の行為や運賃の状況とあわせて取引の形が見られます。実運送体制管理簿は、元請が下請けをどう使っているかがそのまま表に出る書類です。荷主への勧告や標準的な運賃の話とつながっているので、運賃交渉の資料としても扱えます。
実運送体制管理簿はいつから?2026年4月の改正までの動き
実運送体制管理簿は、2024年5月15日に公布された改正物流法(令和6年法律第23号)の第4条で、貨物自動車運送事業法に加えられました。施行は2025年4月1日で、この日以後に他社の運送を利用した分から作成の対象です。
そのあと、2025年6月11日に公布された「トラック適正化2法」(令和7年法律第60号・第61号)で、範囲が広がりました。2026年4月1日から施行された主な変更は次のとおりです。
- 貨物利用運送事業者が元請になる場合も、実運送体制管理簿の作成が義務になった
- 元請に、二次委託より先の再委託を抑えるよう努める義務(努力義務)がかかった
- 違法な白ナンバートラックに運送を頼んだ荷主などにも、罰則がかかるようになった
利用運送事業者については、施行日以後に委託先へ運送を頼んだものから対象になります。基本契約が施行日より前に結ばれていても、運送の依頼が施行日以後なら対象です。
再委託を抑える努力義務には、罰則も行政処分もありません。ただ、元請が実運送体制管理簿を見れば、2次請け、3次請けまで下りている運送が一目で分かります。努力義務に取り組んだかどうかを説明する材料も、この帳簿から出てくることになります。
このほか、トラック事業の許可の更新制度と、国土交通大臣が定める「適正原価」を下回る運賃の制限が、公布から3年以内に施行される予定とされています。実運送体制管理簿で下請けの形を記録しておくことは、こうした制度に対応するための土台にもなります。
まとめ
実運送体制管理簿は、元請が「誰が何次請けで運んだか」を1年分そろえておく帳簿です。
- 作るのは真荷主から直接引き受けた元請。全部を自社で運んだなら不要
- 対象は、真荷主から1回の依頼で1.5トン以上を引き受け、一部でも他社に運ばせた運送
- 必須項目は、実運送事業者の名前、貨物の内容と区間、請負階層の3つ。様式は自由で、配車表に列を足してよい
- 下請けは元請へ通知する義務がある。通知の様式は元請が用意して配ると回る
- 保管は運送完了日から1年、営業所に備え置く。罰則はないが行政処分の対象になりうる
- 2026年4月からは、利用運送事業者が元請の場合も作成が義務になった
扱いに迷う運送は、Q&Aで確かめたうえで、所轄の運輸支局か地方運輸局に確認してください。
実運送体制管理簿(真荷主ごと・必須3項目つき)
貨物自動車運送事業法第24条の5の必須3項目(実運送事業者の商号又は名称、貨物の内容及び区間、請負階層)を列にした実運送体制管理簿です。真荷主ごとに1枚使い、下請けから通知を受けた日も残せます。
Excelを見る・ダウンロードよくある質問
Q. 実運送体制管理簿はいつから作る必要がありますか。 A. 2025年4月1日の施行日以後に、他社の運送を利用した分からです。貨物利用運送事業者が元請になる場合は、2026年4月1日以後に委託先へ依頼したものから対象とされています。
Q. 1.5トン未満の荷物ばかりの場合はどうなりますか。 A. 真荷主からの1回の運送依頼が1.5トン未満なら、作成の対象になりません。ただし1回の依頼で配達先が複数ある場合は、契約が1つなら全体の重さで見ます。
Q. 下請けに出しても、自社が1次請けなら作らなくてよいですか。 A. 1次請けは元請ではないので、作成の義務はありません。代わりに、再委託先への通知か、元請への実運送事業者情報の通知が必要です。
Q. 車番やドライバー名も書く必要がありますか。 A. 必須項目には入っていません。実運送事業者は会社単位で書けばよいとされています。社内で使うために列を残すのはかまいません。
Q. 決まった様式はありますか。 A. ありません。必要な3項目が書かれていれば、配車表を使ってもよいとされています。国土交通省のリーフレットに記入のイメージが載っています。
Q. 紙で保存しないといけませんか。 A. 電子データでの作成・保存もできます。閲覧を求められたときに、紙か画面に表示できるようにしておきます。
Q. 保存期間は何年ですか。 A. 引き受けた運送が完了した日から1年間です。営業所に備え置きます。
Q. 罰則はありますか。 A. Q&Aでは罰則はないとされています。ただし行政処分の対象になる可能性があるとされています。
Q. 下請けから通知が来ません。どうすればよいですか。 A. 通知を滞らせた事業者が一義的な責任を負うとされていますが、元請も把握に取り組むよう求められています。返信欄つきの発注書を配る、週に1回まとめて催促するなど、仕組みで回すのが確実です。
Q. 荷主から実運送体制管理簿を見せてほしいと言われました。 A. 真荷主は、業務時間内であればいつでも閲覧や写しを求めることができます。他の荷主の取引が見えないよう、真荷主ごとに絞り込める形にしておくと対応しやすくなります。
Q. 荷主の物流子会社から仕事を受けています。階層はどう数えますか。 A. 物流子会社が運送事業者・利用運送事業者として契約しているなら、階層に数えます。物流子会社が元請になり、その委託先の自社は1次請けです。
Q. 委託先が毎回同じです。毎回書く必要がありますか。 A. 引き受けた時点で元請から実運送事業者までの委託関係が明らかなら、最初の運送で作れば以後は不要とされています。1社でも違う会社が入った運送は、その都度記録します。
Q. 求貨求車のマッチングサービスを使った場合はどう数えますか。 A. サービス事業者が第一種貨物利用運送事業者なら、契約の当事者として階層に数えます。そうでなければ数えません。
Q. 国に提出する必要はありますか。 A. 定期的な提出はありません。監査や、トラック・物流Gメンの調査で求められたときに提出します。